話を聞きました!
私たちは、落ち込むムーファを連れて部屋を出る。結局、私の倒したゴーレムはとりあえず収納したが、いまいち材質が何なのかわからなかった。
「ね?今度これで何が効くか試してみようよ」
「……はい、そうですね……」
私は、約束していた通り、男性を起こしに行く。
テントの方に近づいて、大声で呼びかける。
「すみません!終わったんですが!」
男性は、のろのろとテントから出てきた。そして、男性は大きなあくびをしながらお礼を言った。
「あ、ありがとう~」
……もしかしたら、この人だったら何か知ってるんじゃない?
そう思った私は、寝ぼけ眼をこすって目を覚まそうとしている男性に声をかける。
「あの、すみません。ここの管理人について聞きたいことがあるんですけど、これってギルドの情報になかったんですよね……」
そう言って先ほどのゴーレムをとりだす私。
「こいつは!?」
そう言って男性は駆け寄る。
「何か知ってるんですか!?」
そう言ってムーファが男性の肩をつかむ。
「教えてください!こいつは何でどういう能力を持っているのか!どうやったら倒せるのか!」
そのままムーファは男性の肩をグラグラ揺らす。
「ま、待って下さし……」
あ、噛んだ。
私はムーファを止める。
「待って、ムーファ。この人完全にしゃべれなくなってる」
「あ。すみません!」
男性は、ふらふらとした足取りで、「大丈夫です~!」と答える。
私は、再度男性にお願いする。
「じゃあ、この魔物の情報をいただけますか?」
「そうですね……。私は、ある噂を聞いて、ここまで来たんです」
「ある噂?」
何なのだろうか、それは?
「その噂っていうのが、ここのゴーレムが、ミスリル製で出現する時があるという噂で」
「「ミスリル!?」」
ミスリルは、名前だけは聞いたことがある、伝説の鉱石だ。
聞くところによると、その価値は相当なものだとか。
しかも、武器や防具にすると、色々なものが強化されるとだけ聞いたことがある。
「じゃあ、私たちが戦ったのって……」
「ミスリルのゴーレムですね。ほんとに戦った冒険者が少なくて、情報がほとんどありませんでした。
かろうじて集めた情報によると、硬く、素早く、両腕を剣に変形して戦う存在だとか」
思い当たる節はいろいろある。
「あぁ、ごめんなさい。私の狙ってたやつでしたから、つい興奮しちゃいまして」
そう言って頭を掻く男性。
そして男性は、次に頭を下げてきた。
「本当に勝手ではありますが、このミスリルゴーレム、お譲りしていただけませんでしょうか?」
「え?」
「私、これを手に入れるために3日3晩粘ったのですが、一向に手に入らなくて。お礼はします。どうか、快い返事を……」
私たちは顔を見合わせた。
確かに、ミスリルゴーレム自体は、ほとんど私たちにとっては価値のないものだった。
でも、高く売れるのであれば、売ってお金を稼ぎたい。そうすれば、ムーファの仕送りもよくなるからだ。
それに、この魔物を使って研究したいということもある。
レアな魔物であったことは実に予想外だったが、それでも、ムーファのリベンジの為、取っておくに越したことはないと思うのだ。
そんなことを考えていると、ムーファは一つ質問をする。
「お礼って何ですか?」
男性は、まっすぐにこちらを見て答える。
「はい。ミスリル製の装備品です」
……え?
「え、ミスリルを持っているんですか!?」
「いえ、これを使って作ります。私、こう見えて鍛冶もできるんです」
「え、じゃあ、つまりこのミスリルを貰いたいというのは……」
「私の特訓の為です。ミスリルは入手が難しいので、こうやって手に入ることを知ってここまで来たんです。もちろん加工費用やらなんやらをお出しする必要はありません」
鍛冶師で冒険者って……。
「ミスリルって、一部分だけでもいいですか?」
ムーファはさらに質問を重ねる。
「はい。でも、余りに少ないと、アクセサリー程度しか作れませんが……」
ムーファは私の方を見る。
「ねぇ、ルエ。本当に申し訳ありませんが、ゴーレムをこの人に加工してもらうことってできませんか?」
「え、別にいいけど……、でも仕送りのためのお金は……?」
私はムーファにそう聞く。
私は別に生活できれば問題はないけど、ムーファがお金を使うんじゃ?
「そもそも、このゴーレムを倒したのはルエですよ。どうするかは、ルエが決められます。
私はゴーレムの権利なんて無いのに、わがままを言ってるだけです」
……なるほど。でも、ムーファの負けて悲しそうな顔は、なるべく見たくはない。
だったらとるべき道は一つ!
「じゃあ、加工をお願いします。ですが、ゴーレムの指一本だけこちらにいただけますか?
ミスリル製のゴーレムに対する対策を立てたいので」
「本当に!?いいんですか!?」
男性はぴょんぴょん跳んで喜んでいる。
「ありがとうございます!無駄にしないように最高の仕事をします!できれば連絡を取りたいので名前と住んでる場所を教えていただけませんか?私の名前はビンチと言います。歳は15です!よろしくお願いします!」
「えっ!!15歳なんですか!?」
「はい。成人する前から鍛冶師の弟子として頑張ってまして。成人と同時に冒険者となり、今こうやって、Cランクで頑張っています」
「私たちも今年成人の15歳なんです!」
「そうなんですか!よろしくお願いします」
私は、同年代であることを知って、少し緊張がほぐれた。
「あの、もしよければ、敬語は外しません?そっちの方が気が楽で……」
「あぁ、どうぞ。すみません、昔から目上の人にばかり接してきたもので、このような言葉遣いが抜けないんですよ。なので私はこのままで問題ないです」
「そう。——じゃあ、私は崩すことにするよ。よろしくね、ビンチ。私はルエって言うんだ
こっちは飼い猫のダーミラ」
「私は、ムーファと言います。こっちは私の従魔のバターです。よろしくお願いします、ビンチさん」
ダーミラが「にゃあ」で、バターはひらひらと回って挨拶をしているようだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします。ルエさん、ムーファさん。
あなた方から受けた恩は必ず最高の装備品で返して見せます」
そう言って、ビンチは頭を下げた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!