重すぎるランドセル
ひとつ、またひとつと、おれはランドセルに鉄アレイを入れていく。
「優正、底が抜けるからやめときなさい」
「いやだ、足腰を鍛えるための特訓をするんだ」
ママが止めるのも聞かず、おれは外へと飛び出した。
最初は余裕があったけど、次第に動きが鈍くなり、ベルトもめっちゃ肩に食い込んでくるようになった。
くう、きつい! でもガマンだ、これも山登り部を皆に知ってもらうため……!
一歩一歩踏みしめながら、ようやく家と学校の中間ぐらいまで来た。そこで、ある同級生を見つけた。そいつのランドセルも肩に深く食い込んでいて、重そうだった。
「おはよ、達郎!」
達郎は驚いた様子で振り返る。
「ゆ、優正、くん……」
「どうしたんだ? その重そうなランドセルは」
「こ、これ……」
「もしや、おれみたいに足腰を鍛えようとしてるんだな?」
「え?」
達郎は目を丸くしていた。おれは肩を揺すって、ランドセルの重さをアピールする。
「そ、そうさ。ぼくも、その……鍛えようと思って」
「ホントに? すごい偶然じゃん! 一緒に学校まで行こうぜ!」
「う、うん」
こうして達郎と共に登校することになった。
達郎は――たしか帰宅部だったはずだけど――意外と根性があった。何回か転びそうになっても、決して弱音を吐かずに歩き続けている。眼もギラギラと光っていた。こりゃなかなか逸材かもしれない。
おれは時々肩を貸しながら、達郎を勧誘してみた。
「山登り部に入ってみない? まだ正式な部じゃないけど……」「まだ部員が3人しかいなくてさ、達郎ならきっと……」「頂上に登った時は……」
しばらくして、達郎ははにかみながら答えた。
「いいやつなんだね、君は」
「な、なんだよ急に!」
おれの方が危うく転びそうになった。
それから少し進んだ交差点で、達郎が急に立ち止まった。
「どうした達郎? 学校はまっすぐだぞ」
「ぼくは……宏樹くんから呼び出しを受けてるから」
宏樹? 宏樹ってあの不良か?
「なんで宏樹から呼び出しを――まさか、いじめられているのか?」
「君には関係ないよ」
「関係ないわけないだろ! そんな奴の呼び出しなんか無視しちゃえよ!」
「やめてくれ! 君を巻き込みたくないんだ!」
おれは達郎を止めようと掴みかかったが、その拍子に二人とも転んで、ランドセルの中身をぶちまけてしまった。
起き上がると、そこにはたくさんの鉄アレイと……武器があった。ゲームでしか見たことのないナイフや銃が、達郎のランドセルから散らばっていた。
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