「櫻の園の犯罪」解説
櫻の園の犯罪
初出『探偵都市トキオ』
発行日:2003年8月16日
企画・製作:探偵都市トキオ製作委員会
発行:Gate of Dragon
2003年8月16日、からし色の装丁のオリジナル小説同人誌『探偵都市トキオ』を携えて、コミックマーケットにはじめてサークル参加したときの新鮮な感覚は、今でも忘れてはいません。
当然のことながら、売れ行きのようなものは、売れ行きという言葉を口にするのもおこがましいような程度のものでしたが、それでも、本を手に取って下さった方も皆無ではなかったのです。
それで結局、われわれはその後、足掛け5年にも渡って「トキオ」シリーズの本をつくり続けることになったわけですが、その第一弾『探偵都市トキオ』の時点では、まったくシリーズ化など想定しておらず、単発の企画のつもりでした。
とある創作講座の仲間だった中田ほか数名の同人作家が、創作講座の名にちなんだ「Gate of Dragon」という適当なサークル名で、勢いのままコミケに申し込んだあと、どうしてこの「トキオ」の企画ができたのか、実はまったく覚えていません。
いちおう、基本的な世界観・コンセプトのデザインは中田がつくったのですが、どうしてこれをやろうと思ったのか、思い出せないのです。
ともあれ、古き良き探偵小説ふうの世界観を、そのままやると時代考証とか面倒なので、すべて「なんちゃって」でパロディ的に自由に描いてしまえ、というコンセプトは、なかなかやりやすかったので、その後、参加作家のみなさまはいずれ劣らぬ素晴らしい作品を、このシェアードワールドのなかで生み出していただけたわけですが――。
発案者の私、中田自身が、この世界で最初に書いたのは、なんともいいかげんな、ブラックジョークのような短編でした。
よくある探偵小説をパロった感じにしてみたい、と思い、「めちゃくちゃくだらない動機で密室殺人が起きたとしたら?」という着想から、「同人女子たちのカップリング論争から事件が起きる」という話になってしまいました。
これっきりの一発ネタのつもりで書きましたから、人物設定などもかなり適当ですし、なにより、文章が、意識的にライトにしています。そのため、このあとの他作品とはけっこう文体が違っていますが、そこはご容赦を。
読み返してみると、けっこう「ギリギリ」です。いや、「アウト」かも。……お読みになって、同人カルチャーや同性愛を貶めているようでご不快に感じられた方がおられたらまことに申し訳ございません。
しかし、しかしです。
まったく思いがけず、この「続き」があるとも思わずに書いた、高円寺一郎と空木惚介の物語は、このあと、作者自身をも驚かせるほどに、広がってゆくことになったのです。
なお、『探偵都市トキオ』のみ、完売した後に、再版を行いましたが、その際、本作の一部を改訂しました。しかし、こちらには思い直して改訂前のものを収録しています。ご了承ください。