スライムにちかん?
翌朝、目を覚ますと頭の下にはジャスミンさんのゴツい腕があった。
とっさに腕枕から逃げるように身を起こし、自分の尻を確認するが、特に問題なかった。
「あら、ミクモちゃんおはよう」
「おはようございます。ちょっと近くを散策してきてもいいですか?」
「いいけど、危ないからあまり遠くに行っちゃダメよ」
(あんたの方が危ないよ)
俺は休日になるとカメラを片手に、知らない町を歩くのが趣味だった。
初めて見る町の狭い裏路地、この先に何があるのだろうと、自ら袋小路に迷い混む。
気の向くまま、好奇心に従って足を出す。
そんなワクワクする感じが好きだったのだ。
そしていま、ここは異世界。
カメラを持ってフラフラしていた時と違い、職質をされる心配もない。
(俺は自由だ!誰も俺を邪魔する奴はいない!)
つい数分前、朝の気持ちの良い目覚めを邪魔された俺は、落ちていた木の枝を振り回しながら川沿いを歩いていると、昨日石打漁をした場所に着いた。
川に小石でも投げて遊ぼうと、小石を探していると、昨日ジャスミンさんが持ち上げた巨大な石があった窪みで、何が動く気配がした。
とっさに手に持った木の枝を体の前に置き身構える。
気配のした場所を見ると、金色のプヨプヨした生物がいた。
まだ謎の生物との距離は空いているので、いつでも逃げれる用意をしながら観察してみる。
(スライムかな?)
鑑定を使ってみた。
□鑑定結果□
《ゴールドスライム》
スキル[速度上昇・特大]
・移動速度が著しく上昇
スキル[被ダメージ減少・特大]
・被ダメージが著しく減少
固有スキル[逃走]
・一定距離まで近付くと逃げる
ちかんしますか?はい/いいえ
□□□□
(粘体生物にどうやってチカンするんだよ!)
もちろん《いいえ》を選択しようとした時、間違えて《はい》を押してしまった。
(あっ!ヤバい!スライム相手に性癖が目覚めてしまう!)
焦っていると鑑定画面が裏返り、表示が切り替わった。
□ちかん項目□
スキル[速度上昇]
スキル[被ダメージ減少]
固有スキル[逃走]
ちかんする文字を選択
□□□□
「え?なにこれ?なんか変なのでた!」