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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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おやすみ、最高に最悪な一日よ


 それから程なくして、山から急激に巫女の気が霧散した。それと同時に、ずっと波立っていた魔力も、落ち着いたものに戻っていく。

 恐らく、モノトが竜を抑えることに成功したのだろう。

 あの竜をどうやって抑えるのかはよく知らんが、流石は竜の巫女、と言ったところだ。これで、災害はもう収まるだろう。


 そして、それから数分した頃、DIMAが街全体に災害収束宣言を発令した。

 どうやったのかはわからないが、モノトからそう連絡が入ったらしい。いつでもできるのならもっと早くから連絡を入れているはずなので、多分山の頂上に何か機械があるのだろう。


 いずれにせよ、俺たちはその放送を聞いて安堵した。

 もう、災害は終わったのだ。


 ◇◇◇


 そこからの行政の対処は速かった。

 もう新しい災害が起こらないと見ると、すぐさま市民への対応が始まったのだ。


 いや、本当は災害が始まった時から動いていて欲しかったのだが、訓練も用意もろくにしていないこの土地に、そこまで求めるのは少々酷というものだろう。

 それに、国王や騎士団がいることもあってか本当に迅速な対応ではあったので、一旦は置いておく。


 まず、俺たちはここで適当に親や護衛を待ち続けていたので気づかなかったが、そこかしこで民間人の救助が行われていたらしい。

 稀に起きた建物の倒壊に巻き込まれた人や、体が弱くて動けない人が、どんどん病院へと運び込まれていたようだ。

 ゲーム曰く死者は出ていないらしいが、それでも、重傷者は出てしまう。手当を行わなければいけない人は、急いで治療を施された。


 そして一方、中央広場には、そこら辺で迷っている人や混乱した人などが次々に辿り着き、次第に大勢の人間で溢れかえるようになっていた。

 後で聞いた話によると、そのせいで護衛や親が俺たちを見つけるのに随分と手間取っていたらしい。なんでもその時は、とてもガタイのいい男(子持ちには見えない)が子供を探してそこら辺を彷徨(うろつ)いている、と噂になっていたそうだ。軽いホラーである。


 あと、ライアン(彗星)が魔法で探せばすぐじゃん、と思うかもしれないが、ライアンは防衛魔法が働いていることで俺たちが無事なことを確信して、他の人の救助に向かっていたらしい。

 広場にきた時のためセラリアを残したとは言え、彼が薄情に思えるかもしれない。だが、この災害時に力があるのに手伝わないというのは、やはり気がひけるだろう。それに、もしかしたらまだ俺たちが道に迷っているかもしれないので、決して悪い判断ではなかったと、俺は思う。



 そして、完全に事態が収集されたのは、もう日も落ちんとした頃のことだった。


 夕方の、暁色の光が西から優しく照らす広場に、魔法スピーカーからの一際大きな声が響いたのである。


 『今現在を以って、今回の災害の収束を宣言いたします……、無事な方は、皆様のご自宅にお戻りください……。繰り返します……』


 それは、一旦の事態の収束を告げる声であり、緊張した人々の心を和らげる希望のお告げでもあった。


 勿論、家が崩れた人もいれば、まだ苦しい怪我と闘っている人だっている。

 だがそれでも、それは一先ず無事な俺たちに贈られる、確かな祝福であった。



 その声が響く頃には、もうすでにバルとリジースはそれぞれの護衛に連れられて、自分達の家族の元へ帰っていた。


 尚、バルはどこからどう見ても作り笑いの護衛騎士を見て、すっかり顔を青くしていた。まあ自業自得なのでしっかり怒られてくればいい。俺は知らん。

 それから、レインとはすっかり仲良くなったようで、別れ際にはレインに手まで振って挨拶していた。………戦争へ行く若者、みたいな顔に見えたのは、気のせいだろうか?


