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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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大逆の悪魔 アンリヨール


 昔々、数万年も前、未だこの世に神と獣と精霊とが共に生きていた時代。

 そこでは精霊が最も力を持っていました。


 彼らはその力を傘に、全ての生命を我が物顔で従えだしました。各々が、自分の得意な領域を自分のものだと主張していったのです。

 それに逆らうものは、当然誰一人いませんでした。


 そして、彼らは地上を、天空を、大海を統べて、この世の覇者となりました。


 この時から、神と、それに追随する精霊である天使たちは、もう彼らの前に姿を現さなくなりました。

 その存在は、時々出されるお告げや奇跡、あるいは神術を用いることでしか感じなくなってしまったのです。



 その頃の人間は、獣の中でも特に無知で脆弱な存在でした。

 唯一魔法を使えるという特徴こそありましたが、体内に魔素を溜めて置けないために力が弱く、そんな物では他の獣の力には遠く及びませんでした。


 人は最弱の種族として、細々と生きていくことを強いられていました。


 しかし、実は人間は精霊に気に入られていました。

 最弱の、最も目立たぬ矮小な存在が、何故────その理由は、彼らの多様性にありました。


 人は、己を省み、改善し、次へと繋げていくことができる。「進化」によってしか変われない他の獣と違い、「学習」によって、その本質すら変化しうる。

 それは、単なる魔素の塊──────即ち、()()()()()()成長(・・)()()()精霊たちにとって、とても魅力的なものに移りました。

 そして、こう考えるようになったのです。


 自分はこれ以上の存在には成れないけれど、彼らなら──────


 そうして、多くの精霊は人を見守るようになっていきました。

 それは基本的には彼らに期待する程度のことでしたが、しかし中には人の願いを叶える、神まがいのことをするものもいました。

 それほどに、人と精霊は密接に関わっていました。


 しかし、中にはこれをよく思わない者もいました。

 人などに、親切にしてはいけないと。


 彼らは、人を恐れていました。正しく言えば、「人の可能性」を恐れていました。


 自分にはない力。自分には理解できない力。

 「成長」という能力は、精霊たちにとってそう捉えられる力でした。


 そして、理解できないものを過度に恐れるのは人も精霊も────知性あるもの全てに共通するように────変わりませんでした。

 つまり、人が精霊を脅かすのではないか、と思い始めたのです。


 そう考えた一部の精霊は、一般の精霊とは逆に、人間を迫害し始めました。

 例えば成長を阻害しようと徹底的に災害を振り撒いたり、信仰を強制し文明を固定したり、徹底的な管理社会を敷いたりと、懸命に人を邪魔しました。


 のちに、そのような立場に立った精霊を、人は悪魔と呼ぶようになります。人にあだなす悪にして、最高の魔力を持つ化け物として。


 そして、その中で最大級の力を持った悪魔こそが──────アンリヨールなのでした。


 ◇◇◇


 アンリヨールの力は絶大で、原初に世界に降り立った精霊の一人と言われています。

 その魔力は他全ての生物を圧倒し、精霊ですら、容易に手を出せないほどの存在でした。


 そして悪いことに、彼はとにかく人間のことが嫌いでした。

 故に、人に対して悪逆非道のかぎりを尽くすようになりました。


 人のことをこの世に巣食う害虫だと罵り、平気な顔で人の虐殺を行いました。


 人の住む森中に呪いをばら撒き、人が住めない環境に変えてやりました。


 魔法で災害を起こし続け、死んでいく人を見て笑っていました。


 とにかく、自分の領域に人間を入れないことに躍起になっていました。


 そうして、人を弄び続けた彼は、ある日とある妙案を思いつきました。


 ──────この世界から、人を絶滅させてしまおう!


