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94層でした

私は、ムーファをゆっくりと海岸におろし、時間停止を解除する。

ムーファは、ガッツポーズをとるも、突然の海に戸惑っている。


「あれ?」


ムーファはきょろきょろとあたりを見回し、


「ここ、どこ?」


と私に聞いてきた。


「94層」


と答えると、ムーファは海をじっと見つめる。


「どうやって進めばいいんですか?」


……そんなの、私にもわかんない。

でも、とりあえずどっかにいかなきゃさっきの門番が追っかけてくるかもしれない。

どうしようか……と私とムーファが悩んでいると、


「とりあえず、海に出ましょう」


とビンチが言った。


「どうやって?」


と私が聞くと、ビンチは収納の中を手探る。


「昔、漁師に弟子入りしたときに、釣り具と一緒に貰ったものがありまして……」


そう言って、取り出したのは小さなボートだった。

三人ぐらいだったらいけそうなやつ。


「とりあえず、海に出ましょう。何があるのかは分かりませんが、先に進んでみないことにはどうしようもありません」

「そうだね」

「そうしましょう!」


私たちは船に乗り込み、途方もなく広い海へと出発した。


「とりあえず、海の中には注意しよう。もしかしたら、海の中に何かしらあるか、もしかしたらモンスターが襲ってくる可能性だってあるから」

「まぁ、そうですね……っ!」


ビンチは素早く収納から銛を取り出して、海中に突き刺した。


「言ったそばからこれですよ……」


そう言ってビンチが見せてきたのは、歯が鋭くとがった魚だった。


「……このボート、大丈夫?」

「まぁ一応ボートは壊れにくいように魔法で強化はしているし、舟に近づく前に気づいて倒せるようにはしているから」


そう言ってモンスターを倒しながら進むこと数時間。

しばらく行くと、島が見えてきた。


「……島だね」


そうとしか言えない。

流石に景色がずっと変わらないことに辟易していたころだ。

ちょっとは感動を覚えるが、それでもやっとか……という気持ちの方が強い。


「ジャングルみたいな島ですけど、どうしますか?上陸しましょうか?」

「まぁ、上陸した方がいいでしょ。とりあえず、目立ったものがこの島しかなかったわけだし」


そう言って、舟を島の端につけて下りる。

舟を収納に片付けると、島の奥の方へと進んでいく。

ジャングルの中は、生物の喧騒に満ちている。

鳥やらが飛び立ったりして、先ほどの階層とは様子が一転している。


「それにしても、何か嫌な感じがする」

「えぇ、私もそう思っていたところです、ルエさん」

「なんかじめじめして、嫌な感じだなぁって事ですか?」


私とビンチは首を横に振る。


「……いや。何かに見られているような……」

「!何か来ます!」


ビンチが叫び、私たちは戦闘態勢に入る。

そんな私たちの前に現れたのは……


「サル?」


現れたのは、サル。しかも一匹や二匹じゃない。

何十、何百ものサルが現れた。

サルは、私たちを囲むと、どこかに誘導するように道を開いてきた。


「……こっちに進めってこと?」

「……そのようですね」


いったいこの先に何が待ってるんだろう?

というか、階段どこだろう?


いろいろと考えることはありつつも、サルに誘導されるままに先に進む私たち。

ある程度歩くと、開けた場所に出てきた。

そこには玉座に座る大きなサルが。

まさにサルたちの王、といった感じでふんぞり返っている。


「まさか、管理人?」

「いや、そんな馬鹿な……いや、でも……」


92層までは、管理人と次の階層は別々に分かれており、管理人がたおせなくても、次の階層に進んで色々と研鑽を積んでから、戻って管理人を倒すというのがセオリーだった。

しかし、93層でも、管理人の部屋の奥に階段があった。

ここからは、話が変わってくるのかもしれない。

王様ザルはやがて玉座から降りると、配下のサルたちに杖を持ってこさせていた。

木彫りだが、恐ろしいぐらいの魔力を持っていることが、ここからでもわかる。


そうして、王様ザルは、指を一本立て、その後にくいくいっとこっちに来いのジェスチャーをする。


「……多分、一人だけで来いって言ってるのかな?」

「きっと、そういう事でしょう」


ムーファのつぶやきに答えたビンチは、そのまま一歩踏み出す。


「すみませんが、ここは私に戦わさせてもらえませんか?ちょっと体も動かしたいもので」


そう言ったビンチは収納の中から杖と弓を取り出した。


「……わかった。でも、もし無理そうだったら……」

「大丈夫です。それに、一対一を邪魔してしまえば、数の暴力で不利になるのは私たちでしょう?」


そう言ってあたりを見回すビンチ。

そこには何千では済まないような数のサルがいた。


「ここは正々堂々一対一で勝って見せますよ。任せてください。だてにソロプレイはこなしていません!」


そう言って、王様ザルの目の前まできたビンチ。


王様ザルは、配下のサルを呼び寄せる。

どうやら、開始の合図をさせるようだ。


審判ザルは叫びながら片手をあげる。

そして、勢いよく振り下ろした。

それと同時に、ビンチと王様ザル、互いに距離を取った。


——戦いが、始まった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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