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私のために争わないで! ※頭空っぽにしてお読みください

作者: 永堀詩歩

 二人の男性が睨み合っている。

 一人は知的で大人っぽい和将かずまさくん。

 もう一人はやんちゃで可愛い勇樹くん。

 二人とも女の子にとってもモテる。


「こいつはお前には渡せない」

「だめだよ和くん。ぼくだって譲れない!」


 勇樹くんの剣幕に気圧され、いつも冷静な和将くんが焦っている。

 二人とも私を欲していた。


 わかってる。

 私の艶やかな白い肌が好きなんでしょ?

 私の肉感的な体にかぶりつきたいんでしょ?


 ごめんね、私は二人とも好きなの。

 だからお願い。

 私のために争わないで!


 でも頭に血がのぼっている二人に私の悲痛な叫びは届かなかった。


 和将くんは平手を勇樹くんの頭めがけて振り下ろす。

 勇樹くんは拳を和将くんの腹を狙って突きだした。


 駄目! 見てられない!


「くっ……!」


 勇樹くんが膝をついていた。空振りした拳を地面に叩きつける。


「ちくしょう! ちくしょう!」

「これでこいつは俺のものだな」


 和将くんは私に手を伸ばした。でもその手は私に届かない。

 勇樹くんが遮ったのだ。


「和くんごめん。……三回勝負にしてくれ……!」

「何!? お前、男のくせに往生際が悪いぞ!」

「頼むよ。ぼく、どうしようもないほどこいつが好きなんだ。諦められないんだ!」


 勇樹くんは和将くんの足にすがり付いた。

 そんなに私のことを……?

 胸が高鳴った。ああ、私。勇樹くんのところへ行きたいのかしら。でも私は元々和将くんのモノ。彼を裏切るなんてできない。


「俺だってこいつが好きだ。だが勇樹、お前との友情も大切にしたい。……良いだろう、三回勝負にしてやる」


 二人はまた争い始めた。

 拳と拳がぶつかり合い、激しい攻防が続く。互いに譲らない勝負はなかなか終わらなかった。


 二人ともだめよ! 私は冷めやすい女。あんまり待たせたら……!


「なかなかやるな、勇樹」

「和くんだって」


 勝負は二対二。ついに最後の勝負となった。


「いくぞ!」


 目潰しのように指を二本突きだす和将くん。

 拳に全身全霊を込める勇樹くん。


 勝負は決した。


「勝った……勝ったよ!」

「負けたぜ勇樹。こいつはお前のものだ」


 そう告げる和将くんの背中はとても悲しそう。

 彼の口の中にも入ってみたかった。


「ありがとう和くん!」


 満面の笑みの勇樹くんは優しい手で私を口に運ぶ。


「食べてみたかったんだよね、これ」


 私はスーパーで売っている期間限定プレミアム豚まん550円。

 和将くん(小5)のお母さんに買われた私は、じゃんけん三回勝負の末に手に入れた勇樹くんに美味しく頂かれました。

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