No fun, No life!
……っは! なんか気を失っていたような気がする。いや、というよりこれは、俺が俺でなくなっていた感覚なような……
なんか、数年前からこういうこと増えてる気がする。いったい俺に何が起こっているのか……?
まあ、今はそんなことはどうでもいいや。影響が出てるわけでも死ぬわけでもあるまいし、ここは保留ってことで。今はそれよりも、今回の対処への対策を始めた方がいいだろうし。
そんなわけで、俺はさぞなんでもない風を装いながら号外新聞を机に置き、そのまま自分の部屋へと戻ることにした。
当然、深夜の活動を始めるためである。
今、街は既に夜の帳が下りきって、魔法の火が灯る街灯だけが人々の頼りとなっている。新聞はちょうど俺が眠ろうとしたその時に発見したものなのだ。
つまり、いつまでもこんなところでじっとしていると、両親が心配してしまう。そうなっては面倒臭いので、俺は急いで寝室へ向かわねばならないのだ。
俺は未だダイニングのテーブルで何か記帳をしているセラリアにおやすみと告げて、自分の部屋へと向かう。
後ろからは、彼女のおやすみという返事がかえってきていた。
◇◇◇
人々が皆寝静まった深夜、今にも日付が変わろうかという時間。俺はいつもの魔法を身に纏いながら、王都の上空を駆けていた。
その高度は遥か高く、地上からでは俺の姿を視認することなど、闇に紛れて不可能だろう。
ああそういえば、最近になって俺は漸く空が飛べるようになった。
勿論今までも『跳躍』によるゴリ押しでなんとか空を跳んではいたが、今使っている魔法はそれではなく、ちゃんとした方のやつである。
その名を『浮遊』と言い、縦横無尽に空中を動き回れるという素晴らしい魔法だ。(因みに、聞いた話だと『跳躍』と同じ人が詠唱を発見したらしい。なんか発想が似てると思っていたので納得した)
『浮遊』は『跳躍』のような瞬発力やスピードはない代わりに、小走り程度のスピードを維持し続けられるので日常ではこっちの方がよく使う。
あと地味に屋根を跳び回るという物音の立つ行動をしなくて良くなったので、結構便利だ。
では逆に何故今まで使えなかったのかというと、それは単純に覚えることができなかったからである。
俺の師匠である父親は基本的にどんな魔法もするっと教えてくれて、しかも時にはいろんな魔法を神術式の詠唱込みで教えてくれる、まあ、弟子にとって非常に有難い方針をお持ちでいらっしゃる先生だ。
だがこれにはいくつか例外があって、その一つが、この魔法なのである。
曰くこの魔法は、空を飛んでいたら魔物とされて撃ち落とされただの、魔力制御をミスって頭から墜落しただの、ひどい逸話の絶えない難度の高い魔法なんだそうだ。
だから、俺がある程度の年齢になって、きちんと自制ができる年齢まで教えてくれなかったのだ。
子供想いの実にいい父親である。その判断は別に間違っていない。
まあ、だから息子は代替案でもっと危険な飛行してましたとか知ったらめっちゃ怒りそうだけど。なんなら自制全くしないで夜空飛びまくってますけど。
ははは〜、許せよライアーン。
などとふざけて飛んでいると、次第に目的の場所が見えてきた。
「お、もうか、結構早いな。思ったよりあそこにいくのは楽そうだ」
俺はそう独りごちながら、正面の高く聳える尖塔を見つめていた。
◇◇◇
いつか病院で見たようなキラキラマークを斜めにしたような紋章に、真白な壁、そして何十にも張り巡らされた警備網。その中心にあるのは、数十メートルもあろうかという巨大な塔を中心に大理石で作られた荘厳な建物だ。
まあつまり、教会である。しかも、今日の号外に乗った件の、だ。
今日は、事件現場の下見に来たのである。
「ふー、相変わらずここはでかいな………前来たのは数日前だから当たり前か」
あの日のように、つい言葉が漏れる。
やはり、何度見てもこの金かかってます感を前には庶民的になってしまうな。
そんなくだらないことを考えて空をふよふよと漂いながら、俺はその建物を観察しはじめた。その作りや間取り、建築様式など、大して詳しくもない知識を使って、なんとか建物の分析をするのだ。
一応おれとて大学生だったんだから、そこらの人間よりは歴史に造詣が深い……はず。
すると、こっちの世界で通用するとも限らない知識、という無用のプライドで以って俺が十数分ほど食い入るようにみている内にごく僅かだがわかることがあった。
「おお、やっぱりこの尖塔が封印地点ってことでいいっぽいな。ここが神護会の本拠地なのもあるけど……それにしたって見回りの数が多すぎる」
そう、中心部には明らかに人数が偏って配置されている。
さらに、建物の造り的にも非常時にまずそこへ向かえるようにさまざまな箇所から直通通路ができているし、あそこが間違いなく重要施設であるのは確定だ。
そして、この国の教会の目的から考えて、最重要施設というと……それは間違いなく、かの大悪魔「アンリヨール」の封印地で間違い無いだろう。
因みに、司令室という可能性はない。あの日の見学でもらった地図によれば、司令室はここの地下にあるらしいからだ。なんでも、外からの攻撃に耐えるためらしい。
まあそんなわけで、あそこが封印地で決まりである。
俺は(何となーくそうだろうなとは思っていたが)すぐに目的地が確かめられたことを嬉しく思った。
「ふむ、とすると、この高い尖塔は伝説に出てくる『杭』ってやつかね、アンリヨールを繋ぎ止めてるっていう。うまく建築物としてカモフラージュしてるわけだ」
よくできたなー、と俺は少し感心する。
普通、そんな聖遺物はありのままで残しておきたいと思うのが聖職者の性だろうに。そんなことよりも使命を優先した先人たちには敬意を表したい。
ま、俺が無駄にしちゃうんですけどね!!!
