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第0章17話【信頼疑念】-違和感の正体-

ギリギリ間に合ったぁ



 青白い光が乱反射し、辺りを黄土色に染め上げる。美しさなど特に感じることもなく眈々(たんたん)と過ぎて行く。

 そろそろ陽も落ちるであろう夕暮れ前。


 不気味な程に人気のない路地の一角で身を屈める一つの小さな影があった。

 

 か細く響く弱々しい呼吸は息を潜めると言う行為よりも、意識を深く持っているその時のもので…。



 イミヤはずっと悩んでいた。


 伝えられた作戦に文句がある訳ではない。いたって普通の作戦だった。そう。普通の。


 ヴァルエさんの奇襲からの陽動で始まり、私とインディゴさんの援護。ヘクタは私たちの補助に徹する。そのために彼は作戦地点を見渡せる範囲まで距離を移す。そして、混乱した部分と、より効果的にアーテルが広がる場所を指示し、一気に叩く。その司令塔を担う。


 もし仮に生存者がいたとしても、ヴァルエさんが徹底的に始末する。それが役目だ。彼らが投降すれば話は別だが…



 最後、恐らく傷を負うであろう『六大器・ノウン』を私達4人で連携し、確実に始末する。


 単純であるが、よく練られた作戦だとは思う。ヴァルエさんは危険だが、これまでの経験を活かして生き延びてくれる事に信頼して。私達は安全な場所にての飽和攻撃。



 …けれど、ヘクタがこの様な事を本当にするのだろうか。



 巡り会う事もなく、1年の月日が流れた。とは言え、人はその殆どが変わることなくあり続ける。

 ヘクタだってそうだ。特別な変化がない限りはそんなことは起こり得ない。


 だからこそだ。違和感を覚えるのは。

 言葉を紡ごうにも喉に(つっか)えるときと同じ不快感を(もたら)す。


 ヘクタならこんな風にはしない。それは信頼からなのか、経験からなのかは分からないが、確かにそう言えた。


 ヘクタは確実にこちらが有利な状況を作り出すのだ。そう必ずだ。


 彼は不利な状況を突起な案で塗り替え、非常事態も適応し、有無を言わさず蹂躙した。

 だから任務成功率100%を誇っていたし、部下達の評価もそれなりに高かった…筈だ。



 ビュゥうううう


 乾いた風の音が耳元をよく通り抜けた。

 揺らいだ髪を押さえ、サラッと後ろに戻す。



 しかし、今回の作戦はどうでしょうか?


 確かにこの作戦でしたら、成功率は5割を超えます。しかし、ただそれだけなんです。


 ヴァルエさんの得手不得手も理解しているのでしょう。当然私たちの事もです。



 何かが抜け落ちているのでしょうか。



 …………いや違いますね。これは……。私達に見せるための綺麗事?


 根本的に違うのだとすれば、ヘクタは何を隠しているのでしょうか。


 そう言えば一昨日。私がまだ眠っている間に出掛けていた。と聞きました。

 {その時に何かが?}

 そうだとしても、今この作戦との関連性が希薄……のはず。


 だとすれば……。


 元の作戦はダミー。ヴァルエさんが今動いているのはその確実性を上げる為の一手。

 伝えられていないと言う事は、私達だけに隠すべき内容。そして、私達は拒絶するもの。



「まさか……。一掃?人を人と認めない虐殺だとすれば…。」



 けれど今からじゃ間に合わない。時間が足りない。


 いえ…そんなもの関係ない。



「止めなくちゃ。……ヘクタ、ヴァルエさんを私が救ってみせます。」



 そう言い颯爽と駆け出したイミヤだった。




→→→




 私は知っていた。だからあの時、ヘクタが『イミヤ』と声をかけてくれた。私の名前を呼んでくれたその時。ノウンさんを殺せなかった。傷つけられなかった。傷つけたくなかった。


 だから中途半端になってしまった。一瞬体制を崩すだけ、ただそれだけの事しか起こり得なかった。


 何かしないと、行動しないと、私の仲間が、全て居なくなってしまう思った。

 嫌だった。これ以上仲間を失うのは。辛かった。


 でも、私は知ってしまったのだ。感じたのだ。その溢れんばかりの愛情が。苦脳が。苦痛が。



 ノウンさんは持っているのだ。その大切な何かを。


 私には持っていないその大切な何かを。



 壊したくはなかった。けれど状況がそうも言ってられなかった。


 私はGMの手札であり、ワーマナ所属なのだ。

 対してノウンさんはサタブラッド所属の六大器の内の一人。


 私にはこの関係値をどうする事も出来ない。


 そう思っていた。これまでは。



 でもそうじゃないと気付いたのだ。仲間内でも対立は発生する。



 だったら私の望みは一つ。私が私の為に、ノウンさんを。



 『望む全てを手に入れて見せる。』









 果たしてその望みは届くのか。



 もし仮に全ての行動を予測できたのなら人は人と言う壁を越えられるのだろうか。


 それは感じることの出来る人成らざる者しか知り得ない。

あと1話だけ、あと1話だけ書かせておくれ…

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