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第0章15話【虚構妄想】-殺せ-

時系列前後するけーど、前話考えたらこっちの方がいいかなってね



「本部から入電。監視は続行。襲撃を被った場合は各自対応。第六器『ノウン』は、2日以内に例の小隊を撃破。後に、アーテル結晶の奪還。増援は協議中。だそうです。ノウンさん。繰り返します。…」



 任務失敗、命令違反を犯してから、はや2日。その間思うことはあった。


 同年代を殺すことはサタブラッドでもよくあること。子供ですらも、時には容赦しなかった。躊躇いもなく殺した。必要だったから。

 今まで戦争が始まるだとか、世界の終わりだとか、そんなことはどうだって良かった。


 けれど、私はこの前、奴らの目を見た。奴らの光を見た。


 生きる希望を明確に持つ奴らと私の為にしか動けないノウンに生きる資格が有り()るのかと疑問に思う日が、こうもハッキリと感じるとは思いもしなかった。


 私がいなければアンは楽に過ごせたかもしれない。妹にこんな生活を強いることはなかったかもしれない。違う。私がいなければアンは囚われてはいなかった。こんな張り詰めた空気の中こもるように暮らす必要はなかったのだ。


 そして、彼女達の行く末を阻むことなどなかったのだ。


 なんて罪深いのだろうか。


 こんなことになるならあの時。

 初めて殺しをした時。その初めてはせめて人であるために『感情』を殺すべきだった。


 後悔しても遅いことは分かっているのだ。思ってしまうのだから仕方がない。


 望んでしまって何が悪い。願って何がいけない。



 けれどそんな幻想はいとも簡単に簡単に打ち砕かれ、地に落ち、闇に葬り去った。


 まるでアーテルが世界を壊したように。



 備え付けられた短刀が只々虚しく、LEDの眩い光に当てられる。


 果たして許されるのかそんなことが。


 私は許さない。絶対に。


 こんな世界も、人を物としてしか見ていないサタブラッドの連中も。綺麗ごとを(つむ)いでは壊していくGMも、私の邪魔をするワーマナの奴等も。


 『敵。』


 そう、テキだ。


 みんなみんな壊していく。大好きだった光景も。好きだった生き物も。(この)んでいた居場所も。



 だから私も壊してやるんだ。壊される前に。壊すしかないんだ。



 あぁ。……私は何をしているんだっけ?



 天井を仰ぎ呆ける。



 はらりと落ちるものがあった。それはただただ蒼かった。

 静かにけれど、確かにその形は鮮やかに零れ落ちる。



 今でもあの時の光景は目に焼き付いて離れない。離してくれない。


 初めてアーテルが発現した日。初めて人を殺した日。日常がずれ始めた起点。すべて私がやったこと。



 室内に降り注ぐ雨。

 ぬたついて滴り落ちる液体。

 色が抜け落ちていった世界。



 それでも達成感があった。あったはずだ。でなければ絶対にしない。


 そう絶対に。



 曇った道を必死に晴らしながら一日一日を凌ぐ日々。崩さなかった笑顔。私が私としてあるための張り付いた身体。


 それでもただひたすらに守った。全てはアンのために。私が壊してしまったものを創り直すために。


 とにかく必死だった。


 そしていつの日か、アンが取られた。守ると決めていたのに。あの日からずっと壊れていなかったたった一つの、唯一の姉妹という関係を。


 守れなかったのだ。あの日の形は全部壊れてしまった。壊してしまった。


 バラバラに崩れてしまった軌跡を抄う事すら許されず、組織という名のただの寄せ集めに強制的に入れさせられた。


 入ってみれば環境はそれほどまでに悪くはなかった。



 私とアンの関係以外は。



 最近まで忘れていたのだ。ただただぬるま湯に浸かったかのように与えられたことを堕落したように受け入れ消化する。


 そんな日々はもうお終いにしよう。


 邪魔をするなら全てを壊す。


 無ければ創ればいいのだ。


 サタブラッドは憎しみしか生まない世界から不要な組織だ。しかしGHMも大して変わらない。彼らは何もしない。


 だったら私が変えて見せる。


 それが私の生きる意味に感じたから。


 私の生きる最後の欠片を磨き上げるために。



 「……アン。待っててね。お姉ちゃん頑張るから。」



 残る風化し錆びついた椅子はその場所に立ち尽くす。


 昼下がりの直光は静かにその場所を照らし続けた。

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