 その閃きは、アンリヨールを非常に興奮させました。

 今までどうにかして人に嫌がらせをしたい、と思っていた彼ですが、そもそも人がいなければ、この煩わしさはないのだと気づいたのです。


 それから、アンリヨールはすぐに行動を行いました。


 まずは世界中に存在するアンチ人類派の精霊を集め、人類を死滅させるための組織を作りました。

 精霊は基本的に群れませんが、一つの目的のために、一時的に手を結ぶことにしたのです。単独でいる強い精霊の打倒を目指して。


 実は、この動きを大精霊と言われるほどの強大な精霊は気がついていました。

 しかし、悪魔とは所詮少数の派閥に過ぎず、大した大きさにはならないだろう。とされていたのです。


 ところが、彼らの予想に反して、その時に集まった精霊たちは、なぜか悪魔だけでなく一般の精霊も存在していました。

 世界を壊すことそのものに魅力を感じた者、人に試練を与えたかった者など理由は様々ですが、いずれにせよ、彼らの組織は予想以上に大きくなっていきました。


 そして、十分の精霊が集まり、彼らが力を得た頃に、ついにアンリヨールは人類殲滅を決意しました。

 

 それこそが、伝承に残る最後の神話、悠久の大戦の始まりなのです。


 ◇◇◇


 大戦は苛烈を極めました。


 精霊たち、そして人類は悪魔に必死に対抗し、悪魔たちもまた、知略と暴虐のかぎりを持って、人類を圧倒し続けました。

 そして、その戦いは長い間決着を待ち続けることとなります。

 人類は増えるために数が多く、なれど精霊数人で人類など容易く滅ぼせる。故に、人類陣営は戦いに慎重にならざるを得なかったのです。


 結局その戦いは数百年と続き、膠着がもはや平時となり始めました。


 結局、人類は少しでも時間を開ければ一瞬で数を増やし、しかも精霊の多大な補助があるからいつまでたっても消耗しない。

 そして悪魔たちも精霊であるから人間如きには殺されず、群れているから精霊でも手を出せない。

 さらにさらに、この状況が続けば流石の精霊たちも手を組み始め、もはや多数のアドバンテージは悪魔にはない。


 つまり、人類も悪魔も、互いに相手を殺せなくなり始めていました。


 どれだけ苛烈に戦っても、どちらも消耗することすらない。

 このままでは、永遠に戦いが終わらない──────


 アンリヨールは悩みました。


 自分は人類を消し去りたかっただけなのに、どうしてここまで戦争に手を煩わされているのか。

 最も嫌いな存在、人類。その存在にどうしてここまでして関わらなければならないのか。

 そもそも、何故ここまで人類はしぶといのか。


 彼はずっとずっと考え続けました。

 とにかく、この戦争を終わらせる方法を考えました。


 人類を消す。

 その考えを達成する、最も効率的な作戦を──────



 そして、アンリヨールは閃きました。


 先程の自分の疑問。

 「何故人類はここまでしぶといのか」


 人類など、弱小種族。成長するとはいえ、今はまだ獣以下の出来損ない。

 そんな彼らが、この天地開闢に等しい大戦を生き続ける理由。


 それは、他でもない、精霊のせいです。


 彼らがいつまでも力を貸し続けるから、人類が滅びない。

 どれだけ殺しても、男女が一対残るだけで数十年後には集落が作れてしまう。

 だから、その思索の結論がこうなるのも、当然の帰結なのです。


 ───ああそうだ、人より先に、精霊を滅ぼそう


 これこそが、アンリヨールの出した、『戦争を終わらせる答え』でした。


 ◇◇◇


 星を牛耳り、自然を司る存在、精霊。

 魔素を糧とし、絶大な力を行使するのが彼らの特徴です。


 現象の具現化にして、命なき者。故にその生は生ではなく、故に死すらもない。あるのは単なる消滅のみ。この世を構成する物質、魔素から生み出された、最強の災害。

 彼らを滅ぼすなど、到底不可能──────誰もがそう考えました。


 しかしここで、アンリヨールは精霊にあるまじき逆転の発想を思いついたのです。


 そう、「世界が魔素切れになったら」彼らはどうなるのだろう、と。


 魔素は、世界を構成する要素ですが、しかし実際にはこの世に必要な力ではありません。それを欲するのは、実は精霊、あるいは食魔動物、つまり魔物だけ。

 あれは、ただの巨大なエネルギーの塊なのです。


 しかし、それでも精霊にとっては大事な生命線。

 それがなくなれば、消えることはないが、精霊はもはや力を使えない。


 つまり、敵から魔素を奪えば自分達は勝てる!


