鎌鼬のように
イベント長いので前回は一話にできんかった。
なので、イベントってついてないけどこれもイベント回です。
バルとの作戦会議も、やっと終了した。
子供の考えらしい、大雑把で行き当たりばったりな計画だが、それでも、まあなんとかなるだろうな、と思える程度には練られている。
自分のゲームの記憶にできるだけ沿っているものになったな、と俺はひとまず安心した。
「よし、それじゃあ頼むよ、二人とも」
後ろから、バルが俺たちに声をかけてくる。その声色からはどこかワクワクした様子があった。
もしかしてこいつ、さりげなくこの状況楽しんでやがるのか?
こんな状況だというのにどこか自由人な彼に、俺は呆れてしまった。王子が街中で孤立状態とか、臣下からしたらたまったものではないだろうに。
これは帰ったら長い説教が待ってそうだな、と彼のこれからの未来に俺は心の中で合掌した。おうじたまがんばえー。
さて、まあ何れにせよ、ここで俺たちが上手くやらねばそんな未来も訪れないわけで、ここからは、色んな人の為に頑張らなければならない。
たいして役に立たない自称商人二人をつれて、俺たちはこの人混みを抜け切らなければならないのだ。
いやまあ、正直ここで待ってれば騒ぎも収まるだろうと言いたい気持ちは山々なのだが、それではイベントが進まないのだから仕方がない。
それに、家屋の倒壊の危険もあるから、長居は無要だろう。
「それじゃあ行くよ、準備はいい?」
「勿論だよ!」
「しっかりさくせんどおりにやれよ!」
うん、元気は十分らしい。
これなら、背中に背負われている彼らに、多少衝撃が行っても大丈夫だ、と俺は思った。
「じゃあ、レイン、やろうか!」
「うん! グリムくん!」
俺がにっこりと微笑むと、レインもにっこりと笑って返す。その笑顔がとても眩しい。
ついでに背中におんぶされている王子の顔も馬鹿良いので、もうその煌めきはとどまることを知らない。うーん、これは神ですね、はい。人類は皆信仰すべき。
そんじゃま、ちょっと揺れたら失礼! 舌噛むなよ!
俺は心の中でだけそう注意を促すと、そのまま自分の足に魔法をかける。
レインも同様に、自分の足をさすって丁寧に魔法をかけていた。
かけた魔法は、勿論脚力強化である。……あ、跳躍じゃないよ? あんなんここで使ったら大惨事だからね!
今回は、自分達の魔法でなるべく人を避けながら、且つ人を退けながらぶち抜く、という作戦を実行する。
ちょっと通行人に危害が及ぶかもしれないなー、と思わないでもないが、そもそも普通に言ったら俺らが圧死する。
まあ王子様の命が最優先だからね、仕方ないね。オラっ王子様のお通りだぞ道開けろぃ!
あ、それと万が一にも竜の試練突破者たる俺がしくじるとは思えないけど、やっぱり少し心配なのでぇ〜………
「『再使用』」
俺が誰にも聞こえないようにそう唱えると、俺とレインにはってある防御魔法が更に重ねがけされた。
流石の俺もこのレベルの魔法を一瞬で使うことはできないが、しかし一度使われた魔法を使う、再使用を使うことでもう一度作用させることならできる。ちょっと効力は落ちるんだけどね!
とにかく、もうそこそこな衝撃なら、俺たち、ひいてはそれに密着する二人には通用しないだろう。
これで、億が一にも失敗はない。
さあ、いざ中央広場へ!
「レッツゴー!!」
そう言った瞬間、俺とレインは同じ方向へ一斉に走り出した。
後ろからは気の抜けた歓声が聞こえるが、庶民な俺たちにとっては一世一代の大勝負の始まりである!
「〜〜〜っえい!」
小さな路地から抜けてすぐ、まずレインが手を前に突き出し小さく魔法を使う。
すると、ボコボコとレインの前の地面から小さな突起が生えてきて、通行人を押し退けていった。(突起といっても本当に小さな盛り上がりみたいなのだが)
これは立派な二重発動だが、まあ一瞬しか魔力を練らない攻撃魔法の一種だし、そもそも超天才であるレインだ。頑張ればこれくらいのことできる。それに、俺が鍛えてやっているのだから、その実力は折り紙付きだ。
ちょっと魔法が苦手なバルにはショッキングだったかな? でも、二重発動とかは完全にセンスだから子供でもできるんやで、頑張ってな!
