考えようとしました!
次の日。私はムーファに「少し考えたいことがあるから」と今日の探索は遠慮させてもらった。ムーファも、「私もちょっとトレーニングをしたかったので、ちょうどいいです!」と快い返事をくれ、今日1日を自由時間とすることにした。
ダーミラにも、今日一日、一人にさせてとお願いした。
私は曇り空の下、はて、何を自分はしたいんだろうか……と考え込む。
街は広い。一回りするのにも、時間がかかるのだから、少し歩いて考えてみよう、とまずはギルド前を通りがかった瞬間。
「おぅ、ちょうどいいところに来たな」
「え?」
サイゼンさんが突然私の肩を引っ張ってギルドの中に引きずり込んできた。
今から大事なことをしようとしてたところだったのに!
私はじとーっとサイゼンさんを見る。
サイゼンさんは、若干慌て気味で、でも少し安心したかのような表情をしている。
「本当に良かった……」
何やら様子がおかしい。
「……何ですか?場合によっては相談に乗りますよ」
「あぁ、実はな……」
サイゼンさんから聞いたところによると、どうやら最近、10歳以下の子供がさらわれる事件が多発しているそうだ。親が目を離したすきにいつの間にかいなくなって、いまだ見つかっていない。いろんな人たちがあちこち探しているみたいだが、全く手掛かりもないそうで。
「うちのAランクもなーんも手掛かりなしで困ってるんだ」
「……なるほど。事情は把握しました。でもなんで私に?」
私が不思議に思っていると、サイゼンさんは指を2つ突き出した。
「一つ。お前がほぼSランク確定の有望な冒険者だから。
二つ。俺の勘だ」
「勘、ですか……」
「勘は大事だぞ、何かと役に立つ。……まぁ、ギャンブルと女性関係には役に立たんのだがな」
そして、ハッと一つ笑い声をあげると、そっと依頼書を差し出してきた。
「頼む。子供が帰ってこなくて、もう食事を三日取ってないって奴もいる」
私は、すこしため息をつくと、その依頼書を受け取って、サインする。
「……わかりました。受けましょう」
そして、依頼書を返すと、こんなことを念押しされた。
「あぁ、そうだ。間違っても、子供を囮にするなよ。それで失敗した奴はもう片手では数えきれないからな」
「わかりました!……?」
妙案を思いついた!
「それじゃ、あっという間に事件解決してきます!」
私はこの作戦はいける!と思って部屋から出て行った。
ギルド内では、すでに飲んだくれたちが酒を飲み始めている。
私は、そこに見知った影があるのを発見した。
「ビンチ!」
私が声をかけると、ビンチはゾンビのような動きでこちらを向いた。
途端に飛びついてくる。
「ルエさぁぁん!」
「ひゃっ!!?」
とりあえず、話を聞く。
「妹が、どうやら神隠しに遭ったみたいで……」
「神隠し?」
「はい、巷で話題になっている、突然子供が消えたってあれです」
話を聞くと、二日前から姿が見えていないようで、約束していた装備の鍛冶にも手を付けられない状態らしい。妹は、血は繋がっていないが、まるで兄妹のように育ってきた大事な存在で、話を聞いた昨日の夜から全力で探しているらしい。
「すみません、取り乱しちゃって……」
「いいよいいよ、このぐらいなら気にしないって」
私は話を聞くためにビンチのいたカウンターの隣の席に座っていたが、そこから下りてビンチの方を向いて、宣言する。
「大丈夫!子供たちはみんな無事におうちに返してあげるよ!」
「ルエさんは、ずいぶんと自信があるんですね……」
「うん!……あ、早く動いた方がいいよね。だから私はこれで失礼するね」
「ルエさん!」
「はい?」
「妹を、お願いします」
私は、胸をどんと叩く。
「任せといて!」
ギルドから出た私は、ギルドのすぐ横に座って、フードを被る。
そして、大きく息を吸込み、あの時と同じように言う。
「時間、停止!」
瞬間、音が消える。
街は、まるで絵として切り取られたかのように誰も何もピクリとも動かない。
そして、私の変化が始まる。
私の体はみるみるうちに小さくなっていく。なのに、服も体に合うように縮むから不思議でもある。
そして、なんとなく、五歳ぐらいかな?と思うところで時間停止を解除する。
「よし、ちいさくなってじぶんをおとりにつかえる!」
少しだけ口の回りが悪くなったが魔力や筋力はダーミラに前言われた通り、変わっていない。
私は意気揚々と「おとーさーん!おかーさーん!ど~こ~?」と言いながら路地裏へと入っていった。
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