 リジースはそれまでの間、俺に言われたことはすっかり忘れてしまっていた。……忘れるように努めていた、のほうが正しいだろうが。

 まあ、空元気でも王子と今後の付き合いを約束させるあたり、流石商人である。

 それと、別れ際までその憎まれ口を一切やめなかったのは、もう天性の気質なのかもしれない。最後くらいデレてもいいのになぁ。


 せいぜい頑張って闇を抱えていってほしい。安心しろ、レインがなんとかするから。最悪俺が直してあげるから。


 そんなふうに思いながら、俺は優しく彼を見送った。



 そして、それから数十分経った頃、やっとセラリアが俺たちを見つけた。

 ふと声をかけられ振り向いたら、急に泣いて抱き締めてくるもんだから、流石の俺も少しびっくりしてしまった。


 (精神年齢は)そんなに歳の変わらない大人が泣くのを見るというのはちょっと慣れなかったが、それでも俺たちを思って泣いてくれているのはわかるので、俺は優しく迎えてやった。


 というか、レインも俺もすっかり暇して大分心も落ち着いていたので、別に泣くことはなく、子供が慰め親が泣くという、本来あるべき姿とは真逆の状態だった。

 親の心子知らず、とはまさにこのことだろう。


 それからセラリアが落ち着くまで、俺たちはずっと彼女と抱き合っていた。

 母の体の温もりが感じられて、とても愛おしかった。レインも同じように思っていたらしく、彼女がセラリアを見る表情はとても優しげだった。


 それと実は、正直俺はレインが泣かなかったことは驚いている。

 いや、別にレインはそれほど怖がりではなく、なんなら勇敢な方なのは知っているのだが、今この時点でここまで肝が据わっているとは思わなかった。流石主人公である。

 勿論、子供ながらの蛮勇も少なからず影響しているのだろうが。


 それからセラリアが泣き止む頃には、すっかり陽も落ちて、あたりは完全に夜になっていた。

 しかし、広場にはいまだに多くの人が溜まっていて、中には子供一人のこともある。本来人のいないはずの時間だというのに、これだけの人数が一所にいるというのはとても不思議な光景だった。


 彼らが、迎えにきた人が自分のことをわかるように、と魔法で明かりをつけるので、それがまるで人魂のようで薄気味悪かった。

 だがそれと同時に、それが広場を照らしていて大変美しくもあった。不謹慎なので絶対に言わないが。


 災害は終わっても、まだ街にできた傷が治ったわけではないことが、よく表れていた。


 そして俺たちは、ライアンが救助が終わったらそこで落ち合おうと約束したという場所へ、セラリアに連れていってもらうことにした。

 一緒に手を繋いで歩くのが、今日の午前にもやったというのに、とても久しぶりのことに思えた。


 ああ、祭りといえば、竜喜祭そのものはメチャクチャになってしまったので、明日の祭りの再開は恐らく不可能だろう。俺たちは、恐らくこのまま王都へ帰ることになる。

 まあ、いつまでもここにいてもいいことはないから、それでいい。もしかするとモノト辺りが俺の存在に気付くかもしれないし、さっさと逃げるのが一番だ。

 祭りをあまり楽しむことができなかったのが心残りではあるが、それはまた5年後、ここにくればよい。


 そうして今の状況の整理を終えると、俺は少し先のことを考える。


 ライアンと合流したら、俺たちは恐らくそのままホテルに向かうことになるだろう。全員体力を使ってすっかりヘトヘトだからだ。まったく、これほどまでに体力を使ったのは久しぶりである。


 ……そうだ、折角だし今夜は、魔法は使わず家族と一緒に寝よう。流石に、俺も精神が疲労している。ここらで癒しが必要だ。

 きっと、久しぶりのベッドはとても気持ちがいいだろう。


 そんなふうに思いながら、俺は星々が照らす夜の道を、二人と共に歩いていた。

 


はい、ということで、これにて三章は終了となります。

竜との対決、攻略対象との邂逅、いろいろありましたが、なんとか終わってよかったですね。


…………というか、長くないですか? 皆さんこの章の序盤何やってたか覚えてますかね? 私はほぼ忘れてます。

いや、私が作ってるんですけど、なんか私が思ってるより1.5倍くらい増量してるというか……こんなになる予定はなかったんですけどねぇ。


しかも、ここからまだ間章が残ってるので、後一伸びあるんです。びっくり。

間章は私が完全好みで書いてるやつもあるので、読者の皆さんを飽きさせないか心配です。ストーリーも進まないし。

一応次章の伏線や、ちょっとストーリーに絡むやつも今回入れていくつもりなので、一応見てやってください……。


というわけで、間章は後書きで喋りまくります。よろしくです。

ではまた次回、お会いいたしましょう。バイバイ。

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