快進撃でした!
バターは羽をひらひらさせながら一礼をするように体を傾ける。
「こんにちは!バターだよっ!」
……思ったより元気っ子だった。
「ムーファ!ありがとう!おかげで僕もついに完全体になれたよ!これからもーっとムーファのお手伝いしていくから、よろしくねっ!」
口も無いちょうちょなのに器用に言葉を発している。
少し、びっくりはするが、まぁうちにはダーミラがいるので、割と冷静な私はバターに質問する。
「ねぇ、バター?あなたって何なの?」
「何?何って、う~ん……」
バターは羽をひらひらさせながら考え込んでいる。
「僕は精霊の王様!どう?凄いでしょ?」
「え?精霊の王様?」
「そう!ムーファの家に拾ってもらって、大切に守ってくれなきゃ、危うく死んじゃうところだったんだよ~!」
その優雅な姿にミスマッチにもほどがあるレベルで話し方は子供のそれだ。
そんなこと私が考えているとはつゆ知らず。
「これでムーファの役にさらに立てるようになるよ!」
バターはムーファの周りをぐるぐると飛び回る。
「え?」
ムーファが、「私?」といった感じで自分を指さしている。
「そうだよ~!だって僕がめっちゃ強いから、ムーファも大幅パワーアップ!なんだよ!」
「そうなの!?」
ムーファはびっくりしている。
そこにビンチが口をはさんできた。
「あの……よろしければ、進みながら話をしませんか?その方が良い気がします」
「確かに、強くなったんだったら試してみないとね!行こう!ムーファ!」
私たちは、次の階層に降り立つ。
次の階層は、見たまま火山の階層だった。
「いや、あっつ!!」
私は思わず叫ぶ。
「そんな事言ってる間に、敵ですよ!ルエさん!」
ビンチが武器を構えると、バターが「待って!」と制止をかける。
「ムーファにやってもらおう!実際にやった方が分かりやすいでしょ?」
「でも、氷って炎に弱いんじゃ……」
「僕の力だからそんな事関係ないの!さ!使ってみてよ!」
バターが目はないはずなのにキラキラとした視線をムーファにぶつけてくる。
「……わかりました!」
そう言って杖をかざす。ムーファの持ってる魔法の中で一番発動の早い氷のつぶてだ。
と思っていたのだが?
凄まじい大きさのつららが多数出現し、一瞬にして敵を串刺しにしてしまった。
「え、ええっ!?」
さっきよりも力が増している。
「ほら、問題ないでしょ!」
「本当だ……」
ムーファは今の魔法を自分が撃ったことをまだ信じられず、呆然として自分の手を見ている。
「本当に……?」
「本当だよ!」
バターは念押しする。
私もビンチも、ムーファの急成長にびっくりしている。
でも、とっても嬉しい。
「よかったね!ムーファ!」
私が笑って言うと、ムーファも笑って返してくれた。
「うん!」
そこから私たちの快進撃が始まった。
立ちふさがる敵をちぎってはなげ、ちぎってはなげ。
3人がめっちゃくちゃ強いパーティにほぼ死角はない!と言わんばかりの大進撃で、あっという間に117、118、119と層を突破していく。
そして1か月。とうとう私たちは、150層に到達したのだった。
「ねぇ……これって戻るのって徒歩なの?」
「多分徒歩ですよね。なかなかに地獄の帰り道ですね」
「行きはよいよい、帰りは怖いってこういう事を言うんですね」
150層。おそらく終わりも近い中、みんな三者三様?いや、みんな同じことを言ってるから三者一様だな。三者一様な事を言っている。
「まぁ、どんどん進めば何かいいことあるかもだし、どんどん進んでいこー!」
「おー!」
元気なのは、人間以外か……。
バターが話し始めたので、もう勢いに乗ってダーミラも話し始めた。
ビンチは「まぁ、ちょうちょがしゃべるんだったら猫もしゃべるだろ……」と言っていた。
もうどうでもいいみたいだ。
そして、ついに150層の地図埋めを終えた私たちは、150層管理人の部屋の前に立っていた。
いよいよ150層の管理人とのご対面である!
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