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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
間章 ページの隙間の暗躍と行動
73/125

潜入捜査官パトレアの休暇と事情

す、すいません! 滅茶苦茶更新遅れました……!!!

流行病と仕事と趣味が全て完璧に被って、全く書けませんでした!

しかも今回すごく長いもんで……本当、すいません……。



 うだるような暑い日々が続くとある夏の朝。

 パトレアは、汗でぐっしょりと濡れた枕から顔を起こした。

 汗で髪が額に張り付いている。そしてその顔からは、苛つきとも哀しみとも取れるような表情が浮かんでいた。


 「フ、フフフ、折角の休暇の朝が『これ』ですか………」


 連日の『出勤(潜入)』のせいで寝不足だった彼は、今日の休暇を本当に楽しみにしていた。やっと、好きなだけ寝られるのだ──────と。

 だが、そう思った矢先、昨日は大きな熱波が街を直撃したのだ。

 その結果、パトレアの久しぶりの睡眠は、単なる仮眠となってしまう。恐らく時間にして五時間も寝られていないだろう。

 彼は、今まで抱いていた全ての希望を完璧に打ち破られた気分だった。


 それならば、と彼は早速二度寝を試みる。時間はあるのだ、睡眠はなんとしても取りたい。

 しかしそれは、パトレアがベッドに寝転んだ瞬間、すぐさま失敗に終わった。


 とにかく眠りたいはずなのに、一体なぜか? 答えは簡単である。


 しっとりとした水気を帯びたベッドに、触った瞬間不快感の襲いくるびしょびしょの枕。

 一度体を離してからもう一度触ってみると、なぜこんなところで先ほどまで寝られてたのか、という疑問が沸々と湧き上がってくる。それほどまでにこのベッドは不快なのだ。

 こんな所、もう一秒だっていたくない。だというのに、加えてそこで眠る、など不可能である。


 「────暑い……」


 彼の悲痛な嘆きは、しかしその雑多な家具達の中に吸い込まれてしまうのだった。


 ◇◇◇


 最悪の目覚めから休日を開始(スタート)したパトレア。しかし、朝ごはんを食べているうちに少しずつその傷は癒えていった。


 「はははどうせいつもねむらないならきょうねなくてもいっしょさー」


 ……失礼、これは傷が癒えた、ではなく、一周回って(イか)れたの間違いだ。


 まあいずれにしても、とにかく今日を明るく過ごす気力が湧いてきたのは確かである。

 彼も、せめて今日を楽しく過ごせるように、という思いで、わざと壊れたように振る舞っているのだ。

 

 「………よし、御馳走様でした」


 意識の底からかき集めた気力と活力で以って、パトレアは自身の前の朝ごはんを完食する。


 この朝ごはんは、昨日の夜、今日をゆっくり休む為に事前に用意しておいた物だ。

 残念ながら睡眠は十分に行われなかったので、若干無駄になった感は拭えないが、一応今日の支度が楽になったのでよしとすることにした。


 それから彼は、朝食の皿を台所で丁寧に洗う。

 夏場は少しでも油断すると、すぐに菌が繁殖してしまうので、魔道具(洗剤)も使ってしっかりと汚れを取っていかなければならないのだ。


 「うーん、それにしても、今日は何するかな」


 パトレアは動きを続けながらそう呟く。

 体は皿洗いをする一方で、頭の中では今日の予定を考えているのだ。


 今彼が住んでいるここら辺の地域は、あまり娯楽に富んでいるとは言い難く、あるとすれば風俗くらいのもの。それに、最近起こった『ある事件』のせいで、町の機能もほとんど働いていない。