俺は謎な似非関西弁でバルを励ます。それから、俺もレインに続けて魔法を放った。
その瞬間、俺の前の空間に突風が吹き、それに驚いた人々が少し道を避ける。
……なんか避けるっていうか、混乱したように前に突っ込んだって感じだったけど………まあ俺たちはここからはもう去るのでヨシ! 後のことは知らん!
なんかより騒ぎを大きくした気がするが、とにかく俺たちの前に子供二人分程度のスペースが空いたのは事実。
俺たちは後ろを振り返ることなく、その空間を突っ切っていった。
◇◇◇
「はあ、はあ………えい!」
レインが何度目かの魔法を使う。すると、また何個目かの突起が人を退ける。
しかし、レインはもうほとんど腕が上がっておらず、相当に体力を消耗していることが窺えた。
いくら魔法で強化を重ね、大人ほどの身体能力を得ているとはいえ、結局はまだ子供故、やはり体力の限界が近いのだろう。
当然だ。魔素は無限だが、魔法は無限に打てるわけではない。魔法は身体能力なのだ、乱発すれば疲れるし、疲れればだんだん魔力を変換できなくなっていく。ただでさえ女子であり体力のない彼女では、もう……。
クソッ、俺はこんなにピンピンしてるってのに! 人混みはまだ抜けねぇのかよ!
俺は疲れたふりをしながら腹立たしげに魔法を放った。
実際、もう人混みは終わりまで来ている。
ここら辺の人間たちは、もう驚きあわてている様子もなく、後ろからくる人の奔流に押されてしまっているだけだ。中心部の地獄絵図とは程遠い。
王子を守る、という目的があるためこんなところで止まることはできないが、明らかに人の数が減っているのがわかった。
あともう少し、あともう少しのはずなのだ……!
だというのに、そのあともう少しがとても遠い。
ゲームではここら辺はバッサリカットだったから、まさかここまで厳しいものだとは思わなかった。
キャラたちも息切れなどはしていたが、それがこんなにも追い詰められていたものだったなんて!
なにが「なんとかなりそう」だ! そう自分の想定の甘さに苛立ちを覚えるが、しかしそれを表に出すことはできない。
今はただ、前へと進むしかないのだ。
レインが相当疲れていることに気づき、先程からバルは一生懸命励ましの言葉をかけている。
それを聞いて、レインもなんとか気力を保っているようだ。
だが、何もできない自分が悔しいのか、バルの顔は悲痛に歪んでいる。先ほどなんかは、自分も走るなどと言い出したほどだ。
流石にそれは、ついてこれないことを理由に止めさせてもらったが、そこら辺の責任感の高さは、さすがに王子なんだなぁ、と感心した。してる場合ではないが。
なお、リジースは全く感謝の色を見せずに、もっと頑張れ気張れと叱咤激励を浴びせてきている。
うーん、この性格、相変わらず捻くれている。俺がもし本当の子供だったら、捨て置かれても文句を言えないぞ……。まあ、それがだんだん直っていくから、リジースルートはいいんだけどさ!
とにかく、あともう少しなのである。最悪、俺が隠れてレインの補助をしてやることを視野に入れて、俺はさらに走った。
それから、数分もした頃のこと。
「うっ……………あっ!」
ついに、中央広場が視界に入る。
それを見た俺とレインは、最後の力を振り絞って魔法を使い、そして精一杯のスピードで道を走り抜けた。
ついに俺たちは、人混みを抜けたのだ。
広場へ出たその瞬間、一気に視界が開ける。
先程までの建物だらけの道とは違う、美しい石の広場が、俺たちを出迎えていた。
──────いや、長くね?
というわけで、また終わらなかったです。3000字も使っといてこの体たらく、許されて良いの?
あと、レイン優秀すぎだろと思ったあなた……私もそう思います。
天才キャラ誇張しすぎたかな、というか、一般人の設定を弱くしすぎたかもしれん。
まあ、魔法は設定的に年齢による実力差って理論上ないんですけどね? それにしたって優秀。
弱体化させたりとかはないので、このつよつよレインとこれからも頑張っていきたいと思います。




