150層でした!
150層の扉はほかの階層と違って、豪華な作りになっていた。
この先は今までとは違うぞ……といった雰囲気を醸し出している。
私はふりかえって二人の顔を見る。
二人も覚悟を決めたようで大きくうなづいた。
私は扉を開ける。
……そこにはやれやれと言った感じで座っている首のない騎士がいた。
首のない騎士はおもむろに立ち上がり剣を振りかざす。
その瞬間。
騎士は一瞬にして私の横に移動し、私の腕を吹き飛ばした。
……は?
ムーファとビンチは慌てて臨戦態勢に入る。
間一髪、といった感じではあったが、二人とも構えた武器に攻撃があたり、吹き飛ぶだけで済んだ。
私は、すぐになくなった腕を再生させて、騎士に攻撃を仕掛ける。
それも時間加速が乗った一撃だ。
しかし、敵は時間加速している私に認識されることなく背後に回り、腕を切り飛ばそうと剣を振り下ろしてくる。
しかし、その動きはさっきよりも段違いに遅い。
——なるほど、理解した!
私は素早く回避し、再び剣で攻撃する。
その瞬間に敵は消えて、ビンチの前に現れる。
ビンチは咄嗟に盾を構えて敵からの攻撃を受け流す。
私は一気に敵から距離を置き、「時間停止!」と叫ぶ。
が、敵は何やら嫌な物を察知したのか、時間が止まる瞬間に転移を発動。
時間を止めた瞬間には敵の姿はなくなった。
「マジか!」
私は時間を止めても無意味だと悟り、すぐに時間停止を解除する。
その瞬間、騎士は私の目の前に出現して、切りかかってくる。
私はその一撃を剣でふさぐ。
……さて、どうすればこいつを撃破できるか……?
私は目の前の騎士の攻撃をさばきながら思案する。
「ルエさん!」
そんな中、ムーファが叫ぶ。
その瞬間、ビンチが騎士との間に入って攻撃をしのぐ。
ムーファの方を見ると、手でこっちに来るようにジェスチャーしている。
私は騎士をビンチに任せて急いでムーファの方へと行く。
「ムーファ、何?」
「あいつを倒す方法を考えました!」
ムーファはじっと私を見てくる。
「……私はどうすればいい?」
そう言うと、ムーファはゆっくりと説明を始めた。
「あの騎士、転移を使ってきますよね?だから普通に攻撃しても当たらない」
私はコクリとうなづく。
「だから、ここはルエの時間停止をフル活用します!」
「でも、さっき時間停止は躱されちゃって……」
「もちろん、時間を止めて失敗したのはわかってます。だって時間停止って叫んでましたもんね」
「うん」
「だから、これを使います」
そう言ってムーファが私に渡したのは、薄茶色の板だった。ちょうどダンジョンの壁と同じぐらいの色の。
「これ?」
「そう!これを使って、ルエは隠れてください!私とビンチさんで敵の気を引きます。
ルエはタイミングを見計らって時間停止で相手に止めを!」
「わかった!」
私がそう返答すると、ムーファとバターは敵の元へ全速力でかけていく。
私は急いで壁によって板を立てかけ、その後ろに隠れる。
凄まじい魔法と剣とのぶつかり合いが聞こえてくる。
私は、ここだ!と思った瞬間に時間停止を掛けた。
時間が止まる。
私は板の裏からそっと出てくる。
——よかった!今回はうまくいった!
どうやら、ムーファとビンチは二人で囲むように攻撃を仕掛けていたらしく、ビンチの持っている蛇腹の剣が敵の近場を囲み、ムーファとバターの魔法はその外側を埋めている。
きっと、攻撃の当たるギリギリで転移を仕掛けようとしてのだろう、騎士は私に注意できるはずもなく、時間を止められていた。
私は、ムーファの魔法をいくつか砕き、ビンチの蛇腹を避け、騎士の目の前までやってきた。
私は、これでとどめだと言わんばかりに連撃を叩きこむ。これで失敗してたら、二度とチャンスは来ないかもしれない。そういった思いにつられて、騎士の本体である、体の部分を粉々に破壊すると、このままではダメージを食らってしまう為、きちんと二人の攻撃の範囲外に出て、時間停止を解除した。
その瞬間、騎士は鎧がぼろぼろで動けなくなり、そのまま恐ろしい量のつららを食らってしまった。
そして、何もかもが終わった後、そこには何も残らなかった。
「……やりすぎちゃった」
私はこてんと優しく拳を頭にぶつけ、ちろっと舌を出す。
その瞬間、扉が出現して、開かれる。
扉の先には、階段が見えていた。
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