 まあ、動いているところもあるといえばあるのだが、そんな所にはまず用がない。


 そう、この土地の名はサクリシア。つい三ヶ月ほど前に竜が原因不明の大暴走をして、町中が巻き込まれる大災害を引き起こした土地だ。

 最近漸く復旧の目処がたってきて、被害が最も大きかった庶民街などは既に再建をおこなっている。

 まあそもそも、一般人のやる商店街ならともかく、商家の建てた家のある商人街の建物が、そう易々と崩れる筈もなく、庶民街以外の被害はほぼゼロだったらしいが。

 それに加えて死者もゼロと来ているので、本当運がいいんだか悪いんだかわからない災害だったと言われている。


 「でも、こんなとこに越さなきゃいけなくなったんだから、私に取っては間違いなく不幸だったな……」 


 パトレアは苛立たしげにそう呟くと、皿を洗うスピードを上げる。

 カチャカチャという音が、シンクから響いてきた。


 パトレアは、つい春頃まではオフだった。

 といっても、決して働いていなかったのではなく、新しい潜入先への準備に取り組んでいたのである。

 予定では、王都を騒がす盗賊団に潜入することになっており、そのための技術や情報を片っ端から勉強していたのだ。


 しかし、そこであの竜災が起こってしまった。

 しかも、原因は市民には伏せてあるものの、それは人為的に起こされたものだという。なんでもゲキリンというものを使ったのだとか。

 そして、上はそれを大変危険視し、その犯人の目的と正体を探るべく、多くの人間をサクリシアの裏組織へと送り込んだ。勿論、パトレアもその一人である。


 (クソッ、何が宵闇の忠臣(ルミナ・アベルティー)だよ。いくら一番恩恵を受けた組織だからって、あんな極小組織があの事件に絡んでるわけないだろ!)


 皿を洗うパトレアの手がより荒々しくなっていく。

 それに伴って、そこから響く物音も、どんどん大きくなる。


 そしてカチャカチャという音が今にも皿の割れんばかりになったその時、ふっと、パトレアはその手を止める。


 「………ダメだ。折角の休暇に仕事の事を考えるようでは、優秀な警官とはいえない」


 偶の休暇なのだ、仕事のことは今度考えよう。

 バトレアはそう考えて、自分の心を落ち着けた。


 「うう、これじゃまるっきり社畜だ……」


 水で洗った皿を丁寧に布巾で拭きながら、彼はため息を一つ吐き出した。


 ◇◇◇


 玄関の前で、パトレアは軽く持ち物の確認をする。

 その服装は、なるべく動きやすいような軽いものになっている。

 肩からは中くらいのポーチが掛けられていて、その中には軽食が詰められていた。


 「とりあえず……忘れ物はないかな。よし、それじゃ行こう!」


 そういってパトレアは、家のドアを開けた。


 そう、彼は今日をピクニックの日ということにしたのだ。

 何もやることがなく、そして予定も決まっていない。そんな日は、わざわざ予定を決めるのではなく、行き当たりばったりで過ごすのもまた一興である。

 それに、今日は目覚めが最悪だったのでそのストレス発散にもなるだろう、という期待もあった。


 「うわ、やっぱすっごくいい天気だな。陽に焼かれてるみたいだ」


 外に出ると、そこは灼熱の炎天下だった。

 そこらじゅうからは虫の声が鳴り響き、一歩歩くだけでも、すぐに汗が噴き出す。青い空には、白い雲が大きく浮かび、強く強く輝く太陽が燦々と街を照らしている。

 まだ家を出て数秒だというのに、パトレアはもう疲れ果てたような気分だった。


 だが、これくらい暑ければ、きっと散歩だって清々しいものになるだろう。そんなふうに考えて、彼は自分のやる気を保つ。

 そう、ちょっと暑いくらいが、ちょうどいいのだ。


 なんとか自分を元気付けたパトレアは、早速その足を町の方へと向ける。

 それから、何が興味を惹かれるものを求めて、復旧作業が続いているという庶民街の方へと歩き始めた。


 ◇◇◇


 庶民街の通りへ来ると、そこは先ほどまでの上流街とは全く違う相観をしていた。


 まず、物が雑多である。

 この町の庶民というのは、大体が炭坑夫や娼婦、よくても野良の商人や御者である為、稼ぎというものはとても少なく、そしてそんな給料で糊口(ここう)をしのぐには、やはりどうしても生活レベルを下げざるを得ない。

 そんなわけで、庶民街というのは細々とした家が並び、またそれを間を埋めるかのように敷き詰めているので、とてもゴミゴミとした様相を呈するのだ。


 パトレアは警察の中ではまだまだ下っ端で、ある程度コネに恵まれてはいるものの、給料としてはまだ少ない。

 そんな彼だが、こういうところを見ると、まだまだ自分は恵まれているのだ、という事実を再確認してしまう。

 それに加え、ここよりもさらに下、貧民街と言われるところすらもあるというのだから、パトレアとしては、驚きを隠せないのである。


 それから次の特徴として、人が多い。

 先ほど述べたような作りなので、当然先の竜災では多くの家屋が倒壊した。

 しかし、古今東西、得てして庶民とは(したた)かなものである。このような惨状をそのままにしておくほど、彼らは(ヤワ)ではない。前に言った通り、多くの人が既に家の修復、再建を始めているのだ。

 そして当然、そんなことをすると人通りがどうしても増える。その結果として、庶民街は今までにないほどに人が増え、飽和状態になってしまっているのだ。


 「祭りの日よりも人が多いんじゃないのか? これ……」


 パトレアは、その景色を見て、ついそう零してしまう。

 しかし、それも致し方ないほどの人数だった。


 見渡しても見えるのは頭、頭、頭!

