ゴブリン増殖
ジャスミンさんが背嚢から棒を取り出し、落ち着き払った声色で言った。
それを聞いた男たちは下卑た笑いを浮かべ、猫背の男が告げる。
「気色の悪い釜やろうと砂漠の民のガキに何が出来るってんだ」
俺は旅の途中、ジャスミンさんの化物じみた戦いぶりを散々見てきたから知っている。
ジャスミンさんは相当強い。この男二人は相手にもならないだろう。
(あ、今のうちに)
俺はもう一度、ゴツい男に鑑定を使い、ゴールドスライムの時と同じく置換する文字の選択画面を表示させた。
置換対象は
固有スキル[色男]・女性に魅了効果
(さて試してみるか)
置換スキルについて思い付いたことを試してみる事にした。
選択画面を表示させたままゴツい男の鑑定画面から文字を選択する。
《選択》色男
《置換》男色
(あ、出来た)
ゴツい男のスキルを一文を置換し、スキルの言葉を入れ換えた
固有スキル[男色]・男性同士の性愛に目覚める
「ウホっ!いい男!」
ゴツい男が急に変な声を出し、剣を放り投げて凄い勢いで俺に向かって突っ込んできた。
「ヒィイイ!BL怖い!」
俺とゴツい男の間に割って入るジャスミンさん。
「ミクモちゃんは私のモノよ!」
「いや!違うから!」
「じゃまするな!釜野郎!」
「お前もだろ!」
ゴツい男がジャスミンさんに襲い掛かる。
ジャスミンさんが飛び掛る男の足を棒の先で払いながら、その身を脇へと転がすと同時に、背中を向けるゴツい男の下半身の一部分、要するにケツへ木の棒を鋭く突き出した。
「あっぱぁー!!」
ゴツい男は変な悲鳴を出し、お尻に棒が刺さったまま白目を剥いて、四つん這いに倒れ動かなくなった。
仲間があっという間に倒され、驚きのあまり呆然と立ち尽くしている猫背の男にジャスミンさんが向き直る。
「次はあなたよ」
「っ!ってめぇ!ぶっ殺してやる!」
猫背の男は半身の構えから、素早いステップで距離を詰めると喉を狙って細剣を突き出すが、ジャスミンさんはゴツい男のお尻に刺さった木の棒を引っこ抜き、左に受け流すと同時に、左手で男の髪の毛を鷲掴みした。
「そりゃっ!」
ジャスミンさんは猫背の男を投げる。
ブチブチ、ゴッ!
地面に叩きつけられた猫背の男は、鷲掴みされた部分の髪の毛がむしられてザビエル状態のまま失神した。
(うわ、痛そう…)
「さて、とりあえずこいつらをカナン村に連行しましょう」