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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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やっぱりこうなるんかーい


 巻き上がる炎が、部屋を包んでいく。その赤い色は、いつの日か、元の世界のテレビで見た溶岩の色の様で、見るだけで暑さを感じるほどだ。


 結界で隔てられているはずなのに、眼前に迫る炎に恐怖を感じずにはいられない。周りを見てみると、ほとんどの子供は先ほどよりも少し結界から離れた位置で観戦している。

 少し前までの盛り上がりも、今は鳴りを潜めてしまっていた。


 ……子供たちが引いてるのは、エレオスさん的に許容範囲なのかなぁ?


 若干この訓練(というかエレオス)がハッスルしすぎてる感を覚えつつも、そこまであの人もバトルジャンキーじゃないだろう、と、俺は自分の思考を振り払った。

 そう、そんなことよりも、俺にはもっと大切なことがあるではないか!


 炎で微妙に悪くなった訓練会場を、なんとか目を凝らしながら奥の方に目をやる。すると、先ほどの急激な攻撃で、何人かの人間がリタイアしているのがわかった。

 しかし、その人たちを見回しても、さっき俺が選んだ人は見当たらない。どうやら、アレはうまくやり過ごしたらしい。


 「あ、いた! ふぅ、良かったー」


 隣からユキの安心した様な声が聞こえてくる。

 残念だが、ユキの選んだあの男の人も、今ので脱落はしていなかった様だ。


 でも、今ので大分数が減ってきた。ここからは遮蔽も減って、かつエレオスも狙いがつけやすくなるし、さっきまでの比じゃないくらいの速さで人が脱落していくだろう。

 そうなれば、じきに決着もつくはずだ。


 『主の肉体は光の粒となり飛び散った』


 エレオスの機械の様な声が、また聞こえてくる。

 冷徹に、ただの作業かの様にその声は相手を圧倒する。

 しかし、その声とは裏腹に、攻撃は激化し、どんどんゲームはエキサイトしていく。


 四方八方へと飛び散る球が、容赦なく隊員に降り注ぎ、それを、隊員たちは必死に避ける。

 しゃがんだり、跳んだり、体をずらしたり、あらゆる場所に飛んでくる球に対応すべく、彼らもあらゆる場所へ体を動かしていた。

 ここまで残った精鋭だけあって、彼らの動きには全員無駄がなく、避け方は十人十色だが、しかしそれぞれが魅力的だ。


 それを見れば、どうしてエレオスがこの訓練を余興に選んだのかがわかる。

 これは、間違いなく彼らの実力を認識することのできるものだろう。


 そしてそのゲームは、先ほどまでおとなしくなっていた子供たちの熱を再燃させるまでに盛り上がった。


 「あっ、今の危ない!」


 「おうおう、大丈夫かぁ!?」


 「がんばれ、お兄さん!」


 子供たちの、そして俺たちの応援にも、自然と熱が入る。

 手に作られた拳にじんわりと汗が滲み、声を発する喉が潰れるようだ。


 だが、この興奮こそがゲームの醍醐味である。多少の肉体の不備も気にならなくなるくらいに、それにのめり込むのだ。

 その後に如何なる後悔が待ち受けているのかは関係ない、考えない。喉が潰れようが、息が切れようが、汗まみれになろうが、今この瞬間の快楽の引き換えにはなり得ない。


 がむしゃらに応援する。

 ただ、それだけなのだ。


 ◇◇◇


 訓練室はすでにボロボロになり、そこかしこから煙が上がっている。

 床は真っ黒に焦げているし、壁には数えきれないほどの穴が空いてしまった。


 だが、そんな大工が見たら卒倒しそうな光景の中、声援は衰えることを知らず、寧ろそれは大きくなっている。


 「うおー! がんばれー!」


 「負けるなー!」


 すでに残っているのは最後の二人。

 全ての声援が彼らへと集約され、たった一人の勝者が誰になるのか、それを皆が固唾を飲んで見守っている。


 よくよく聞き分ければ、その声援にも二種類のものがあることがわかるだろう。


 一つは、生き残りの一人である大男を応援する声。

 そしてもう一つは、これまた生き残りの一人である細身の男を応援する声。


 つまり、どちらが栄冠を得るのか、が二分されているのである。

 そして、それはもちろん、俺とユキにも当てはまる。


 「いけー! 避けろー!」


 「がんばれー、当たるなー!」


 最初にかけた二人が、互いに残っているのだ。そんなもの、盛り上がらないわけがない。

 俺は微かに残っている理性でなんとかグリムらしくない言葉を使わない様に気をつけながらも、精一杯の応援を口にしていた。

 隣のユキも、同様に喉を枯らす勢いで叫んでいる。


 どちらも、この賭けには負けたくない、という意地を張っているのだ。


 二人の表情からは、何も読み取れない。ただ苦しげな表情で、前を、後ろを見回しては、必死に攻撃を避けている。あるいは、最早、無心の領域にまで至っているのかもしれない。


