冒険者になりました!
町についた私が最初にしたことは、気持ちを切り替えることだった。
——お父さんとお母さんのことは気にしない!
ここから私の冒険者ライフが始まるのだ!
それに、Aランクになって帰れば、きっと二人とも私が冒険者になっても大丈夫だって思うはず!
そうして気持ちを切り替えた私は意気揚々と、冒険者ギルドの門戸を叩いたのだった。
冒険者ギルドの中は、がやがやと喧騒に包まれていた。
私は、受付まで進み、受付の目つきの悪い男の人に、はきはきと声をかけた。
「あの!すみません!冒険者登録をしに来たんですけど!」
男の人は、じろじろと私のことを見つめ、「いくつだ」と聞いてきた。
「十五です!昨日成人しました!」
「……そうか」
男の人は、「少し待ってろ」というと、裏手の方に向かった。
しばらくすると戻ってきて、赤いカードを手渡してきた。
「……そのカードに名前と、後は好きなことを書け。だが、能力とかは書くんじゃねえぞ。
そういうのは、トラブルの元だからな。信頼できる奴だけに教えろ。
赤いカードは、Eランクのカードだ。きちんと仕事してりゃ、そのうちランクも上がる。
仕事は、そこの掲示板に書いてあるやつをこっちにもってこい。
後は、冒険で得た物をギルドで換金するとかも仕事になるな」
そういうと、男の人は「じゃあ、頑張りな」と言って、しっしっといった感じで手を動かした。
私はムッとしながらも、ぺこりと頭を下げると、依頼を取りに掲示板へと向かった。
掲示板には、色々な依頼が掲示してあった。
『畑のスライム退治』とか『道のドブさらい』とか、『荷物を運んでほしい』だとか。
……なんか思ってたのと違うなぁ。冒険者の仕事って、もっと華々しいやつかと思った。
そう思いながらも、荷物を運ぶ仕事を取ろうとしたその時。
「おうおうおう、嬢ちゃん!さっき聞こえたぜ!昨日成人したんだってな!」
「へっへっへ!Cランク冒険者の俺たちが冒険者の心得を教えてやろうか?なんなら、もっと楽しいことまで教えてやんよ!」
さっきの目つきの悪い人よりかは顔は怖くない二人組に囲まれてしまった。
「いえ、とりあえずまずは、依頼の方からしたいと思っています。冒険者の心得も気にはなりますが、まだ私には早いので。これで失礼!」
私は依頼書を回収すると、さっさと受付へもっていこうとする。
「いやいやいや、遠慮しなくていいんだぜ!まぁ、ちょっとついてきな!」
そういって無理矢理私の腕を男がつかもうとしたその瞬間。
「おい、やめないか!」
そういって、若い男の人が男の手をつかんでひねり上げてしまった。
「あ痛たた!何をするんだ!この野郎」
「若い女性を食い物にしようとするあんたらが許せないだけだ!
何が冒険者の心得だ!どうせダンジョンにでも連れていって、金目の物やらを奪った後に魔物にでも食わせるつもりだったんだろう?」
それを聞いてびっくりした。
——この人たち、そんなことを考えてたんだ!
私は一歩男たちから後ずさる。
「チィ!気づかれちまったからには仕方がない。おい、行くぞ」
「おう」
若い男の人の指摘に、二人組の男はその場を立ち去ってしまった。
若い男の人は、私の方に向き直って言った。
「大丈夫?けがはない?」
「は、はいっ、ありがとうございます!」
私が若い男の人に感謝を伝えると、男性はひらひらと手を振って、
「いやいや、当然のことをしたまでさ」
と自分を謙遜する。
私は「では!」と言って、頭を下げて受付へ向かおうとする。
すると男性が「ちょっと待って!」と言って私を引き留めた。
「もしよければ、僕たちとパーティを組まないかい?返事は、君が依頼に慣れた後でも全然かまわないから。僕は、サシバナって言って、飛躍蛙ってところでパーティリーダーをしているんだ。Bランク冒険者なんだ。いい返事を待ってるよ」
少し早口にそう言うと、サシバナさんは去っていった。
私は、サシバナさんとその仲間と一緒に冒険している自分を想像してみた。
『背中は任せたぞ!』
『はい!わかりました!』
そうして、強大なモンスターに立ち向かっていく。
Bランクの冒険者と一緒なら、ランクもガンガン上がるだろう。
——あっいける!これAランク余裕だわ!
私は、すぐにパーティに加入することを決め、バラ色のAランクを夢見て、受付へと走っていくのだった。
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