 どこを見ても人しかおらず、空以外のどこにでも、人の姿が見える。

 中にはその人混みに紛れてスリなんかを働く悪漢もいるようだ。今のパトレアは警官ではない為逮捕はできないが。


 「おい!!! 早く木ィ持ってこい!」


 「バカ、どこ見てんだ!!」


 「あ! それうちが先だぞ!!」


 街には絶えず大声が響き渡っていて、中にはとんでもない罵声まで聞こえる。

 その内容はどれも、言い方は悪いが、教養がないというか、下品というか、いかにも下町、というような言葉ばかりだった。


 しかし、それこそが下町の華であることをパトレアは理解している為、それに対して嫌悪感を抱くことはない。

 そもそも下品だということならば、過去に彼が潜入した盗賊団や裏組織の方が百倍は卑しく汚らしい。彼らの言葉など、まだまだマシな方である。


 と、そんなふうに思いながら街を眺めていると、ふと、気になる言葉が周囲から聞こえてきた。


 「ああ、それは巫女さんとこに持ってってくれー」


 「あ〜い、オッケー」


 「巫女」という言葉に、パトレアの脳はすぐに反応する。


 (巫女? こんな庶民街に? 確か巫女って、苗字持ちで貴族だったはずじゃ……もしや、復旧の手伝いでもしているのだろうか)


 そこで、パトレアの興味は一気にそのことに惹かれてしまった。


 普段はDIMAとかいうところで働いているせいで、なかなかお目通りが叶わない巫女が、こんなところで慈善活動をやっている。


 その事実は、パトレアに『巫女を見たい』という気持ちを湧き上がらせた。


 今年も前回も多忙で竜喜祭には行っておらず、今代の巫女というのはまったく見たことがない。確か噂では、今代の巫女はとても素晴らしい腕を持つ天才だと言う。

 それならば、是非会ってみたい!


