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第6話 堅石さんの朝に弱い



 堅石さんのお世話をする中で、一番大変なのは朝だ。


 まず彼女は、自分で起きられない。


 家では毎日メイドさんに起こしてもらっていたらしく、一人で起きると普通に遅刻してしまう時間に起きる。


 だから毎日僕は朝起きて、先に自分の身支度を済まし、制服に着替えてから彼女の部屋へと上がる。

 もちろん今回は起きているわけないので、チャイムも鳴らさずに合鍵で開けた。


 そし堅石さんの自室兼寝室に入る。


 とても綺麗な部屋なのだが、だいたいは僕が掃除をしているからだ。


 まず確認するのは、堅石さんの服装。


 彼女は意外と寝相が悪く、寝ている間に服がはだけている場合が多い。

 しかも薄着で、ノ、ノーブラだから……本当に見えちゃいけないところが見えてしまいそうになっている。


 今日は……くっ! あ、危ない!


 服が捲れ上がり、し、下乳が見えていた……。


 先に服を直し、一息ついてから堅石さんの肩に触れ、揺らす。


「堅石さん、朝だよ。起きて」

「んぅ……」


 可愛い。

 思わず頭の中で端的に呟いてしまった。


 堅石さんは朝が弱く、起きてからもぼーっとしていることが多い。

 いつも無表情でお堅い堅石さんの、唯一といっていいほどの、油断して年相応の可愛らしい表情が見れる時間かもしれない。


 堅石さんは上体を起こし、軽く目を擦ってから薄目で僕と視線が合う。


 うっ、なんて可愛いんだ……!


 いつもは綺麗で美しいって感じなのに、寝起きは本当に子供っぽくて可愛らしい。


「そらの、しゃん……おはよう、ございましゅ……」

「うっ……うん、おはよう」


 可愛すぎる……!

 ダメだ、これ以上こんな可愛い堅石さんを摂取していたら、どうにかなりそうだ。


「堅石さん、起き上がって。まずは洗面所で顔洗ってね。その後は自分の部屋に戻って着替えてね、わかった?」

「ふぁい……」


 可愛いな!

 心の中でそう叫びながら、僕は堅石さんの部屋を出てリビングで朝食の準備を始める。


 はぁ、やっぱり朝の堅石さんは心臓に悪い……。



 その後、朝食を作り終えると同時くらいに、制服に着替え終わった堅石さんがリビングに来た。


「おはようございます、空野さん」

「おはよう、堅石さん。ご飯出来てるから」

「ありがとうございます」


 一緒に食卓を囲み、食べ始める。


「今日も起床を手伝っていただきありがとうございます」

「う、うん」

「寝起きはまだ意識が完璧に覚醒しておらず、何か粗相はしてなかったでしょうか?」

「いや、かわい……してなかったよ」

「かわい? かわい、とはなんでしょう?」

「き、聞き流していいから」


 危うく普通に「可愛かった」と言うところだった。

 僕もまだ朝だから少しぼーっとしているかもしれない。


「今日もご飯はとても美味しいです、ありがとうございます」

「よかった。お昼のお弁当も用意してるから、持っていってね」

「本当にありがとうございます。いつもお昼ご飯がとても楽しみです」


 堅石さんは無表情でそう言うので少し本心じゃないかと疑った時があったけど、一回も残さずに食べてくれてるし、毎日お昼のお弁当の感想を言ってくれるので、作っている僕もとても嬉しい。


 朝ご飯を食べ終わり、食器を適当に洗う。

 その間に堅石さんは今日の学校の準備を終えている。


「空野さん、今日も先に行っていいのですか?」

「うん、僕はもうちょっと準備に時間かかるから」

「……かしこまりました」


 本当は僕もすでに準備は終えて、自分の部屋にある荷物を手に取って行くだけなんだけど……さすがに一緒に登校したらマズい。


 堅石さんは学校一の美女で人気者だし、そんな彼女とほぼ同棲しているとバレたら、どんな目で見られるかわからない。


「では……いってきます、空野さん」

「う、うん、いってらっしゃい」


 そして堅石さんは部屋から出て行き、学校へと向かった。

 毎朝このやりとりをしてるけど、まだ慣れない……。


 家を出掛ける時の「いってらっしゃい、いってきます」とか、帰ってきた時の「おかえり、ただいま」は……なんだか個人的に、家族とか身内みたいな感じがすごい。


 それをあの堅石さんとしていると思うと、まだ不思議で全然慣れないのだ。


「堅石さんは特に気にした様子もなさそうだけど……」


 そんな独り言を呟きながら、僕は堅石さんの部屋を出て、隣の自分の部屋に行って荷物を持って学校へと向かった。


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