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女の子を助けました?

「あぁ!?なんだおめえは!?」


突然部屋に人が飛び込んできたことで動揺が隠せていないみたいだ。


「幼気な少女をいじめているのはお前たちかー-!」


私が意気揚々と叫ぶと、男たちは焦りだした。


「おい!お前!う、うしろ」

「そう言って私の気を引こうとしても無駄だよ!」

「いや、本当に……」


「時間遡行」「時間加速」


私は、小さな声で呟いて、男たちの動きを極限まで遅くすると、自分にかけた時間加速で後ろにいたゴブリンリーダーを一刀両断する。

これで、男たちはゴブリンリーダーが何もせずに倒れたように見えるだろう。


「解除」


私が小声でそう言った途端、ゴブリンリーダーは二つに分かれて倒れる。


「で?後ろが何?」


私がそう言うと、ゴロツキたちは青ざめる。


「……い、いやあ~、ちょっと争っているように聞こえましたかね?多分、勘違いですよ!

それじゃあ、俺たちはこれで!」


そういって、ひきつった笑顔で、ゴロツキ二人は慌てて私の横を通って立ち去って行った。


「で。あなたは?どうしてあの人達と言い争ってたの?」

「え、これ私も疑われるパターンですか?」

「そりゃあまぁ、ほら、勢いで飛び出したはいいけど、私、実際どっちに非があるのか知らないし」

「そんなんで飛び出してきたんですか!?」

「ほら、私、一度走り出すと止まらないから!」


女の子は、はぁーっとため息をつくと、私の顔を見る。


「とりあえず、私は約束を破られただけです。『モンスターを育てたいから、パーティを組んでくれ』ってお願いして、それで加入したはずなのに、この部屋まで進んだら、『お嬢ちゃん、金目の物、全部出してもらおうか』って。そうしなきゃ、管理人を倒してやらんぞって言ってきて。管理人倒せないと出られないのに。結構ピンチだったんです、私。ありがとうございました」


女の子はぺこりと頭を下げる。


「いいって!私が偶然居合わせただけだから!それで、モンスターを育てるって?」


私が聞くと、女の子は頭をかきながら言う。


「えーと、私の能力って、『使役』なんですよね」

「使役?」


私が聞き返すと、女の子は話を続ける。


「はい。モンスターを一体仲間にして一緒に戦う能力です。仲間にしたモンスターの能力も使えるので、強いモンスターを仲間にしようって思ってたんですけど、何の因果か、バターが仲間に……」


バター、と女の子が言うと、ひらひらとちょうちょが女の子の指に止まった。

女の子曰く、小さいころから何年も面倒を見てきたちょうちょだったのだが、彼女が使役の能力を手に入れた途端、ふわふわと飛んできて、そのまま、使役されてしまったそうだ。


「使役の条件が、『心通わせた魔物と手を合わせること』だったんですけど、まさか、バターが魔物だと思ってなくて……」

「何年も生き続けるちょうちょ?不思議には思わなかったの?」

「いやぁ、家族のみんな、『どうして生きてるんだろう?』と思いながら世話をしていましたが、まさか魔物だとは思ってなくて……」


だって、近所で捕まえたやつでしたから、と彼女は付け加える。


「それで、育成を?」

「はい。魔物の中には、成長をする中で強くなっていく種があるとか!」

「……聞いたことある。フェンリルの話?」

「そうです!」


昔、『使役』の能力を手に入れた人が、子犬を仲間にして、共に戦い続けた結果、相棒のフェンリルへと成長したって話。

書庫に本がおいてあったから、読んだことがある。


「なるほど」

「だから、その可能性に賭けているんですよ。

……でも、バター、すごく弱いんですよね。できることと言ったら、バター!」


女の子が名前を呼ぶと、ちょうちょは、氷のつぶてを出して、壁にぶつけた。


「なるほど。1層のゴブリンにも苦労しそうだわ、これ」

「はい。何発か当てれば倒せるのですが、なかなか戦闘でそんな隙が作れず。まだ三体ほどしか倒せていないのです」


女の子はそう言うと、辺りをわざとらしくきょろきょろとしだした。


「あぁ!どこかに強くて優しい、猪突猛進で私を助けてくれる、女の子はいないかなぁ?」


……なんだか、雲行きが怪しくなってきた。


「あ!私、用事を思い出した!これから、武器のメンテに行かなきゃなぁ!」


そう言って、女の子に背を向けていこうとする。

その肩をがしっとつかまれた。


「何のために身の上話までしたと思ってるんですか?

『目の前のチャンスは、死んでも離すな!』が家訓の家でだてに育ってきてませんよ!」


やばい!

「時間停止!」


私がそう唱えると、周囲の音が無くなる。


「よし、今のうちに……」


私が後ろを向くと、ちょうど瞬きした女の子と目が合った。


「え?」

「逃がしませんよ!」


うそ、なんで動けてるの!?

もしかして、時間が止まってない……!

そう思った私の体に起こった異変が、そうじゃないことを暗に告げた。


さっきよりも、女の子が大きくなっている。

いや、違う。

私が小さくなってるんだ!


このままではまずい!


「解除!」


慌てて、時間停止を解除する。

私は体が小さくなり拘束が緩んだ隙をついて、走り出した。


「いくよっ!ダーミラ!」

「わかった!」


ダーミラが私の肩に飛び乗ろうとする。


しかし、前より肩の幅が小さくなってしまったので、うまく飛び乗れず、ダーミラはバランスを崩してしまった。


「うにゃ!?」


私の肩から落ちるダーミラ。


「危ないっ!」


そう言って女の子は、ダーミラをかばって倒れる。

女の子は、動かない。

……やばい、ケガさせちゃったかな?

私は、恐る恐る近づく。


「あの、大丈夫?」


女の子は、パッと起き上がると、ダーミラを掲げて言った。


「さぁ!この猫を返してほしければ、私を仲間にしてください!どうかよろしくお願いします!」


……あぁ、なんて面倒なことに巻き込まれたんだろう。

私は大きくため息をついた。


「わかった、わかった!仲間にするから」

「ほんとですか!やったー!」


女の子は大喜びでダーミラを離す。

ダーミラは、私に近づいて、耳打ちをする。


「逃げなくていいの?」

「まぁ、大丈夫でしょ。なんとなく、悪いやつじゃないとは思ってるし」


女の子は落ち着くと、私に頭を下げてきた。


「それじゃ、よろしくお願いします!私、ムーファって言います。

こっちは、相棒のバター」


ムーファは自己紹介をした。なのでこちらも返す。


「こちらこそ。私、ルエって言います。よろしく!こっちは、えっと……飼い猫のダーミラ」


そう言ってフードをとる。


「え、嘘、私よりも若い?と言うか、さっきは私よりも背が高かったのに!なんで!?」


今更になって、ムーファは驚いている。

私は笑って返す。


「これは能力の代償。ちょっと色々あって、詳しく説明できないけど、私、強いよ」


——これが、今回の探索で得られた情報。

多分私、めっちゃ強くなってる!


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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