ソロダンしました!
翌日。
暖かい布団にくるまって目を覚ます。
外からまぶしい日の光が差し込んでいる。
「うぅーん!よく寝た!」
私はベッドから降りて、出発の準備をする。
私が着替えを終わらせると、ダーミラが現れた。
「そろそろ行くんだね!」
「うん!」
私がそう答えると、ダーミラは、私の肩に飛び乗った。
「僕はここに乗って良い?」
「良いけど、ダンジョンの中では下りてね」
「わかった!」
そう言って、二人で宿を出る。
ダンジョンへと行く道の途中で、フードを購入した。
私の能力が、外見に影響を及ぼすので、その対策である。
ダンジョンへと着くと、私は見張りの人にカードを提示して、中に入った。
中に入ると、初めてダンジョンに入ったときに感じた、ひんやりとした静寂に包まれた。
「戻ってきた……」
あの時は死を覚悟していたが、今は違う。
今は、やる気で満ち溢れているのだ!
「さぁ!目指すはAランク冒険者だー――!!」
「頑張れ!」
ダーミラも応援してくれる。
さぁ、ここから生まれ変わった新生・私が始まるのだ!
ダンジョンを進む。
索敵するための魔法は、以前にトゲモリさんから教えてもらった。
その魔法を用いながら、1層を探索していく。
まずは、弱いモンスターで、戦闘スタイルを見極めたい。
ダーミラにそれを言ったら、「いきなり階層の管理人でも大丈夫だとは思うけどね~」と言っていたが、念には念を入れる。
……索敵に感知があった!
どうやらゴブリンみたいだ。
とりあえず、新しく得た能力を早速使ってみる。
「時間加速!」
私がそう唱えると、周囲の音が若干鈍くなる。
私は、すぐさまゴブリンに急接近。
そのまま剣で一刀両断して、能力を解除する。
ゴブリンは、何も声を発することなく、首をはねられ、即死した。
「ふう……」
……使ってはみたが、いまいち手応えを感じられない。
それに、若返ったっていう実感もわかない。
手のひらを確認しても、全く大きさ的にも、変わったところはないのだ。
私は、ダーミラの方を向く。
「ダーミラ!見てた?」
「うん!今のは、多分コンマ一秒もかかってないね!それだけなら、寿命にも全く影響ないんじゃない?」
「ほんと!?」
なるほど、時間加速は自分にかけるととっても早くなると。
でも、これじゃらちが明かない。
「ダーミラ!1層の管理人だったら問題ないんだよね?」
「うん!この程度のモンスターがはびこる層だったら、管理人も大したことないよ」
ダーミラはすぐに答えてくれた。
……それなら、行ってみてもいいかもしれない!
「それじゃ、管理人さんのところへ行こうか!」
「うん!」
道中、ダーミラと話をしながら歩く。
ここら辺の敵は、問題にはならないことがわかったので、索敵は発動しつつも、会話をする余裕ができた。
「そういえばさ、なんでダーミラは私のこと、お姉ちゃんって呼ぶの?」
ダーミラは、にっこりと笑って言った。
「お姉ちゃんのほうが年上だからだね!だから、何となく、お姉ちゃんって呼んじゃうんだよ」
「……ダーミラって何歳?」
「そうだなー。人間の年齢だと、まだ十歳かな?」
「えー!ルーと同じ年じゃん!」
「ルー?あぁ、君の弟の事?」
「うん……」
「あぁ、そうか。家には今戻れないんだったね」
あの日、家を飛び出した。
それを後悔してないって言ったら噓になる。
でも、自分ができることを満足にやってから、家にもどりたい。
そうしたら、多分お父さんとお母さんが下す決断にも、納得できると思うから。
「まぁ、大丈夫!絶対に家に幽閉させるって言ったこと、後悔させるんだから!」
「でも、実際痛い目見たよね」
ジト目で私を見つめるダーミラ。
「それはそれ、これはこれ」
私は箱を持ち上げてどこかへやる仕草をする。
「まぁ、人生失敗はつきもの!例え取り返せない失敗をしたとしても、そこから這い上がっていけばいいの!」
「お姉ちゃんそれで下手したら死んでたよね。死んだら元も子もなくない?」
「むう……」
……痛いところをずさずさついてくる。
そんな話をしているうちに、管理人のいる部屋の前まで来た。
「ほら、もう管理人の部屋の前だし、この話はもうやめようか……」
と、私が言い終わるのと同時に中から怒声が聞こえてきた。
『あなた達!嘘をついてたんですか!?私の従魔を育ててくれるって約束をしたのに!?』
「……何やら不穏そうだね、ダーミラ」
「うん。とりあえず、様子を……」
見た方がいいかもしれないね、とダーミラが言い終わることもなく部屋の中に飛び込む私。
「やあやあやあ!約束を反故にしたのは何処のどいつだ!」
「「「「……は!?」」」」
部屋の中には、以前顔を見たことのあるゴロツキ二名と、ちょうちょを肩に止めた少女がいた。
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