オネエ様と野宿の準備
その後も、ゴブリンや大きい猪のような生き物などが襲ってきたが、ジャスミンさんのおかげで危なげなく旅路を進む事が出来た。
「さっきの猪って食べるんですか?」
「イノシシ?なにそれ?」
「四つ足でフゴフゴって突っ込んできたやつです」
「あぁ、メドウボアのことね。食べれるわよ」
そのメドウボアとやらは俺が鑑定するより前に、ジャスミンさんのラリアットを正面から喰らい瞬殺された。
先ほどジャスミンさんが解体して俺の収納に入っている。
収納は生きている物を入れることは出来なかった。
解体をするときのジャスミンさんは、ワンピースが汚れるからと、真っ赤な生地に黒いレースが施されたエプロンに着替えて、こちらをチラチラと見てくるので、洋服を誉めておいた。
そのおかげか、上機嫌のジャスミンさん。
「今夜食べさせてげるわよ」
カナン村はまだ丸一日ほど掛かるため、今夜は野宿になってしまうそうだ。
「この先の川を上流に向けてしばらく歩けば拓けた場所に出るから、今夜はそこで休みましょう」
しばらくして目的地に着く頃には、日が傾いてきていた。
ジャスミンさんが慣れた手つきで夜営の準備をしている中、暇なので手伝えることはないかと訊ねる。
「何か手伝えることありますか?」
「そうね、ミクモちゃんは魚は捌ける?」
「少しなら出来ますよ」
某動画投稿サイトで、投稿者が色々な魚を捌いて食べる動画に一時ハマって、真似をして近所の魚屋にいっては魚を買って捌いてた為、魚は捌ける。
「じゃあ魚を採るからついてきて?」
歩いてすぐにバス一台分ほどの川端で流れの緩やかな綺麗な川に着いた。
「じゃあ魚を採るから少し離れてね」
「え?あ、はい」
ジャスミンさんは川縁に転がっている巨体な石を軽々と持ち上げ、川中にある大きな岩に向かって投げ飛ばした。
ゴンッ!と大きな音がすると数匹の魚が浮かび上がってきた。
「おお!これが石打漁ってやつか」
石打漁とは、水中の大石に別の石を強くぶつけることで発生する音響、震動によって水中の魚を麻痺、気絶、あるいは仮死状態にさせたり死亡させることで浮いてくる魚を拾い集める漁法である。
「さぁどんどん採るわよ」
その後同じ作業を繰り返し、採った魚を捌いた俺の収納の中は魚だらけになることになった。