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食事をしました!

今日のところはということで、ムーファと別れた私。

トボトボと道を歩いていく。

今、私の胸中を占めているのは、「これからどうしよう」

という思いだけだ。

あと一回探索に行ってしまえば、きっとSランクの魔物なんてあっという間に撃破できてしまうだろう。

そうなってしまえば、Sランク。

私の目標は終わってしまう。


「はぁ……」


もうすぐ夜になる。どこか食べる所、と思いながらきょろきょろとあたりを見回すと、声をかけられた。


「ルエ!久しぶり!」


私が顔をあげると、そこにはクサリネさんの姿が。


「クサリネさん!」


私の表情は少し硬いままなのを感じるが、それでも会えてうれしく感じる。

しかし、クサリネさんは私が隠している何かに気づいたようで、「ふぅ」と一息ついた。


「ねぇ、ルエ。久しぶりに会ったんだし、どこかで夜ご飯でも食べながら話をしましょうか」



クサリネさんは、町の中でもそこそこ高級なレストランに案内してくれた。


「まぁ、私の稼ぎだと、奮発してここが限界ね……」


クサリネさんは、頬を掻きながら椅子に座る。

私も、恐る恐るクサリネさんに続いて席に座る。


「なんでも食べていいわ、とは言えないけど、まぁ、とりあえず、何か頼みましょうか」


クサリネさんは、手慣れた様子でウェイターに注文した後で、まっすぐ私の方を見てくる。


「それじゃ、悩みがあるなら何でもいいなさい。……なんて言っても、言いづらいわよね」


「私の話を聞いてくれる?」そう言って、クサリネさんはコップの水を一口飲む。


「……サシバナは亡くなったわ」


そんなクサリネさんから出てきたのは、とんでもない一言だった。


「え……?」


サシバナさんが亡くなった?

そんな事実を今更知ってしまった。というか、知らなかったことに動揺を隠せない。


「ルエは、サシバナと最後に会ってるのよね、確か」


「何か言ってた?」と言うと、再び水を飲む。


「……治してくれって、もう一度パーティを組もうって、そう言ってました」

「……やっぱり、何も変わらなかったのね、あいつ」


クサリネさんはそう言ってグイっと水を飲み切った。


「はぁ~!」

「あの、大丈夫なんですか?」


私は恐る恐るクサリネさんに聞く。


「……そうね。ずっと一緒だった幼馴染が亡くなったって聞いて、動揺したわ。

——でも、それ以上に、『あぁ、やっぱりね』って思っちゃったの」


私は、ただ、クサリネさんの話を聞いていることしかできなかった。


「人っていうのは、一人じゃ生きてはいけない。でも、一人で生きていこうとしなければ、一人じゃなくても生きていけない。きっと、サシバナは……気づけなかったのね」


クサリネさんは一息ついた。それと同時に、ウェイターさんが料理を運んできた。

それぞれの料理から、いい匂いが漂ってくる。


「……さぁ、しんみりとした雰囲気にしちゃったけど、食べましょ?」

「……はい」


私たちは、料理に手を付ける。

しばらくの間、カトラリーと皿のぶつかる音だけが私たちの間に響き渡った。

一通り食べ終わる。すると、ナプキンで口をふいたクサリネさんが再び話し始めた。


「私ね、冒険者、やめようと思うの」

「え……?」

「私はサシバナがいたから冒険者になったの。ただ、サシバナの立てた目標に追従して、一緒に過ごしているうちに、これが私の目標だーって思うようになって」


クサリネさんは、出されたドリンクを一気に飲み干す。


「でも、あいつが死んで、そうじゃないって気づいた。私はただ、あいつの作った目標に流されていただけなんだって。

だから、田舎に帰って、本当に自分がしたいことを見つけるつもり」


私は、呆然としていた。そんな私にクサリネさんは言った。


「ルエ。あなたが何で悩んでいるのか、それは私にはわからないわ。でも、いつだってやりたいことを考えてみなさい。目標だって、絶対じゃないの。それが、私から言える助言かしら」


そう言って、クサリネさんは席を立つ。


「じゃあ、私はもう行くわ。私はもうここを発つつもり。最後に会えて嬉しかった」


クサリネさんは、微笑むと受付に行ってしまった。

自分のやりたいこと……?

何だろうか。必死で考える。でも思いつかない。

——私は、家族に会って、何がしたいんだ……?

改めて、そう思ってしまった。

あの時は、強くなって聞きに行けばいい!と思ってた。

でも、両親が本当に優しくはなかったら?

そんな真実、知らない方が良かったら?



——もう一度、じっくりと考えてみたい。

私は強く、強くそれを思ったのだった。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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