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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
四章 聖域で嗤う(予定外)
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小学校社会科見学やりがち


 ざわざわ、と、子供達の高い声が集まって、たいへん騒がしい。彼らは、俺も含めて、皆背の順で一列に並ばせられて、先生の到着を待っている。

 本来なら静かに待っているのが模範的なのだが、先生もおらず、そして待ち時間が長いとくれば、やはり自然と会話は生まれてしまうもの。まだ列が崩れていないだけマシかもしれない。


「先生、まだ話終わらないのかな? いい加減立ってるのも疲れてきたよ」


 俺が辺りを見渡してそう呟くと、目敏くその言葉を聞きつけたユキが振り返った。


「あんまり弱音吐くなよ、多分そろそろだと思うからさ」


 そう言って笑うユキの顔は余裕げだ。

 というか、こいつ全然疲れてない。きっと待ち時間とかを苦痛に感じないタイプなのだろう。

 ユキはいっつも忙しないくせに、こう言うところはしっかり者だ。俺は時間の無駄があるだけで心が死ぬA型効率厨なので、見習った方がいいかもしれない。


「もう少しって……なんでそう思うの?」


 適当な時間つぶしに、会話でもしようかと思って、俺はユキに話しかける。

 まあ、別に対して気になりはしないが、会話の種としてこう言う切り口もいいだろう。……フラウの見よう見まねだけどな!


 だが、俺のそんな裏の思いを見透かすことなく、ユキは普通に教えてくれた。


「ああ、そっちからじゃ見えなかったか? あそこのドア、さっき先生が入ったやつなんだけど、そこから何人か使いの人? みたいなのが入ってったんだよ。結構分厚い紙持っててさ、多分、こんなに待たせてるのは、あれを持ってくるためだったんだと思ったんだ」


「だから、それが到着した以上もう待つことはないって?」


「ま、てきとーな想像だけどな」


 ほーん、まあ筋は通ってる。

 確かにユキの言う通り根拠のない想像だけどな、どうせ他愛のない会話なんだ。折角だしその言葉を信じて待ってみよう。ちょっと希望を持つくらいが、待ちってのは都合がいいんだ。


 それきり俺は話を打ち切って、ぼーっとユキの口笛を聞いて待っていた。

 すると、ユキの予想通り、あまり時間を置かずに先生が俺たちの元へと走ってきた。その手には分厚い資料が抱えられており、随分と重そうである。

 それからもう一人、知らない男の人が部屋から続いて出てきて、彼女の背についてくる。誰かはよく知らないが、まあ大方予想はつくので、特に触れない。


 先生は俺たちのところに着くと、肩で息をしながらずれたメガネを戻し、声をかけた。


「ご、ごめんね、またせちゃって。みんなはいい子にしてたかな?」


 あたりから口々に肯定の言葉が叫ばれる。もちろん全くの大嘘だ。

 だが、彼女は長年の勘から直ぐにこれが嘘であることを悟ったようだ。顔に苦笑いを浮かべて、「ちゃんとしてて偉いねー」と、すごい棒読みで言っている。


「ふふ、元気でいいじゃないですか」


 そんなやりとりを見ていた後ろの男が、微笑ましそうに先生に笑いかける。そんな彼に対して、彼女はとても申し訳なさそうに謝っていた。

 いや、ほんとすいませんね、俺からも謝ります。みんなまだ子供で……あれ? そういえば俺もしゃべってたか、テヘペロ。


 などと巫山戯ていると、先生がみんなを静かにさせて、そして後ろの男を前に出した。

 ………改めて近くで見ると、デカい。というか、頭身が高い。下からなのもあるけど、八頭身くらいありそう。ライアンといい勝負してるんじゃないか?

 まあ、顔がめっちゃ優男な感じの細め男だから、タイプは全く違うんだけど。


「えーと、彼が今日の社会科見学で講師をしてくださる、エレオスさんです。日夜街をパトロールして、みんなのことを守ってくれている方なんですよ」


 先生がそう言って彼を前へと出すと、彼もそのままサラリと自己紹介を始める。


「はい、エレオスです。大層な紹介をしてもらっていますが、ちょっとしたまとめ役みたいなことしかしてません。一応肩書きでは見廻隊(パトローラー)の隊長ってのをやっています。今日は皆さんに、この神護会のことを少しでも詳しくなってもらえればいいなと思います」


 そう言って彼は軽くお辞儀をした。

 それに対し、子供達はみんな拍手する。……この小学校の頃の、なんでも礼には拍手する文化って、この世界でも一緒なんだなぁ、なんでだろ。


 まあ兎に角、そんなわけで、俺たちは今社会科見学として神護会、即ちこの世界で言う警察みたいなところにいる。

 ……といっても、此処は国のものではなく、地域の教会が持っている、現代で言う消防団みたいなものだ。国のやつはそのまま『警察』って名前らしい。

 で、今はそのエントランスにみんな仲良く大集合してるって言うわけである。


「では、早速いきましょうか。ちょっと時間も押してますし」


「あ、わかりました。それじゃあみんな〜、ちゃんとエレオスさんについていけるよう、お友達から離れずに行動してねー」


『はーい!』


 先生の呼びかけに対する、元気な掛け声がエントランスに響く。流石に教会の建物だけあってデカいので、ちょいと声が反響して耳に障る。

 そして、そのまま振り返って歩き出したエレオスに続いて、コツコツと足音を立てながら、俺たちは歩き出したのだった。


 

 

神護会……協会の所有する警察団。主に市民のために働き、警察よりも人気が高い。


見廻隊(パトローラー)……神護会のうち、主に町の見回りを得意とするパトロール隊。日々の治安維持を行う。

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