一旦戻りました!
ビンチが加入したということで、今後の目標を聞いてみた。
ビンチは手を顎に当てて、う~んと唸っている。
「まぁ、先ほども言った通り、これ!と言った目標はないんですよ、私」
「はぁ」
私は、なんとも言えない気の抜けた返事を返す。
「でも、妹のためになれば、と色々やってたんですよ。えっと、料理、鍛冶、地図作成、農業、掃除、金銭管理、節約術、隠密術、魔法、剣、盾、斧、槍……」
そうして、ビンチは指を折る。最初は、考えながら指を一つ一つ折っていくビンチに、妹思いだな、とほほえましくなっていたが、その数が10を超えたころから笑えなくなってきた。
え、あなたどれだけ有能なんですか?
「……魔道具作成、梱包、解体、あれ?今いくつでしたっけ?」
「わからないけど、ビンチが凄いのはわかったよ」
「まぁ、ちょっとかじってやめちゃったのもありますし、そこまででは……」
「そこまであるんですよ!ビンチさん!」
思わずムーファが突っ込む。
「いや、本当に自覚持つべきですよ!これでよく他の人にパーティ誘われなかったですね」
「はじめは誘われましたよ?私の能力のおかげですね」
そう言って、何もないところから剣を取り出す。
「やっぱり、能力って収納?」
「そうです。やっぱりわかっちゃいますか」
剣を片付けて、ため息をつく。
「まぁ、そんなところこそ、扱いがひどくて、結局やめて、ソロなんですけどね。それに……」
私たちのほうを見る。
「最近ランクが上がったら、魔法で収納が使えるって言われまして……、結局上のランクの人からも誘われることはないんですよ」
「なるほど……」
そう聞いて私は少しばかりダルそうなあのギルドマスターを思い浮かべる。
「まぁ、その収納、私の収納と仕組みが違うみたいなのでありがたく使ってます」
ビンチは持っているバッグに手を突っ込むと、そこから剣を取り出した。
「へぇ、そうなんだ。どんなところが違うの?」
私が聞くと、ビンチは丁寧に説明してくれた。
まず、容量が段違いに能力の方が多いのだとか。
収納に大量の荷物を入れているけど、まだまだ余裕があるらしい。
後は、取り出すスピード。これも能力の方が早い。それに魔力も消費しないみたいだ。
「まぁ、こんなところですよ」
「……十分凄いと思うけど」
「知られてないので」
そう言って、ニコッと笑うビンチ。
「それなら、私たちでダンジョンの攻略いけませんかね!?」
——そうだ、その通りだ!
確か、最前線の人たちの進行が遅れている原因も食料問題だったはず!
「そうだよ!私たちだったら余裕でいけるかも!」
ビンチもうなづいた。
「……そうだね。面白いかもしれないね」
「そうと決まれば、準備をしに一旦地上に戻ろうよ!」
「はい!」「わかりました」
地上に戻る。
「じゃあ、私は食料の調達に向かいます」
「私は、ちょっと訓練を。最前線ともなると敵は絶対に強いと思うので!」
そう言って、一旦私たちは解散した。
「さて、私はどうしようか……?」
当然だが、することがない。
あれ?そう言えばダーミラは?
もしかして、最近影が薄くなってきたからすねたか?
「ルエお姉ちゃ~ん!」
噂をするとだ。
ダーミラは、ぴょんと跳んで、私の肩に乗る。
「いやぁ~さみしかったよ!ちょっとした用事が重なっちゃって、なかなか探検についていけなかったけど、ようやく暇な時ができた!」
「ちょっとした用事?」
「そう!……ここじゃ話せないから、一旦宿屋に行こうよ」
私はうなづく。……が、ここでは話せない用事って何だろう?
私たちは宿屋へと戻ってきた。
宿屋の自分の部屋で、私はダーミラから話を聞く。
「で?話したい事って何?」
「それがね、この世界に魔王が現れたらしいんだ」
「魔王?」
「そう」
ダーミラの話す魔王と言うものに検討がつかなかった。
魔王?どっかの国の王様かな?
ダーミラは丁寧に説明してくれた。
「魔王っていうのは、神々の世界でいう総称のこと。ある世界では、悪の親玉みたいなのを、魔王、って呼ぶんだけど、それになぞらえた物」
なるほど……。……ん!?
「それって、この世界にやばい犯罪者みたいなのが生まれたってこと!?」
「どっちかって言うと、そんな素質を持った人が、性格と実力、両方得てしまったときに、神様から与えられる称号みたいなものかな。まぁ、でも、やばいのは事実」
私は、少しばかり危なそうな香りを感じつつも、「そんなやつ、どうするの?」とダーミラに聞く。
「今、どこにいるかは具体的にわからないからまぁ、お姉ちゃんが心配するようなことではないかな。今は気を付けて様子見するだけでいいかもね!」
なるほど。
「わかった。とりあえず覚えとく」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!