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復活しました!

目が覚めると、二人の顔が目の前にあった。


「あっ!起きた!」

「大丈夫か!ルエ!」


二人が一斉に話しかけてくる。

でも、何よりもう瞼が重い。


「ちょっと、待って、ね……」


私は、目が閉じそうになるのを必死でこらえながら言う。


「時間、加速……」


私は今自分に覆いかぶさっている布団に向かって時間加速を行う。

すると、なんということだろう。

布団がみるみるうちに色褪せ、使い物にならなくなっていく。


「え、何……?」

「何が……?」


クサリネさんとトゲモリさんは、二人とも、現状を理解しきれていないようで、どんどん朽ちていく布団をただ見ていることだけしかできない。

やがて、時間がたつと、私の体は、まさにひと月前と、全く変わらない、15歳の体をしていた。

その代わりに、布団は、もう元の物とは判別できないほどに色褪せ、今にもバラバラになりそうだった。


「うーん!生き返ったー――!!」


私はその布団から出ると、クサリネさんに飛びついた。


「クサリネさん!ありがとーー!!!」

「え、あ、なんで、若返って?」


状況を把握できていないクサリネさん。

私は、クサリネさんに抱き着くのをやめると、今度は、トゲモリさんに頭を下げた。


「トゲモリさんも、ありがとう!おかげで助かりました!」

「あ、え、いや、いいんだ、助かったのなら?」


トゲモリさんも同じみたいだ。


「ねえちょっと!状況を説明してくれない?私たち、よく分かってなくて!

ルエはまだ能力を持っていたってこと?でもそれならさっさと使えばいいだけだし……」


私は、混乱している二人に今までの事を説明した。

……もちろん、ダーミラにあったこととか、ダーミラがついてくることになったとかは隠して。

ダーミラが自分の存在をどの程度公にするのかわからないし、それに神様云々は大事になりそうだったから、目が覚めたら、使えることがなんとなくわかったことにした。


「へぇ……。時間を止めたり、早くしたりできるの?」

「はい!ある程度は自由にできると思います」

「でも、良かった。サシバナのやつが、ルエを追い出したって言ったときは血の気が引いたからな。『馬鹿野郎!』って言って一発ぶん殴ってやったわ」

「そうそう。『パーティから脱退させておいた。新しい仲間と一緒に冒険に行こう!』って言ったときは、頬をひっぱたいてやったわ」

「ええっ!二人とも、大丈夫なんですか!?」


私は驚く。二人とも、サシバナさんとは、大丈夫なんだろうか……

私がそのことを聞くと、笑って返した。


「大丈夫大丈夫。もうパーティ抜けてあるから」

「俺もだ」


私はさらに驚いてしまった。


「さすがに助けてくれた仲間を追い出すようなことは、なかなかできないわよね」

「それにあいつ、『ルエには、宿一泊分もできないくらいしか渡してないから懐は問題ない』 とか言ってたからな!命の恩人に対してなんて扱いをするんだ!と思ったよ!」

「ちょっと待って私それ初耳」


クサリネさんが トゲモリさんに事情を詳しく聞く。


「やばいわね……」

「そうだろ……」


そういうと、二人ははーっとため息をついた。

そして、二人は私の顔も見ると、「これからどうしようか?」と聞いてきた。


「パーティ離脱しちゃったから、これから三か月ぐらいこのメンツでパーティ組めないのよ」

「そうなんですか?」


「なんかよくわからないギルドのルールの一つ」と二人は笑う。


「私も、トゲモリも、しばらくは別のパーティーでお世話になるわ」

「まぁ、クサリネとはバランスがいいからしばらくして組めるようになったらまた組むがな!」

「で、ルエはどうするの?」


私は……


「しばらくソロでいいかなーって」

「……そうよね、あんなことがあったんだもん」

「本当にサシバナが申し訳ないことをしたな」

「いやいや!本当にそんなんじゃなくって、私、ここに来たばっかりで単純にどんな人がいるか知らないんですよ!だから、しばらく様子見して、で、ちょうどよさそうなパーティに入りたいと思います。……今度は、誘われるんじゃなくて、きちんとお願いしに行きます」


二人とも、少し考え込む。


「そうね、下手に私たちが勧めるより、自分で考えた方がいいかもしれないわね」

「そうだな。でもな、今度こそ、能力の事には気をつけろよ?」


トゲモリさんが私の肩をたたく。


「いっそのこと、ソロでもいいかもね。その能力、時間も止めたりできるんでしょ?

いいじゃない、一方的に攻撃し放題」

「まぁ、そっちの線も考えてはみようと思いますけど、やっぱり一人より二人、二人より三人の方が安全性は高いと思うんで!」


そこまで私が言うと、クサリネさんは懐から袋を出した。


「はい、これ。少ないけど……」


受け取って中身を見ると、お金だった。


「サシバナがあなたにちょっとしかお金を渡さなかったって聞いたから。

これは、あなたが飛躍蛙で貢献してくれたお礼よ」

「そんな、こんなには受け取れませんよ!」

「いいから!受け取ってもらえないと、私、申し訳が立たない!」


そこまで言われてしまった私は、そのお金を受け取る他なかった。


「……わかりました!お金は受け取ります。

でも、必ず返します!」


クサリネさんが「いいって……」と続けようとしたが私はそれを遮った。


「だから、定期的に会いましょう!お金を返して、近況報告をするんです!」

「……いいの?私は、あなたがただ老いていくのを見ていることしかできなかった……」

「いえ!ちゃんとサシバナさんに意見してくれていました!止めたのは私です。

パーティとしての活動に悪い思い出が少なくないとは、言えませんが、どうでしょう?

私は、まだまだ15歳の未熟者ですし、相談したいことだってたくさんできると思うんです!だから、どうか、関係を続けてくれませんか?」


そこまで私が言うと、難しい顔をしていたクサリネさんは静かに微笑んだ。


「わかった。私でよければ、いつでも相談に乗ってあげる。見つけたら、気軽に声をかけてね」

「俺もだ!困ったときには何でも言ってくれ!」


「二人とも、ありがとうございます!」


私は深々とお辞儀をした。

クサリネさんも、トゲモリさんも、自身の部屋に戻っていった。

最後に「本当に体は大丈夫?」と聞いてきたので「この通り、ピンピンしてます!」と答えておいた。



二人も退出し、部屋のドアを閉める。

すると、「やっと終わったのかい?」という声が、ベッドの下からしたのだった。


「ダーミラ?」


私がそう呼ぶと、ベッドの下から這い出して来るダーミラ。


「お疲れ様、ルエ。無事に話は終わったみたいだね」

「うん、明日からとりあえずソロ探索だよ~!」


外を見ると、もう暗い。


「じゃあ、晩御飯をとって、布団を替えてもらって、寝ないとだね」

「……布団?」


ベッドの上を見ると、布団が、風にのってパラパラと散っていった。


「あわわわわ……」

「今度からは、きちんと進める対象も考えなくちゃね」


ダーミラは、けらけら笑っていた。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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