 パトレアはそう思い、巫女と会うことを決意する。

 元より行き当たりばったりの旅。自分の行きたい方に行く、というのもまた面白いだろう。


 高まる期待を胸に、彼は巫女に物を渡しに行くと言う彼を、つけてやることにした。


 ◇◇◇


 「あ、あの女の子が巫女……かな?」


 彼をつけ続けること数分、パトレアは、それらしき少女を見つけた。


 そこには、明らかに周りと距離が空いている空間(スペース)があり、そしてその中心に、フードを纏った子供が立っていた。

 明らかに立ち振る舞いが洗練されていて、遠目からでもよく目立っている。


 少女はフードのせいでよく体は見えないが、しかし顔ははっきりと見える。

 年相応の綺麗な顔立ちとは裏腹に、真剣な表情を顔に浮かべ、その綺麗な銀の髪も合わさってとても大人びて見えた。

 パトレアの受けた第一印象は、とてもしっかりしている子だ、というものだった。


 それから、パトレアは少し周りの様子を窺って彼女に時間がありそうなのを確認すると、少し声をかけてみることにした。


 「あれ、貴方、巫女さんじゃないですか? こんなところで何をやってるんですか?」


 パトレアはなるべく偶然装って巫女に明るく声をかける。

 敬語ではあるが、いつもの警官としてのものではなく、形式としての軽い口調だ。


 「ああ、こんにちは。今日は私も復興作業に参加しているんです。ご存じありませんでしたか?」


 それに対して、御子もとても丁寧に返答した。

 勿論これも、彼のように形式上で、声色はとても軽いものだ。


 「いえいえ、何分自分は庶民街のものではなくて……。今日は散歩でここを見にきていたんですよ」


 「……こんな所に、ですか?ふふ、 物好きな方ですね。それでは、貴方はどちらからいらっしゃった方なのでしょうか?」


 「ああ、私は隣からです」


 「では、上流街からですか。なるほど、道理で……ああ、失礼しました。此処の方にしては口調が丁寧でいらっしゃったものですから……」


 「ははは、そんな、巫女様には負けますよ──────?」


 巫女と暫くの間談笑していると、パトレアは自分の服が引っ張られていることに気がつく。

 それが気になって振り向くと、そこには、なぜか誰もいなかった。

 不思議に思い辺りを見渡していると、自分の下から声がかかる。


 「ここですよ! 下です!」


 パトレアが驚いて下を見るとそこには、巫女同様フードを纏った一人の子供が、自分を見上げていた。

 どうやら、身長が小さくて見えていなかったらしい。


 「ああ、ゴメンゴメン。えーと、僕はどうしたのかな?」


 パトレアはなるべく子供の機嫌を損ねないように、丁寧に相手に問いかける。

 一応これでも警察官、今までも子供の相手くらいはしたことがある。相手の悩みをどう聞いたらいいのかは十分心得ている。


 しかし、その返答は、彼が思っていたものとは全く違うものであった。


 「どうしたもこうしたもありません! モノト様は暇ではないのですから、あまり長くお話にはならないでください!」


 子供に突然叱られてしまい、パトレアは一瞬固まってしまう。

 そして、彼のいう『モノト』が巫女のことだと理解して、やっと今の状況が飲み込めた。


 パトレアが確かめるように巫女の方を見れば、彼女は「はぁ」とため息をついてから少年に語りかける。


 「スカロウ、一般の方にあまり厳しいことを言ってはいけませんよ。それに、私も今は空いていますから、そこまでムキにならなくても────」


 「モノト様は優しすぎます! おとこはおーかみだって、室長様に言われたじゃないですか! こういう時はしっかり断らないと!」


 『室長』という言葉に一瞬モノトは頬をぴくつかせたが、すぐに落ち着きを取り戻して再び話し始めた。


 「こら、そんなことを人前では言ってはいけませんよ! ……あ、申し訳ありません。彼は私の従者のスカロウです。何分子供ですから、無礼はお許しください」


 そう言ってモノトは深くパトレアにお辞儀をした。

 突然話を振られて驚いたパトレアは、すぐに彼女へと首を振る。


 「そ、そんなそんな! 確かに、そういう状況に見えても仕方ありませんよ! しっかり主を守るなんて、とてもいい従者さんじゃないですか」


 そう言ってパトレアがにっこりと微笑めば、モノトは一安心といった様子で胸を撫で下ろした。

 それから、申し訳なさそうに、謝罪をする。


 「ああ、そう言っていただけると嬉しいです。本当、すみませんでした」


 「ははは……それじゃあ僕は退散するとしますよ。どうやら可愛い従者君には嫌われてしまったようですから。折角ですから、ついでに復興でも手伝いましょうかね」


 「本当ですか? 有難う御座います。そうして頂けると助かります」


 そう言ってから一言二言、二人は言葉を交わしてから、パトレアは遠くの方へと去っていった。


 一先ず面白いことがあって、彼の表情は満足そうだ。


 重労働は、きっといいストレス解消になるだろう。それに、偶には警官らしいことも悪くない……。そんなふうに思いながら、彼は喧騒の中へと消えていった。


 ◇◇◇




















 「……スカロウ、今の奴、態々遠ざけるほどのやつなのか?」


 「ええ、間違いありません。あの山に残っていた魔力と同じ物を感じました。恐らく、同じ組織に所属しているものかと」


 「ふーん……わかった。ちょっと調べとくわ」


 「はい。……その、警戒を促すためとは言え、他人に無礼な振る舞いをしてしまいました。す、すいません……」


 「あ? んー、まあ気にすんなよ。あいつも言ってたけど、主を守るのはいい従者だよ、誇っとけ」


 「!! あ、ありがとうございます!」


 「ん、どーいたしまして」


 そう言って二人は、また復興の作業へと戻っていった。

 そこからは、先ほどまでの真剣な表情は綺麗さっぱり消え失せていた。


以上、パトレア回でした。


なんかすっごく長いですね。通常の三倍近いです。

本当は二回に分けようかとも思いましたが、まあ間章ですし、一話にまとめようという運びとなりました。


さて、それで内容の方ですが、まあ大切なような大切でないような……いくつかの事実が結構出てきましたね。


──────でもそれには敢えて触れません!! だってキャラ紹介でやるもん!

なので今回触れるのはもっと細かいとこです。


この話は、三章から三ヶ月後、そこそこの復旧が始まったあたりからです。

巫女は復旧のために各所を走り回ってますし、領主やDIMA職員は日々方々へ謝罪に始末に奔走しております。大変だなぁ。

そして、パトレアは事件の捜査の一環で此処にいるわけです。

ま、あんまり深掘りしなくても次章でするので今はしませんけど。


あと、スカロウの怪しい相手の撃退法ですが、これはモノト考案です。

外面良いモードのモノトでは相手を邪険に扱えないので、さりげなく子供のスカロウが会話を誘導し、相手の機嫌に障ることなくお帰りいただく、という戦法です。

今回のような失礼な物言いや強引な話運びは本来の目的と外れていますが、緊急時なので仕方がありません。

モノトを守るために、いち早くパトレアに去って欲しかったんですね。


うーん、スカロウ君ホンマええ子やで。にも関わらず「男は狼」が言えてないのも、個人的にはポイント高いっすね!

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