カナン村へ出発
「あんた家はどこ?」
ジャスミンさんは心配そうに声を掛けてくれた。
「家は凄く遠くて、近くに街はありますか?」
本当の事を言っても、信じて貰えないと思いジャスミンさんには悪いが、誤魔化すことにした。
「東に2日ほど行った所にカナンって村があるわよ」
ジャスミンさんは、カナン村に用事があってナディニア公国の公都ナディアから向かっている途中だったそうだ。
「すいません、カナン村という場所まで同行してもいいですか?」
装備も何もない中で、盗賊にでも襲われたら大変なので、ジャスミンさんに同行させて貰えないか頼んでみた。
「別についでだし、構わないわよ、一応ステータスカードは確認させてね」
「ステータスカード?」
ジャスミンさんは自分の左手を胸の前に出してステータスカードと唱えると、左手の甲からクレジットカード位の大きさのカードが出てきた。
「おぉっ!凄い!」
「カード出しただけで、なに感心してんのよ」
《ジャスティン・バルゴス》
《人属・称号[ダンジョン踏破者]》
スキル[棒術]
スキル[腕力増加]
スキル[裁縫]
スキル[料理]
固有スキル[豪腕]
《犯罪歴なし》
「あれ、ジャスティン?」
「色々あってね。今はジャスミンって名乗ってんのよ、それよりあんたも出して」
ジャスミンさんの真似をして、左手を胸の前に出してステータスカードと言ってみる。
(おお!出た出た!)
《ミクモ・ニイヤマ》
《人属・称号[渡り人]》
イリーガルスキル[ちかん]
ユニークスキル[収納]
スキル[鑑定]
固有スキル[なし]
《犯罪歴なし》
「え?ちかんってなに?凄い嫌なんだけど」
犯罪歴はないらしいが、こんなスキルがあるとまるで犯罪者予備軍みたいじゃないか。
「カード出しただけで騒ぐなんて変な子ね。うん…犯罪歴もないし問題なし。
ってあんた[収納]持ちなのね、一生安泰ね。」
「え?何かすいません」
「何謝ってんのよ、それに鑑定があるならカード出さなくても、良かったわね」
それよりもイリーガルスキルとか言うやつの方が気になるのだが…。
「この、ちかんってなんですかね?」
「ん?なんのこと?」
ジャスミンさんは俺のステータスカードを間近に見ているが、見えないらしい。
「鑑定って何に使うんですか?」
「そんなの鑑定は鑑定に決まってるでしょ」
(大体予想は付くが、試しに使ってみるか)
とりあえず鑑定対象はジャスミンさんで実行してみた。
□鑑定結果□
《ジャスティン・バルゴス》
《人属・称号[ダンジョン踏破者]》
スキル[棒術]
・こん棒などの扱いが上手くなる
スキル[腕力増加・大]
・攻撃力が大きく増加
スキル[裁縫]
・裁縫が上手くなる
スキル[料理]
・料理が上手くなる
固有スキル[豪腕]
・腕力が著しく増加
《犯罪歴なし》
ちかんしますか?はい/いいえ
□□□□
(うわ…なんか変な選択がある…)
秒でいいえを選択する。
一瞬とはいえ、ゴブリンと間違えた乙女にチカンなどする勇気も性癖もない。
「じゃあ、そろそろ出発するけどいい?」
「あ、はい!宜しくお願いします」
俺はジャスミンさんに同行してカナン村へと歩き出した。