表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ダーク】な短編シリーズ

重すぎるランドセル

作者: ウナム立早


 ひとつ、またひとつと、おれはランドセルに鉄アレイを入れていく。


優正ゆうせい、底が抜けるからやめときなさい」

「いやだ、足腰を鍛えるための特訓をするんだ」


 ママが止めるのも聞かず、おれは外へと飛び出した。




 最初は余裕があったけど、次第に動きが鈍くなり、ベルトもめっちゃ肩に食い込んでくるようになった。


 くう、きつい! でもガマンだ、これも山登り部を皆に知ってもらうため……!


 一歩一歩踏みしめながら、ようやく家と学校の中間ぐらいまで来た。そこで、ある同級生を見つけた。そいつのランドセルも肩に深く食い込んでいて、重そうだった。


「おはよ、達郎たつお!」


 達郎は驚いた様子で振り返る。


「ゆ、優正、くん……」

「どうしたんだ? その重そうなランドセルは」

「こ、これ……」

「もしや、おれみたいに足腰を鍛えようとしてるんだな?」

「え?」


 達郎は目を丸くしていた。おれは肩を揺すって、ランドセルの重さをアピールする。


「そ、そうさ。ぼくも、その……鍛えようと思って」

「ホントに? すごい偶然じゃん! 一緒に学校まで行こうぜ!」

「う、うん」


 こうして達郎と共に登校することになった。


 達郎は――たしか帰宅部だったはずだけど――意外と根性があった。何回か転びそうになっても、決して弱音を吐かずに歩き続けている。眼もギラギラと光っていた。こりゃなかなか逸材かもしれない。


 おれは時々肩を貸しながら、達郎を勧誘してみた。


「山登り部に入ってみない? まだ正式な部じゃないけど……」「まだ部員が3人しかいなくてさ、達郎ならきっと……」「頂上に登った時は……」


 しばらくして、達郎ははにかみながら答えた。


「いいやつなんだね、君は」

「な、なんだよ急に!」


 おれの方が危うく転びそうになった。




 それから少し進んだ交差点で、達郎が急に立ち止まった。


「どうした達郎? 学校はまっすぐだぞ」

「ぼくは……宏樹くんから呼び出しを受けてるから」


 宏樹? 宏樹ってあの不良か?


「なんで宏樹から呼び出しを――まさか、いじめられているのか?」

「君には関係ないよ」

「関係ないわけないだろ! そんな奴の呼び出しなんか無視シカトしちゃえよ!」

「やめてくれ! 君を巻き込みたくないんだ!」


 おれは達郎を止めようと掴みかかったが、その拍子に二人とも転んで、ランドセルの中身をぶちまけてしまった。


 起き上がると、そこにはたくさんの鉄アレイと……武器があった。ゲームでしか見たことのないナイフや銃が、達郎のランドセルから散らばっていた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの最後で面白かったです! 達郎君を止めていなかったらと思うと... この先がとても気になる作品でした!
[良い点] ラストが衝撃でした。 達郎が何をするつもりだったのか…と思うと背筋がぞっとする思いですね。 途中の眼がギラギラ光っているという描写も別の印象になっていきますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