仲間が増えました!
そんなこんなで、無事に子供たちを救出できた。
男も捕まり、事情聴取を受けた。
どうやらあの魔道具は、人からもらったものらしい。
怪しげな容貌をした女性だったとか。
良くわからないことばっかりだ。
何か、事件の起こる前触れでなければいいんだけど……。
誘拐事件が起きて一週間。
私たちは、再びダンジョンにもぐって、Sランクの称号を手にしたのだ。
自分の悩みにはちゃんと答えは出せなかったが。
まぁでも、とりあえず、先延ばしにしてても問題ないだろう!
そう思うことにした。
今日は、ようやく武器や防具が出来上がる日。
私たちは、少しだけワクワクしながら約束の酒場でビンチが来るのを待っていた。
いつもは賑やかな酒場も、さすがに昼頃は少しがらんとしている。
私たちは、頼んだジュースをちびちび飲みながらグダグダ話をしていた。
「それでさ、私は勢いよく頭を蹴り飛ばす!相手は吹っ飛ぶ!私の勝ちってね!」
「はぁ、その話、何回目ですか?」
「かれこれ10回目かな?おめでとう!」
私は年配の上司が酒を飲んだ時のように自分の武勇伝を飽きることなく語っていた。
ムーファやダーミラから、「飽きないの!?」みたいなことを言われるが、
実はもうだいぶ飽きている。
何でこんなこと私がしなきゃならないんだってなってる。
じゃあ何でやってるんだってなる。
ただ二人の反応が面白いからである。
そうして、十回目となる私の武勇伝を語っていたところで、ようやくビンチが酒場に現れた。
「やぁ、待ちましたか?」
「はい……待ちました」
すっかりぐったりしたムーファが、ビンチを歓迎する。
「とりあえず、ダンジョンへ行きましょう!早速武器の性能を試していただきたいんです」
「わかりました、それじゃ、行きましょう!」
と急ぎ急ぎムーファが言うので、話を中断してダンジョンへと移動した。
と言うことで、ここは手軽に行ける思い出のダンジョン60層。
ここまで来た私たちは、ドサッと言う音と共に荷物を出したビンチの方を振り返る。
「これが君たちの新しい武器と防具ですよ!」
そう言って私たちに見せたのは、透き通るほどに薄い防具。
「凄いですよね!ミスリルって、これだけでも鉄とかより断然性能がいいんです!軽量化とか、そんなレベルじゃありませんよ!?」
「これを着ればいいの?」
「はい!あと、これがお願いされていた剣と杖です!」
そう言って、今度はあの時のゴーレムを彷彿とさせるほどに濃いピンク色をした剣と杖を渡してくれた。
「とりあえず、使い心地を試してみてもいい?」
そう言って私たちはいつものように管理者の扉の前に行く。
「なるほど、早速ですね……まぁ、相手にとって不足はないでしょう!ぜひ試してみてください!」
私はドアを蹴破らんとする勢いでドアを開く。
そこには、いつものように陣取っているあいつが。
「ルエ!私から!」
ムーファはそう言うと、杖を振りかざし、瞬く間にミノタウロスを氷漬けにする。
いつもより圧倒的に魔法の発動が早い!
「ルエ!いいよ!やっちゃって!」
私は、剣を大きく振りかぶって飛ぶ。
剣はまるでカトラリーのように軽く、私がミノタウロスを真っ二つにするときも、一切の抵抗がなかった。
「やばっ!?」
それどころか、勢い余りすぎて、地面にまで刺さってしまった。
私は、地面に刺さった剣をまるで勇者のように抜くと、ビンチにお礼を言う。
「凄い武器と……防具だね!ありがとう!」
「……絶対防具の事忘れてましたね」
「……てへっ!」
いや、ホントに忘れていた。着ている感覚が全くと言っていいほどしないんだもの。
「本当にすごいですよ!こんなものが作れるなんて、もう一流の鍛冶師さんじゃないですか!」
「そう?そう言ってもらえると、私も非常にうれしいです」
「ほんとだよ!ただ、偶然に出会ったモンスターを退治しただけなのに、こんないいものがもらえるなんて!本当に武器や防具を作るだけでよかったの?」
ビンチは、静かに首を縦に振る。
「はい。それにルエさんには私の妹も助けていただきましたし」
「いや、助けたのはビンチだよ」
「それでも、あなたがいなかったら、どうなっていたことか」
ビンチは、微笑んだ。
「それで、もし良ければなんですが」
「何?」
私とムーファは、ビンチが何を言うのか、ドキドキして待っていた。
「私を、あなた方のパーティに加えていただけませんか?」
……え?
「まぁ、私はこれと言った目的もない人間です。友達もいません、私は孤児ですので、残念ながら血のつながっていない妹以外に家族もいません」
「……?」
どういう事だろう?
「つまり、この身以外に返せるものが無いんですよ。私、何でもできますよ?ぜひ、ご一考の余地を」
「ルエ……?」とどうすればいいのか、と言った視線で私を見てくるムーファ。
私はビンチに告げる。
「とりあえず一か月でどう?」
「契約成立です」
私とビンチは腕をがしっと握った。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!