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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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無機質な白が世界を覆う


 足音と気配、その両方を完全に遮断しながら教会の廊下を進んでいく。事前に頭に入れておいた警備配置図を思い起こし、誰とも鉢合わせることがないように最新の注意を払いながら。

 ずっと頭の後ろの方で幻影の自分を動かしている、というダブルタスクが地味に手強いが、しかしこれも後数分で終わるために問題はない。すぐに肝試しが始まり、孤立した幻影の操作を終了するからだ。


 時は夕刻、窓から差し込む赤光は白に統一された壁に薄く色づけている。その色はこの秋の時期に相応しい哀愁を匂わせ、独り気付かれることなく進む俺を照らす。

 だが、それも次第に黒く暗く、迫る夜に塗りつぶされていくのだ。哀も愛もわからない、憎悪の精霊と共に。


 日の入りまではあと数十分ほど、恐らく俺がアンリヨールを解放する頃が丁度だろう。


 俺は偶然ながらも絶妙なシチュエーションが用意されているのに少し笑う。

 案外、アンリヨール本人も喜ぶかもしれない。アレは結構ゲームでもはっちゃけたやつだったから。


 きたる邂逅への恐れか、あるいは期待か。俺の体は微かに震えている。


 さあ、封印の塔まではもう少し。

 この世に大悪魔が顕現するのは間も無くだ。果たして何が起こるやらわからないが、精々楽しませてもらおうじゃないか。


 上がる口角を押さえつけながら、俺はゆっくりと歩を進めていった。



 長く、慎重に歩み続け、遂に俺は封印の塔の入り口にたどり着く。

 もうその日はすっかり弱々しくなり、ただでさえ日の当たりにくいこの場所はすっかり夜のようになっていた。


 そこには、教会の白い内装とは完全に異なる、黒く重々しい扉が俺を待ち構えていたかのように聳り立っている。

 辺りも暗くなってきたことも相まってその雰囲気はおどろおどろしく、ついこちらも息を呑んでしまった。


「……趣味の悪い扉だな。危険だってことをアピールするためにこうしてんのか? それともこれが洒落てるとでも思ってんのかね」


 飾りっ気ひとつない扉を見ながら、俺はそうため息をつく。


 しかし、そのデザインは正直どうでもいい。こんなものはどうせ後から人がくっつけたものだ、かの聖女様が拵えなさったものではない。

 大切なのは、やはりその中身。凡人では一生涯お目にかかれないその尖塔に、今から侵入しようと言うのだ。まさに「悪役」らしいではないか。


「それじゃ、開け胡麻〜ってな」


 これから起こることを思考することで速る心を抑えるように、いつもの調子の軽口を叩きながら、俺はその扉へと手をかけた──────



 ◇◇◇



「………なっ!?」


 気づけば俺は、見たこともない空間に放り出されていた。


 辺り一面は完全に白一色、いや、ソレでは教会と同じと思うかもしれないが、ここの白はそんなものじゃあない。

 その色は、一目見れば自然の色ではないとわかるほどの強い白。まるで『白』という概念をそのまま現実世界に落とし込んだかのような、全てを超越した色だ。


 教会の白は所詮、漆喰かセメントか知らないが、その手のもので着色されたものにすぎない。故に、その白はいくら神々しさを演出しても温かみや安心感があった。それこそ、守護者の象徴として観られるのに納得のいくほどに。


 だが、こっちは違う。

 ここは─────明らかに異質だ。人ならざるものの領域にある。

 ここの白は、元からその色をしているかのように、それこそ、全ての色を寄せ付けぬ孤高の色としてふさわしいほどの神聖さ、畏敬の念を感じさせる。そこに、温かみなどという人間に寄り添ったものはない。あるのは、単なる事実、冷徹なほどの『白』である。


「………なるほど、これが神の力ってやつかよ」


 そう、直感する。こんなもの、神以外に作り出せる奴がいてはたまらない。

 こりゃ悪魔たちも負けますわー……


 その不気味な空間に僅かに息を呑みつつ、しかし至って冷静に俺は息を吐いた。


 まあ、ちょっと異質だが所詮はその程度。何か怖い仕掛け(ホラートラップ)があるわけでもなし、数多のゲームをクリアした俺からすればこんなの激怖演出ランキングTOP10にも入ってこない。

 ………十一位くらいかな、うん。


 さて、ビビるのはこれくらいにしよう。

 この空間がどういうものなのか知らないが、もしかすると侵入を知らせる機能とかもあるかもしれないからな。さっさと封印とやらを解いておさらばだ。


「えー、封印ってのはどれなのかな……?」


 俺は改めて辺りを観察すると、全てが真っ白故に見えずらいがそこにはいくつかの建築物があることがわかった。


 例えばそれはオリエント風の柱であったり、鉄筋コンクリートのビルのような四角い箱であったりと様々な様相を呈している。

 なんの意味があるのか、とも思ったが、しかし神のやることにいちいち文句をつける時間はないのでほっておく。


 そして、俺は先ほどから一際目立っている()()に目を向けた。


「………これ、神殿だよな? 正に封印してます、みたいな感じだけど」


 それは、小さな神殿だった。


 今俺がいる場所から少し歩いた位置から伸びる階段があって、そこを数段登るとたどり着けるらしい円形の儀式場的神殿。

 建物の中、その中心にはどことなく緑の勇者が剣を引き抜きそうな感じの台座があり、それを取り囲むようにして立方体の箱が無数に、かつ不規則に浮いている。


 そしてなによりもわかりやすいのが、中心の台座には、これまたあからさまに黒い歪みができているのだ。


 これはもう、アンリヨールの封印場所がここだと言っているようなものだろう。むしろ違ったらビビる。


「さて、それじゃあ行きますかね」


 俺は存分に警戒を維持しながら、先ほどのように慎重にその神殿に続く階段を踏み締めた。

神殿イメージは「パンテオン神殿」で検索してください、あとはそれの出てきた円形の部屋が独立していると思えばおけです。あとは中心部にマスソの台座を置いて周りに立方体浮かべたら完成!


白……いいよね白、あんなに温かさと冷たさを両立した色ないよね

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