ギルドに報告しました!
私たちはビンチさんと一緒に帰り路を歩いていた。
「いやぁ、ルエさん、本当に強いですね。戦いがまるで見えないです!」
「そうですよね~!ルエはすごいんですから!いつか私も役に立てるように頑張っているのです!」
「ムーファは頑張ってるよ。大丈夫!まだまだ強くなれるってきっと!でも、それにしたってビンチは恐ろしく強いね。同じ15歳とは思えない……」
ビンチは帰りの道中にやばいことをいくつもやっていた。
まず、敵への暗器による奇襲。これによって一撃でやられた敵が何体もいた。
ホント話してる途中に敵見ずに打ち抜くんだもん。
次に料理。なんと先ほども見せた魔法ではない収納でキッチンを取り出してそこで料理をして、私たちに提供してくれたのだ。「これはゴーレムを譲ってくれたお礼です」と言って。
それがうまいのなんのって、普通のレストランよりも味が良い。
最後に、魔法。私たちも魔法はいくつか知っていてそれを駆使しているが、ビンチの使っている魔法の数は数え上げられないほど多い。私と同じ敵を探る魔法から、ちょっとした種火を作る魔法、冷えた水を作り出す魔法や果てには対魔物用の結界まで。どんだけ使えるんだ?っていうぐらいなんでもできる。
私たちは、割と快適にダンジョンから脱出ができた。
いまは、冒険者ギルドの前である。
「いや、ホントにありがとう。ものすごく快適な旅だった」
「いえいえ、こちらこそ。ずっと一人で潜っていたのでなかなか人と話す機会に恵まれず、久しぶりに楽しい時間を過ごせました!」
私たちは互いにお礼を言いあう。
「それじゃ、また会いましょう!」
「じゃ、またね!」
私たちは、ビンチと別れた後、まずはギルドに戦利品の納入に向かうことにした。
「すみませ~ん!」
「はい!ご用件は何でしょうか?」
今回はきれいな女の人だ。
またあのおじさんだったらどうしようかと思ってた。
「えっと、素材の買い取りに来たんですが」
「はい!じゃあ、素材を机の上に出してください」
「え~っと……」
私たちは、サイゼンさんの忠告に従い、カバンの中から素材を取り出すように見せかける。
「はい、はい、はい、はい?はい……」
だんだん受付のお姉さんの表情が怪しくなってきた。
「えっと……、ギルドマスターを呼んできても?」
「え?いいですよ」
私がそう答えると、お姉さんは奥の部屋に入っていってしまった。
しばらくののち、戻ってきたお姉さんが、「こちらへどうぞ」と私たちをギルドの一室へと案内する。
私たちが部屋の中に入ると、中には額のしわをもむサイゼンさんがいた。
「はぁ……」
サイゼンさんは大きくため息をついている。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもねえよ……なんだ、あの魔物の量は?しかもほとんどが管理人クラスじゃねえか……」
「?」
私たちは互いに見合って顔を傾ける。
どういう事だろう?
「管理人ってのはな?その階層のボスを任されるほどの存在で、最初の討伐が終わると途端に挑もうってやつは減るんだ。なにせ命の危険が増す上にそれよりかは一つ上の階層で狩りをしていた方が安定して稼げるってんでな」
「はぁ……?」
「……もっと簡単に言おう。お前たちが倒してきた魔物の中にはSランクが複数体紛れ込んでる。そうだな……あと数匹でお前らもSランク冒険者だ」
「ほえ?」
「それってどういう事でしょう?」
「まぁ、お前らがギルドで最高ランクってことだ」
私たちは顔を見合わせる。
私はもう一度、サイゼンさんの顔を真っすぐ見つめて聞く。
「本当にですか?私たちが一番上なんですか?」
「なんせこのギルドにはSSランクはおろかSランクすら現役の冒険者にはいないからな」
「そんな一足飛びに?」
「あぁ、そうだ。これで命は賭けてないと言われたらびっくりするな」
なんというか、実感がわかない。
これで、私の目標は達成されたんだ。
というか、早すぎじゃない?
「え、そんなにランクアップって早いんですか?」
「人によるな。冒険者ギルド全体でのランクアップ最速記録は登録完了16秒後にSSSランクに認定された“剣聖”で、その次が登録完了3分12秒後にSSランクに上がった“バケモンテイマー”、1週間以内に47人がAランク以上にランクアップを達成し、254人は1ヵ月でSランクに駆け上ってはいるから、それから見ると、だいぶ遅い方だな、お前ら」
サイゼンさんは、思い出すように目を閉じている。
「まぁ、そういう奴は、生まれつき持ってる能力が格段に強かったりするがな」
「なるほど……」
世の中って広いんだなぁ。
「まぁ、お前らのSランク承認には、まだ少しだけモンスター討伐の実績が足りないし、ここでAランクに昇格させたら、実績集めは1からだ。それなら、Sランクのモンスターを見つけて狩った方がいいな」
「え。実績って、ランクアップで消えるんですか?」
「そうだな。ランクアップ時には新しいカードを発行してるからな。モンスターが納入されたときに一緒に出したカードに実績を書き込み、一定以上の実績でランクアップを進めるよう表示する仕様になってるんだ」
「これ、すごいですね」
「昔の人が作ったものだ。仕組みはよくわからん」
「じゃあ、後日Sランクにランクアップでいいか?」
「えぇ、勿論問題はありません」
「そうか、それは良かった」
サイゼンさんとの話を終えた私たちは、お金をもらってギルドの外へと出る。
「凄かったね、金銭」
「はい!しばらく仕送りには苦労しません!」
私は隣にいる晴れ晴れとした顔のムーファを見て考える。
さて、私はこれからどうしよう?
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!