 ただ、いずれにせよ、どちらも限界が近いのは明らかだった。

 ともすれば、次の一秒で決着がついてもおかしくない、そんな状況である。


「…………………?」


 その極限状態の中、ふと、エレオスがその詠唱をやめた。


 子供たちも、それに伴い応援をやめる。


 一体何が起こったのか? もしやここでゲームは終わりなのか? そんな疑問が俺たちを支配した。

 だが、その一瞬の戸惑いで俺は気づく。


 ─────違う、終わったんじゃない、始まるんだ(・・・・・)


 それに気づいたのは、選手二人が未だその面持ちを崩していないから、いや、それどころかより引き締めた様になったからである。

 そして、俺がエレオスの方を見つめた瞬間、彼は突如として詠唱を始めた。


 『主はこう申された。この世は全て二つに一つ。あるか、ないか、ただその二つに定めらるるものなり。そこに中庸はなく、全ては極点──────』


 「!!」


 その詠唱の長さに、俺はその耳を疑う。たしか神術は、その長さによって威力が決まるのではなかったか。

 だとすれば、今から放たれるそれは、今までのものと桁外れのそれということになる。


 ──────本当に大丈夫なのかよ、この結界!?


 エレオスのその圧倒的な迫力に気圧されて、俺は身震いする。

 アレは、一度命の危機を感じたことがあるものならわかる。圧倒的な『危険』の権化だ。


 隊員二人は、その顔に冷や汗を流して部屋を動いている。

 その動きは、とてつもなく速い。


 だが、それでは足りない。

 詠唱をし、ただ空を見つめている様に見えるエレオスの目は、しかしガッチリと二人を捉えて離さない。

 その手はだらりと力なく、だが確実に二人のいる向きに伸びている。


 『極点故に、間違いはありえず、全ては必然として起こる。全てはその手の中、その指の先──────』


 詠唱がクライマックスを迎える。

 二人の動きはどんどんと速くなり、そしてそれを追うエレオスの手もより速くなる。

 だが、どれだけやっても、そこからは逃れられず──────


 『故に、汝、運命を愛せ』


 その言葉が、紡がれきった。


 ◇◇◇


 「………結局、生き残りは無し、かぁ」


 俺は、その光景を見ながらため息をついた。


 「はーい、全員ざんねーん! いやー、惜しかったねぇ、もう少しで逃げきれたのにねぇー?」


 訓練場では、エレオスが一人場違いなほど陽気な声で、最後の二人に声をかけている。

 すでに結界は解除されており、その声は嫌になる程よく通っていた。

 というか、実際とても嫌味ったらしい。アイツ、多分最初からこうするつもりだったんだろう。……嫌味なやつ! なんか、訓練前までの化けの皮がぺりぺりと音を立てて剥がれていっている様な感じがするが、気のせいだろうか?


 で、肝心要の新人隊員はといえば、どちらももう立てない、と言った様なフラフラの状態で、壁に寄りかかっている。


 ……正直、あの時何が起こったのかは、俺にはわからない。

 魔法ありで見てなかったのもあるが、しかし全く何もわからなかった。


 エレオスが詠唱を唱え終わって、その瞬間、急にフラッシュが焚かれた様に眩しい、と感じて、それから………気づけばこれである。

 もう、全然わからない。何か攻撃をしたのか、相手を幻惑したのか、なーんにもわからない。


 もう、さっきからずっとわからないを連呼してしまうほどに、全く意味不明なのだ。

 ただ一つ、わかるのは──────結局、この賭けはどっちも負けになっ「あーあ、やっぱりあいつの予想通りかー」え、なんて?


 「え? いやだから、あいつの一人勝ちだったなって」


 「ひとり……え? だ、だれが……かっ……いや、まって。そもそも、参加者って二人じゃないの?」


 「あれ? 言ってなかったっけ。いや、実は俺別のやつにも聞いてたんだよ。ほら、二人だけだとすぐに終わっちゃうかもじゃん?」


 ………なんか、この先の展開が読めた気がする。

 というか、なんか一回やったことがある様な………


 「ち、因みに……誰が勝ったの?」


 「ん、そうそう! 俺、あいつが全員負ける、なんて行った時はあり得ないと思ってたけど、まさかこんなことになるなんてなー」


 「……いいから、誰が勝ったの?」


 「うわ、そんな顔すんなって……そりゃ─────」

















 「レインだけど?」




 「……………………………………………」





 (´・ω・`) なんで?



 (´・ω・`) なんで? (2回目)

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