ムーファが危険でした!
私がモンスターを倒した瞬間、部屋の奥に扉が出現する。
これで終わりかな?と思って扉をくぐると、下りの階段と2つの扉があった。
扉の上には四角い何かがある。
じっと観察すると、四角く囲まれた枠の中の一方にはムーファ。一方にはビンチが映っている。
ビンチは今まさに管理人みたいなのと戦っている所だ。
戦っている相手は、私がさっき戦ったやつと全く同じ。
しかし、いつもよりボロボロになっている。相性が悪いのだろうか。
枠内をじっと見つめていると、やっとのことで勝利を収めた。
その瞬間、枠が真っ暗になってしまった。
「え!続きは!?どうなったの!?」
私が訳も分からずあたふたしていると、暗くなった枠の下の扉が開いてビンチが登場する。
さっきは一瞬でわからなかったが、ダーミラも一緒だ。
「やぁ、ルエさんは先についてたんですね!」
ビンチは笑う。
「で、ムーファさんは?」
私はもう一つ、ムーファの映っている枠を指さす。
「どうやらあれで、ムーファの今の状況がわかるみたい」
「なるほど……」
ムーファは少し慎重に進んでいたみたいで、ようやく管理人の部屋の前にたどり着いた。
扉を開けようとするムーファ。
「あっ!危ない!」
さっきの自分の経験を思い出して咄嗟に叫ぶ。しかし、ムーファは全く気が付いていないみたいで、扉を開けた瞬間、自分の真横にモーニングスターが飛んできたことにびっくりしている。
「どうやらこっちの声は向こうには届かないみたいですね……」
ムーファはすぐに警戒態勢に入り、杖を構える。
しかし、相手は遠距離武器であるモーニングスター使い。
詠唱を唱える暇もなくモーニングスターが飛んでくる。
ムーファはそれを躱すが詠唱を中断してしまう。
「バター!」
ムーファはバターに指示を出して2方向から敵を翻弄する作戦に出たようだ。
バターが氷のつぶてを撃ち出しながら移動をしていく中で、ムーファは再び詠唱に入る。
しかし、敵は今度はモーニングスターを投げずにブルンブルンと振り回してきた。
その回転はどんどんと大きくなっていき、バターとムーファを同時に襲う。
「おわぁ!?」
「……!」
二人とも、大きく飛びのく。
でも、このままじゃ、ジリ貧だ。
早く助けに行かないと!
私は扉を開けようとする。
しかし、扉はびくともしない!
「嘘!?」
「まずいです!」
ビンチがそう叫び、私は慌てて画面の方を見る。
なんと、そこにはモーニングスターを食らって負傷するムーファの姿が。
しかも、痛みで動けなくなっているみたいだ。
そこにじりじりと近づく管理人。
私はどんどんと扉を叩いて開けようとする。
しかし、やはり扉はなんの手ごたえも返さない。
「やばいやばいやばい!!!」
私はビンチの方を見る。
ビンチもずっとぶつぶつ言って考え込んでいる。
画面の中のムーファは今にも止めを刺されそうだ。
「あぁ……!!」
その時!
「バター!!」
管理人とムーファの間にバターが入り込む。
管理人は羽虫を落とすようにバターを叩き落とす。
「バ、ター!」
ムーファはきつそうな体に鞭を打ってバターの元に進む。
バターはぴくぴくと、必死で動こうとしている。
ムーファはそんなバターを両手で拾い上げる。
「バター……」
バターをぎゅっと抱きしめるムーファ。
「ムーファ、バター……」
しかし、敵はそんな状況、お構いなしである。
管理人は無慈悲にムーファに向かってモーニングスターを叩きつけようとした、その時。
「させないよ!」
ムーファの手の中から突然声と共に、バターが飛び出してきた。
「え、え!?」
バターは管理人に体当たりをする。
バターの体当たりは、あの小さな体にも関わらず、管理人をのけぞらせる。
「さぁ!止めを刺して、ムーファ!」
「え?あ、はい!」
ムーファはすぐに打てる小さな氷のつぶてを撃とうとした。
しかし、ムーファから出てきたのは、ムーファが普段、しっかりと詠唱をしなきゃ出すことができない氷柱。
しかも、それが何本も出てきて管理人を襲う。
勿論、そんな猛攻に管理人が耐えきれるわけがない。
管理人は、氷柱に何本も貫かれ、即死してしまった。
私も、ムーファも、ビンチも、今起こった状況に困惑している。
そんな呆然とした中、ムーファとバターは、扉をくぐって登場した。
そして、はっとしたムーファは、バターに詰め寄る。
「え!ねぇ、どういう事?バターって喋れたの?どうしてあんなに魔法の威力が上がったの!?いったいどうなってるの!?」
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