 これが、アンリヨールの出した結論でした。


 しかし、一見そんなことは不可能に思えます。

 魔素は世界に遍在し、それを消すことは現在不可能。どんな力を使っても、魔素は作ることも消すことも、今までの全生命ができませんでした。


 しかし、アンリヨールはそのことについてもしっかり策を用意していました。


 そも、魔素が作れず消せぬなら、では一体どこからそれが湧いたのか?

 始まりは必ずどこかにある。それをアンリヨールは探しました。


 そして、その始まりを、やっと見つけたのです。


 即ち、この世を創りし者、「神」です。

 神がこの世の魔素を創り、司る者だったのです。


 そして、アンリヨールはついにこの大戦を終わらせる、最後の作戦に打って出ます。

 狙ったのは、己の『神成り』、つまり魔素操作の力の奪取です。


 悪魔陣営は一旦全ての人類への攻撃をやめ、標的を神へと定めました。

 この世の王の座を、奪うために。


 ◇◇◇


 神は、実を言うと弱い。

 そのことをアンリヨールは知っていました。


 アレは精霊たる天使こそいるが、本体はそこまで強くない。

 原初の精霊である彼は、彼の戦闘を何度か目にしたことがありますが、その姿はひどく弱々しく、惨めなものでした。


 アレは、誰かに力を分け与えることでしかその最高の力を行使できない、欠陥品なのだと、彼は気づいていました。


 だからこそ、アンリヨールは確信していました。

 皆の力を合わせれば、ごく少数な天使たちなどすぐに倒せる。だから、神殺しなど容易なのだと。


 そして、大戦の最終章を彩る伝説の戦い『アポカリプス』が始まったのです。


 ◇◇◇


 その後のことは、特に語る必要もないでしょう。

 聖書に記されたこの伝説は、それをリメイクした『聖女様と天使の弓』などに代表され、その一連の流れはもはや全人類が知っていると言っても過言ではありません。


 そう、神と精霊の戦いは結局、神の力を授かった人間である聖女の、たった一矢によって幕を下ろし、大逆の悪魔アンリヨールは力を奪われ、この大地に封印されたのです。

 そして現在も、とある国家がその封印を保つためにアンリヨールのいる土地の上を陣取っています。


 そういえば、封印の後に、神が今後このようなことが起こらないように世界から魔素を大きく奪われた、と伝えられており、この時にも精霊たちから神に反抗したものが現れましたが、もはやその力は天使たちに遠く及ばず、全て返り討ちにあったそうです。


 つまり、現在の精霊たちはその時反抗しなかった温厚なものか、牙を折られた暴力者かの二択、と言うことです。

 もちろんその中には過去悪魔と言われたもの、今も悪魔とされているものもいます。あくまで聖女に射られたのはアンリヨールだけですから。

 恐ろしいですか? しかし、事実です。精霊は、伝承のように優しいものだけではないのですよ。


 しかしここで興味深いのは、この時神が彼らを罰することなく世界から隠れたことであり、これは一説によれば当時の神はとても疲弊していたと──────



  『中学園のうちに知っておきたい知識集 神学編』より抜粋


『聖女様と天使の弓』は普通の冒険小説(尚ノンフィクション)


敢えて要約するなら、普通の村娘が聖女になって仲間集めて魔物倒して強くなって魔王軍(悪魔達)倒して、挫折と悲劇の果てに最強の力に覚醒してアンリヨールをBON!! する話。

まあ、ほぼドラ○エです。違うのはラスボスがイベントボスなこと。ダー○ゼロさん……?

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