説明回でした!
「な、なんで生きて……」
女性は私に拘束されて血を流したまま動けなくされている。
「お前は、あの時に死んだはず!」
女性は吠えるが、もはや負け犬の遠吠え。
私は、駆け寄ってくるみんなを見て笑顔になる。
「皆、お疲れ様」
みんな涙を流している。
「姉様、生きていたんですね」
「でも、どうやって……?私が見たときにはもう死んでいましたよね?」
「生きててよかったです~!」
「……お別れがまさかこんなに早くなるなんて、と悲しくなったよ」
皆、思い思いの言葉を口にする。
私は、もう虫の息である女性の拘束を緩めないように握った。
「いや?私、多分一度死んでいるよ?」
「「「「「「えっ?」」」」」」
皆驚いている。
「それじゃ、説明するね」
——思いついたのは、まさに胸を貫かれた直後。
朦朧とする意識の中で、ふと、思いつくことがあったのだ。
時間遡行に、時間停止を掛けたらどうなるんだろう?と。
もしかしたら、私が死ぬ、ギリギリまで復活を遅れさせることもできるのではないか?
それだったら、絶対的な隙を作れるんじゃないか、と。
なので、私は、三つの能力を一気に発動させた。
私の体への時間遡行、そして、その時間遡行の現象に対して、時間停止。
最後に、死を遅らせるためにも、自分に緩やかな時間遡行を掛けた。
差し引きでゆっくりと死に向かっていくような、それぐらい弱いやつ。
これで、私の老化と若化のスピードは釣り合う事となった。
後は、どれぐらいこの状態で耐えられるか。
そんなに長くはないだろうとは思っていた。
なにせ、私の五感は最後の時間遡行を最後にしてほとんどが機能しなくなっていたからだ。
幸か不幸か、最後にかけた時間遡行のおかげで、ゆっくりと死へ近づく感覚を味わった。
……二度とはしたくない。
そして、見事に命の灯が潰えた瞬間、時間停止が解除。
目覚めたちょうど目の前に敵が背を向けて立っていたというわけだ。
「それに、ルーをよこせだって!?そんなの譲れるわけないでしょ」
だから、お返しに同じ場所を剣で貫いてやった。
「……くそ」
女性は身動きの取れない体で呟く。
「お前さえいなければ、お前さえいなければ!!」
そう言って、女性は私にかみつこうとしてきた。
時間加速で叩き潰す。
流石に傷が深すぎたようで、女性はなすすべもなく倒れた。
「くそっ!あいつがしくじらなければ、こんな目に合わずに済んだのに……」
「あいつ?」
まさか、まだほかに仲間がいるというのか。
「せっかくの隠密のキューブを無駄にして……」
それを聞いて、私とビンチはハッとする。
「まさか、子供の誘拐事件の黒幕もあなた!?」
「……この子みたいに上質な魔力じゃなくても、数で補えば、問題ないのよ~」
女性は息も絶え絶えに言葉を吐き出す。
「あぁ、でも神である私が世界を粛正できなかったのは残念だったわ。
世界を亡ぼして、亡ぼして、亡ぼして、ホロボシテ、ホロボシテ、ホロボ……」
女性の瞳から光が消えていく。
そして女性は、灰になって散ってしまった。
「とりあえず、これで万事解決?」
「そうですね。ルエさん、ムーファさん。お疲れ様です」
「なんか、実感わきませんね。っていうか、私、もう限界です……」
そう言ってへたり込むムーファ。
「お疲れさま。でも、私たちにはしなきゃいけないことがある。そうでしょ?」
私は、ルーに向かい合ってルーの肩を抱く。
「お姉ちゃん、お父さんとお母さんに会う決心がついた。ていうか、死んだら今までの悩みって何だったんだろうなって」
「ルエ、それは達観しすぎです……」
ルーは、はっとして、涙を流す。
「姉様……」
私はうなづく。
「さぁ、ルー。おうちに帰ろう。お父さんに一緒に怒られようね」
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