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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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イベント「大災の中で」


 「ふーん、リクと、グリードかぁ」


 レインは、相手を探るようにジロジロと見渡した。

 本来ならば失礼極まりない対応ではあるものの、二人は今庶民であり、そこに位の優劣は存在しない。よって、特にその行いを注意することはない。


 だが、それはあくまでも礼儀としてのことであり、実際彼らとしての生の心情は、もしや偽装が見破られたのか、と気が気でないものだった。


 そこで、バルが念の為に彼女へ質問をする。

 もし見破られていないのなら問題はない。だが知られてしまったのならば、隣の彼のように、協力(黙っていること)を頼まなければならない。そんな思惑を胸にして。


 「……どうかしたのかい? ええと────」


 ふと、そうしようとして、バルの口が止まる。

 よくよく考えてみれば、自分は相手の名前も知らないのである。それでは質問もしようがない。

 まずは名前を聞こう、彼がそう思って再び口を開いた、その時だった。


 「レイン、だよ。よろしくね」


 「え……あ、うん。レイン君か。いい名前だね」


 そう、レインは言い澱んだ自分へ、直ぐに顔を上げたかと思うと、にこやかな笑顔で名を名乗って見せたのである。


 バルは、突然のことに少し驚いてしまった。

 王子であったが故に、同年代のほとんどの者は彼の後に、彼が望んだ通りに答えを述べる。それが、バルにとっての日常だった。

 そして、同世代の子より特別成長が早く、誰よりも優秀であった彼にとって、それは仕方のないことでもあった。


 まだまだ若い彼らに、自分以上のことを求めるのは酷だろう、ずっとそう思っていたのだ。


 だが、彼女はバルが質問をする「前」から、自分へ答えを返して見せた。

 それは、本当に何気ないことだが、彼にとってはとても驚くべきことだったのである。

 少なくとも、そのせいで言葉に詰まるという、貴族社会人としてのマナーを違反してしまう程度には。


 「あれ、どうかされ……どうかしたのか? リク」


 彼がぼーっとしていることに気がついたのか、グリードがバルへ声をかける。

 そこで、バルはハッと我に帰った。


 誰なのかも知らないが、王子ということを知られたというだけで付き合わせてしまっている彼。そんな彼にこんな情けない所を見せてはいけない。


 バルはそう思って立ち直ると、まるで何事もなかったかのように、レインの隣の少年にも声をかける。


 「それで、レイン君の隣にいる、君は……?」


 少年は、そう声をかけられると何故か一瞬固まり、すぐに元の調子に戻って返事を返してきた。


 「ああ、僕はグリマニアっていうんだ。よろしくね」


 彼は、少し、いやだいぶ流暢にそう言って見せると、にっこりとした笑みを浮かべお辞儀をした。


 (……なんか、嫌にニコニコした子だ。一体何がそんなに可笑しいのだろう? 変装が見破られている様子もないし……)


 バルは、彼のことを観察した結果、そう感じた。


 先程の挨拶も、自分と同等なほどに綺麗な滑舌であるし、それに笑顔もどこか貴族たちの様。

 どこか拭えない不気味さを、彼からは感じていた。


 だが、そんなことを今気にしている余裕はない。

 なんにせよ、どちらも優しい子の様でよかった、と彼は思った。


 「そうか、レイン君に、グリマニア君だね。……グリマニアっていうのは少し長いな。よし、ここでは少し省略して、グライと呼ぶことにしようか。いいかい?」


 「勿論、なんでもいいよ!」


 「ありがとう。それじゃあ、何はともあれ、ここからなんとか抜け出さなくちゃいけないね」


 そう言って、バルは周りを見渡した。


 グリードの方はコクコク、と頷いている。どうやらよっぽど今の状況が怖いらしい。

 グリマニアの方も、グリードほどではないが、困り顔で同意した。

 なお、レインはよくわかっていないのか、?マークを顔に浮かべている。


 バルはそれに苦笑いをすると、全員へと顔を剥け、そしてこれからのことについての話を始めた。


 「まずは目指すべきは中央公園だね。あそこには僕らの護衛もいるし、何より広い。きっと、子供が潰される様なこともないはずだ」


 「うん。そこには、僕らのお父さんやお母さんもいる。そこにつければ、もう安心だと思うよ」


 バルが提案した目的地に、グライは(あとレインも)賛同する。


 どうやら、自分達の目的地が一緒らしいことを知り、ひとまずバルはほっとした。

 今も後ろで押し合いへし合いをしている大人たちの群れの中、グリードとだけで行動するのは流石に厳しいと思っていたからだ。


 バルは、とりあえず人数がいて、わずかに心にあった不安が一気に消えた気がした。

 そして、声色をより元気にして、話を続ける。


 「それで、行き先は決まっても、そのためにはこの後ろの人混みをくぐり抜けていかなきゃいけない。それは普通は難しい。だから、それをどうするかなんだけど……」


 「あ、えっと、それ、まほうを使うのはどうかな?」


 自分の話を横から遮って、声がした。

 声の下方向を見れば、そこにはレインがいる。


 「……え、君、魔法を使えるの?」


 「うん。……あ! でも、か、かんたんなのだけだよ?」


 バルは、先程以上に驚いてしまった。

 なぜなら、魔法というのは最近庶民にも門が開かれているとはいえ、まだまだ浸透しているとは言い難いものだったからだ。

 日常魔法や魔道具といった代物はよく使われているが、しかし自分で魔法を編んで使うというのは、子供のうちからできることではない。

 だというのに、自分と差して年も変わらなさそうな庶民の子が、まさか魔法を使えるなんて、しかも、どうやらグライもできるらしいではないか!


 実は、バルはそこまで魔法が得意な方ではない。

 将来必ず魔法学園には通うことになるため、今のうちに直しておかなくてはならないのだが、未だに基礎魔法(平民がよく使う程度のもの)しか使えない。

 いや、別に魔法が使えなくては人生が傾くかと言われればそうでもないのだが、しかしそれでも、彼にとっての唯一のコンプレックスには違いない。


 だからこそ、バルは二人の発言に目を見開かずにはいられなかったのである。


 「へぇ、おまえら魔法使えんのか。おれはまだがっこうでやるようなのしか使えねぇのに」


 グリードの方も、すっかり驚いている。

 というか、彼が世界の標準のはずなのだが、いかんせん過半数が魔法を得意としているこの状況で、微妙に感覚ががおかしくなっているのだ。


 (……もしかしたら、彼らとは魔法学園で再開するかも知れないな)


 バルは、そんな思いを胸に抱いた。

 もしそうなれば、きっと自分と切磋琢磨する優秀な生徒となってくれるだろう、そんな期待が、彼の胸を膨らます。


 が、それはきっと遠い未来のことだ。今は関係がない。


 「よし、魔法が使えるなら心強いよ。とりあえず、どのくらいのことができるのかを教えてほしい。そしたら、作戦が組み立てられる。あとは、作戦通り、一気に広場まで行こう」


 バルは、そう言って二人に近寄ると、全員で作戦を組み立て始めた。

 ついでに、ちょっと魔法について教えてもらったりもしながら。

 


たいして期待してなかった相手がふと漏らす知性とか優秀さとか、ちょっとキュンときますよね。





てことで、はい、書き初めです。

年末年始なんで、ちょっと気合い入れて連日投稿です。

多分すぐにペース落ちます。……三日坊主にはなりたくないっす……。

とにかく、今年もよろしくお願いしますね、みなさん!

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