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父親が犯人の場合

全ては父親の計画通りに幕を閉じることになった。


『催眠殺人』を知っているだろうか。

何者かに催眠術をかけて別の誰かを殺させたり、催眠術をかけた相手を自殺させたりなど、要するに殺人の道具として催眠術を利用する事である。

1951年に起きた「コペンハーゲン催眠殺人事件」では、催眠術による殺人も立証されている。


犯行の動機は、父親自身の浮気だった。

彼には数年前から愛人がおり、妻もその事に気付いていた。彼の浮気が原因で妻は息子に手をあげるようになったが、それでも彼は愛人と会うことをやめなかった。

しかし、妻の息子に対する虐待は次第にエスカレートしていき、いつ妻が息子を殺してもおかしくない状況まできていた。もし妻が息子を殺せば、全ての原因である自身の浮気が世間に公表される可能性もあるだろう。そうなってしまったら、世間から冷たい目で見られるのは間違いない。そう考えただけで夜も眠れなかった。

その最悪な事態だけは何としてでも避けたい。だから父親は息子を使って妻を殺害することに決めた。

妻さえ死んでしまえば、これからも愛人と会うことは可能だ。自分に愛人がいることを知っているのは、家族の中で妻だけだから。

当初は、「母親を殺せ」という催眠だけを息子にかけた。

しかし、いつか息子が本当のことを知ってしまったら、母親の暴力の原因が自分の浮気だと気付いてしまったらどうしようかと考えた。

そうならない為にも、父親は更に二つの催眠を息子にかけることにした。

一つは、「母親を殺した瞬間に、自分が母親から暴力を受けていたという事実を忘れる」という催眠。

もう一つは、「それでも全てを思い出してしまったら、その時は何もかもを忘れる」という催眠だった。


息子を利用した妻の殺害は無事に成功し、虐待を受けていたという記憶も息子の頭からはすっかり消え去った。

それでも父親は怯えていた。

いつか息子が虐待の事を思い出すのではないかと。

だから父親は、妻が息子に暴力を振るっていたことを自ら警察に証言した。

そして母親から虐待を受けていたことを思い出した息子は、父親がかけた催眠により全てを忘れてしまった。

息子は自分が何者かすらも思い出せなくなってしまった。

空っぽになった息子を見て、父親はようやく安心した。


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