ご、ごめんなさい……後でレインがあいつを消滅させるので堪忍な!
俺は、今までにも何度かやってきた開き直りを見事に披露する。
正直、罪悪感とか躊躇する心はないと言えば嘘にはなる。だって、奴が出てこなければ学園で多少のイザコザはあれ、ストーリーほどには悪化することはない。というか、多分ある程度の問題を抱えながらにはなるだろうが、ごく普通の治世が行われて、バル王の時代は終わるだろう。
俺がここで何もしなければ、歴史書に乗ることもない、ごく普通の時代が過ぎるだけ。
レインもグリムも、普通の人生を送れるかもしれない。あっちでは俺なんか大学の退学が確定して、大分ヤバい人生だったけど、こっちでなら………
なんて、俺はそんなふうには思えない。
俺は、自分の人生をもっと波瀾万丈にしたいんだ。こっちでは平凡を、なんて、馬鹿みたいなことをする意味がわからない。
大学の件だって、俺が面白くなるように振る舞った結果に過ぎないんだ。
──────つまらない人生は嫌いだ。
退屈な人生に生きる価値はない。
冗長な人生で満足などできはしない。
普通の人生だなんて、俺自身が面白くない。
人生には花を添えろ!
俺自身がやりたいと思った方に進め!
これが、俺の生きるモットーである。
そのために多少他人の人生を踏み躙ることになろうと、そこに問題などありはしない。
究極、それは誰しも行っていることなのだから。
ああ、誤解を与えないように言っておくと、俺は平凡な人生を送ることが嫌いなわけじゃない。
俺はハッピーエンド原理主義者だし、あらゆるバッドエンドは、いつか誰かのハッピーエンドにつながると信じている。
だから、物語を終えた後なら平凡な生活もいいかもしれない。
だけど、俺の人生「そのもの」が平凡なのは────つまらない!
人生に彩りを加えなくてはいけない。俺好みの、俺だけの世界を作ろう!
全てが終わった後ならば、死刑でも何でも処罰はいくらでも。
或いは、退屈の刑に処すのだって甘んじて受け入れよう。
きっと、その役割はレインあたりが──────
でも、今はまだその時じゃない。
ああいや、勿論今バレて物語が強制終了を喰らったら、それはそれで面白いからいいんだけども。
とにかく、俺はやれるとこまで突き詰める。少なくとも、俺がやりたいと言ったんだからやり込むのだ。
最終的には国が豊かになるんだ、過程には目を瞑ってくれよ………まあ、それで迷惑を被る皆様は───ごめんね! 許せ! 文句があるなら止めてみな!!
以上、俺の行動理念についてでした。
俺は無駄な一人芝居から帰ってくると、そのままひとつため息を吐いた。
その息はしかし、高い上空の空気に紛れて、すぐにどこかへ消えてしまう。
俺はそのままゆっくりと下を向き、その目に教会を移した。
「……ま、中の確認もしていきますか」
俺はより一層纏う靄の闇を黒くして、そのまま教会へと下降していった。
まさかのグリム性癖暴露。……だが、ここではあえて触れねぇぜ! だって、今までも端々から滲み出てたからな!
だけど、やっぱりお前グリムが適任だよ!!
実は、魔法の名前はそれぞれ名付け親がいます。(これはゲームのクリエイターたちのこと)
例えば『跳躍』『浮遊』『再使用』は同じデザイナーによるもの。作者も何となーくで決めてますが、同じ命名者の場合、大体統一性があるようにしています。
例えば、あの三つはガッツリ英語ですね!
じゃあほかは? ……シラネ。




