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ボスと戦いました!

ダンジョンの探索階層を1層から60層へと変えた私たちは、そこに現れるモンスターをばっさばっさとなぎ倒していった。

サシバナさんたちが見込んだように、私の能力は、三人パーティだった飛躍蛙の補助をできるくらいにはあったのだ。

もちろん、初心者であるがゆえに起こしてしまうミスはたくさんあり、それをカバーしてもらうことも多かったが。


そうやって一週間が経過し、私たちは、60層の管理人がいるという部屋の前までやってきた。管理人は、そのフロアを牛耳るボスのことだ。凄まじく強いらしい。でも、必ず何か宝を持っていて、ボスの死体は良い素材になるそうだ。

その扉の前で、サシバナさんは私たちに呼びかける。


「いいか、みんな!僕たちは、ここの管理人を倒して、宝物を得るぞ!」

「おおー――!!」


みんなで大きな返事をして意気揚々と、部屋の中へ入っていく。



部屋の中には、大きな角を持った二足歩行の牛みたいなモンスターがいた。


「ミノタウロスだ!」


トゲモリさんが叫ぶと、ミノタウロスは、勢いよく突進してくる。

慌ててみんな回避するが、ミノタウロスの勢いは止まらず、壁に思いっきりぶつかる。

壁にひびが入り、皆に戦慄が走る。


「気を付けろ!あいつの突進を受けたらひとたまりもないぞ!

クサリネとルエはあいつを魔法で足止め!僕とトゲモリは突進の範囲に入らないように近づいて攻撃だ!」

「わかった!」


指示を受けて私とクサリネさんは氷の魔法を使って、ミノタウロスの足を固める。

それを確認したトゲモリさんとサシバナさんが一気にミノタウロスに接近する!

そしてミノタウロスの体をここぞとばかりに切りつけ、ダメージを稼いでいく。


しかし、ミノタウロスはその剛腕を振り回す。

二人とも、間一髪で回避したが、サシバナさんの体勢が崩れてしまった。

その隙を目ざとく見つけてしまったミノタウロスは、足止めの氷を力尽くで割って、

サシバナさんに突進した。


「危ないっ!」

「サシバナ!」


サシバナさんは、ミノタウロスの突進の直撃を食らってしまった。しかしサシバナさんも、剣を目の前に構えていたので、ミノタウロスは自分の突進の勢いを利用され、深く剣が刺さった。

が、止まることない突進は、サシバナさんごと、壁に激突してしまった。

そのまま倒れこむミノタウロス。どうやら、さっきの一撃がとどめになったみたいだ。


「サシバナさん!!」


慌ててみんなサシバナさんに駆け寄る。

サシバナさんは、息も絶え絶えで、体中から血を流している。


「ごめん……俺、もう、無理みたいだ」


雀の涙のような声を何とか絞り出して話すサシバナさん。

私も、トゲモリさんも、クサリネさんも涙を流している。


「いよいよ、これからって時、なのにさ。きっと、僕たちは、Sランクの、冒険者にだってなれた、はずなのに」


……このまま、なにもできずに、お別れするしかないのだろうか?


「僕たち三人の能力があれば、最強だ!ってなってさ、結局60層までしか行けずに、新しくルエを入れて、これからって時なのに」


——能力?


「あ、あのっ!私の能力なら、もしかしたら!」


そういって、サシバナさんに近づく。


「そ、それは本当かっ!ルエ!」

「本当に、サシバナは助かるのっ!?」


トゲモリさんも、クサリネさんも、期待のまなざしで私を見ている。


「とりあえず、やってみます!」


私はサシバナさんを見ながら、あの時、力が流れた右目に集中する。

すると、右目の方から、何かがあふれてくるのがわかる。

その力を、私は強く感じながら叫ぶ。


「時間遡行っ!」


私が叫んだ瞬間、サシバナさんの傷は最初からなかったかのようにふさがっていき、地面に流れていた血も、その体に入っていった。

それが終わるころには、サシバナさんの息は安らかになっていた。


「サシバナっ!」

「よかった……」


傷がふさがり安堵の表情を浮かべる二人。

サシバナさんも目を開けて起き上がった。


「すごい、あれだけの傷が治ってる!」


そういうと、サシバナさんは、私の手を取り言った。


「ありがとう、ルエ!」

「いや、これぐらい、どうってことありませんよ」


私は、サシバナさんから感謝され、思わず照れてしまう。


「え、ちょっと、ルエ、あなた」


が、その時、クサリネさんが何かに気づいたようだ。


「どうしましたか?クサリネさん」


私はクサリネさんを見る。


「あなた、ちょっと、鏡見て!」


そういうと、青ざめたクサリネさんはバックの中から鏡を取り出し、私に見せる。

そこには、私がまるで十年たったかのような顔がそこにあった。

——うそでしょ、たった一度の使用でこんなに?


「あなた、何をしたの!?」

「……多分、能力の代償です。傷を治すだけでこんなになるとは思ってませんでした……」


ふと自分の頭の上をみると、カウンターが60に減っていた。


「そんな……」


クサリネさんは非常に申し訳なさそうに両手で顔を覆っている。

トゲモリさんも、頭を下げている。


「ごめんなさい……。あなたの大切な時間を……」

「そうだ、俺がもっとうまくやれていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない」

「いいんですよ、これぐらい!だって、人一人の命が助かったんですから。安いもんです!それよりも、お宝ですよ!ミノタウロスだって、いい素材になりますよ!」


私が、部屋の奥の方を指さすと、二人はしぶしぶと頭をあげた。


「ほら、行きましょう!」


私がすたすたと部屋の奥へと歩いていくと、二人もついてきた。


「サシバナさんも、行きますよ!」


私がそういうと、サシバナさんは、


「僕はちょっと道具の確認をしてから行くよ。さっきの突進、勢いがすごかったから」


といったので、「じゃあ、先に言って待ってますね!」と伝え部屋の奥へと進んだ。

だから、その後サシバナさんがつぶやいたことだって聞こえていなかった。



「……これなら、もっと無茶をしても大丈夫?」


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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