ムーファが仲間になりました!
私は、自分の能力を全部話した。ダーミラの方を見ると、ダーミラも「いいよ」と言ってくれたので、ダーミラの事も話した。
最初は、うんうん笑顔でうなづいていたムーファも、ダーミラの話と続いていくと、
アレ、コレ私が聞いていいお話なの?となっていたが、構わず話し続ける。
私が話し終わるころには、ムーファは冷や汗たらたらだった。
「あの、それ、本当?」
「うん、本当」
私は笑顔で返した。
「え、その猫ちゃん、神様?」
「そうだよ!」
洗いざらい話してしまったので、思いっきり声を出すダーミラ。
「え、あ、しゃ、しゃべった!??!」
「しゃべるよ!」
そう言ってダーミラはぴょんと一回り。
心なしかバターも驚いてるみたいだ。
「まぁ、これだけ話すことができたのも、私がムーファを信頼できる仲間だと認めたっていうことで。それじゃ、私とパーティを組んでくれませんか?」
私はムーファに手を伸ばす。
ムーファは、はっと気づくと、すぐに私の手を取った。
「もちろん!これからもよろしくお願いします!」
私たちは、これからの事について話し合った。
ムーファは、お金を稼いで、実家に仕送りを続けたい。
私は、このダンジョンを進み、Aランクの冒険者まで駆け上がって、実家に帰って親を説得したい。
つまり、目的を達成するためにすることは一致しているということだ。
「「このまま、ダンジョンの最奥を目指そう!」」
そこで私はふと気づく。
「あれ、このダンジョンって何層あるの?」
「えー、ルエ、知らないんですか?」
「ムーファは?」
「……知りません」
とりあえず、いったんギルドまで戻ることにした私たち。
そういえば、カード渡されて、ちょちょっと説明されただけで、重要なこと、なんにも知らない。
地上に戻り、真っ先にギルドへと向かう。
……げっ。
そこには、たまにいるあのおじさんが受付にいた。
でも、待つ時間ももったいないので、さっさと向かう。
「あの、すみません」
「はい、なんだ?」
「ダンジョンについて教えてほしいんですが」
私がそう聞くと、おじさんは「お前ら、ランク、どんぐらいだ?」と聞いてくる。
「この前、Cに上がりました」
「私もです!」
おじさんは、じっと私たちの事を見つめると、「そうだな……」と言って、私たちに問いかけた。
「お前ら、なんでダンジョンにもぐる?」
突然の思いがけない質問。でも、さっきまで話していたから、すらすらと言える。
「Aランクの冒険者となり、その強さを認めてもらいたい人がいます」
「お金を稼いで、実家に孝行したいんです」
おじさんは、じっと私たちを見つめる。
「そりゃあ、あれか?お前らの命を賭けても惜しくないってやつか?」
おじさんは、そう言うと、さらにきつい目線で、私たちを見つめてきた。
私の答えは決まっている。
「そんなことありません!私は、そんな命を軽く扱ったりしようなんて、思っていません!」
「私も、また、笑顔で家族に会いたいから、命を賭けることは……」
その返答に、おじさんは黙りこくる。目をつむり、じっと何かを考えている。
と、思っていたら、目を開いた。
「残念ながら……」
とおじさんが口を開いた瞬間、「俺は命を賭けられるぜぇ!」と横やりが入ってきた。
おじさんは横やりを入れた男性の方を向く。
「お前、なんつった?」
「だから、俺は勇猛果敢に魔物に立ち向かい、命を賭けて、死に花を咲かせて見せましょう!あんたが必要としている言葉は、こういう事だろう?俺もCランクなんだ。だから、さっさとダンジョンの深部への行き方を教えろよ!」
おじさんは、「なるほどな……」と言うと、机の中をガサゴソとあさって、白い紙を一枚取り出した。
「これを使えば、ダンジョンの門番にダンジョンの深部への行き方を教えてもらえるぞ、頑張れ」
そう言って、男に紙を投げ渡す。
「へへっ、サンキューな!」
そう言って、男はギルドから去っていった。
私たちは、ちょっとまずいことを言ってしまったのかと冷や汗を流す。
思えば、冒険者って、命を賭けられなきゃダメな仕事じゃんと今になって心の内を洗いざらい言ってしまったことを後悔する。こんなことなら、嘘でもついておけば、良かったんじゃ……?
と私が考えていると、男の人が改めて話し始めた。
「それじゃあ、気を取り直して。残念ながら、お前たちには、……」
そこまでおじさんが言いかけたところでムーファが「待ってください!」と声を出す。
「わかってます、ダメなんですよね!……でも、どうかお願いできませんか?私たちは、私たちの家族のために、頑張らないといけないんです!」
ムーファの懇願に続いて、私も「お願いします!」と頭を下げる。
おじさんは、そんな私たちを見て、大きくため息をつく。
「あのな、人の話は最後まで聞け?」
「「え?」」
「お前たちにはな、『残念ながら、命を賭けたくないと言ったが、それでも最前線は一瞬の油断が命取りとなるような未開の地が多くある場所だから、それだけは覚悟しとけよ』と言おうと思ってたんだ」
……、え、じゃあ、それって……
「情報はくれてやる。それに、ほかにもいろいろ教えてやる。死にたくないんだったらきっちり聞きな」
「ええっ!?OKなんですか!?」
「そうだ」
「さっきの男の人は?」
「あいつだって、OKだよ。ただ、死にたがりだったし、何も聞かれなかったからほんとに必要最低限の物しか渡してないがな」
それって、危険なんじゃ……
「あいつが一人で最前線なんて行けるわけないだろう?罠の場所、モンスターの特徴、フロアの特性。ただでさえ、60層以降はショートカットも無く、強いやつらが手探りで進んでる場所なんだ。まぁ、多分、少ししたら、ぼこぼこにされて、他の冒険者に助けられて戻ってくるさ。そういう冒険者の洗礼の場としても紙を渡したわけだ」
なるほど!
「それじゃ、俺が直々にお前たちに色々説明してやる。俺の満足のいく回答が出せたからな。この、ギルドマスターサイゼンのギルド・ダンジョン講話だ」
……え、この人、ギルドマスターだったの?
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