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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
65/125

☆全・員・集・合☆


 目の前で燦然と輝く、その青い目。王族しか持ちえぬそれは、明確に彼の身分を物語る。

 目は口ほどに物を言う、とはいうが、これほどまでこの諺があることは今までなかっただろう。


 つ、ついに、きちまった……!


 俺は、あまりの感動のあまり、つい生唾を飲み込んでしまう。


 バルテクス=オート=レクスピリア。

 現国王と現女王の間に生まれた、正真正銘の王子様、さらには、ゲーム『星矢射る高貴の園』では一歳上の上級生としてレインをリードしていく超王道メインキャラをも務め上げる凄い人だ。

 そんな方にお会いできるなんて、もう恐悦至極の騒ぎではない。平民(一般オタク)にとって、神のお導きと言っても差し支えないことなのだ!


 ……が、残念ながら俺はそんなことは知らないことになっている。あまり変なことをしては、レインに怪しまれてしまうのだ。

 本当なら握手して会話して頭撫でて、とやってあげたい所なのだが、そこら辺の子供にそれをやるのは控えめに言って頭がおかしい。

 いや、王子相手ならいいのか、ということをおいておけば、だが。


 そんなわけなので、俺は平静を崩すことなく、普通に彼に対して話しかける。


 「えと、勿論だけど……とりあえず立ったら?」


 俺は、転がり込んだまま座った状態でいる彼らに対し、まず立ち上がることを提案した。

 このセリフは、多分ゲーム通りにいえているだろう。このイベは結構何度も読んだから、よく覚えているのだ。


 バルテクス=オート=レクスピリア(めんどいから、これからバルと呼ぶことにする。勿論ゲーム通りだ)は、その言葉を聞くと、自分の今の状態に気がついたのか恥ずかしそうに立ち上がった。


 バルは、立つとすぐに体から砂を払い落とす。

 そんな小さな汚れなど、平民なら気にもしないが、彼は貴族故に身だしなみに気を使うのだろう。俺は、それを見て小さいのに偉いなぁと感心してしまった。

 よく見れば、その服は変装のためかある程度庶民でも着られるものになっているが、しかしそれでも俺たちでは目が飛び出るような値がつく者だ。

 レインは被っているフードのせいで気がついていないが、もし気づけば、すぐにそれが自分の家の商品以上のものであると見抜くだろう。


 ある程度砂を払い終えると、バルは改めてこちらに向かい合って、一礼をした。


 「ありがとう、二人共。ここも広くはないのに僕らまで入れてもらえるなんて、君たちは優しいね。もしかして、神様の導きだったりするのかな?」


 そのまま顔を上げた王子には、満面の笑みが浮かべられている。

 子供らしさのない、微笑むような、外向き用の顔だ。


 いや、ほんとしっかりした子だ。うちの学園の子もそこそこ精神の成長が早いと思っていたけど、やはり貴族は段違いである。

 丁寧なお礼に社交笑いまで身につけているなんて、なんとも恐ろしい。


 そうして俺があまりにハイスペックな王子にドン引いていると、ついっとレインがバルの元に寄って、一つの質問を投げかけた。


 「あの……二人のなまえはなぁに?」


 いや、バルの話はガン無視かよ。そりゃ確かに名前は聞いてないけどさ。

 ほーら、バルの顔ちょっとびっくりしちゃってんじゃん。仕方ないよな、王子の話に返事もせずにくる奴なんて、今まで一人もいなかっただろうから。


 まあ、そこがうちの子の魅力だから、ヨシ!


 「えっと……うん、そうか、まだ名乗ってなかったね、ごめんごめん」


 バルは顔に多少の苦笑いを浮かべそう言うと、少し逡巡した後に、軽く頷いて胸に手を当てた。


 「僕の名前はリク。王都で商人をやってて、今日は祭りを観光しに来たんだけど……まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったよ」


 「え─────」


 バルが何かを喋りかけた後ろの少年の口を一瞬で塞ぐ。

 それから、ボソリと何か耳元でつぶやくと、またすぐにその手を離した。


 「それで、隣のこの子はグリード。同じく商人の子でね、実家で付き合いがあるんだ。会社はあんまりいい関係じゃないけど、僕らは仲良しなんだよ」


 「……………どーもー」


 ………うん、最後に嫌に長い沈黙があったことは、設定の細かさからチャラにしてあげよう。

 ということで、ミスは「王都で商人をしていて」という、本人が商人かのような言い方になっていることだけ! よって98点!


 ──────いや何様のつもりやねん。


 という一人ツッコミは置いておいて、二人の自己紹介を改めて振り返ってみよう。


 まず、わざわざ本名ではなくリクという偽名を使ったのは、自分の身分を隠すためだろう。


 いうまでもないが、今回はお忍びである。あんまりここの背景は語られていないが、たしか家臣を何人か騙して出ているというものだったはずだ。

 そんな状態で堂々と王子などと言おうものなら、護衛も少ない中襲われて、即お陀仏だ。だから、ここでは本名を明かさないことにしたのだろう。


 それより、大切なのはこのグリードとかいう子供のことである。

 イベントが予定通りに進行していると考えれば、この子は間違いなく攻略対象の1人だ。


 そして、勿論これは偽名である。


 確かその本名を、リジースと言う。苗字がないので、平民だ。


 竜喜祭があるので、王都から出てきた商家の家の子。

 商会名は、デザイアー、だったか。欲望(デザイア)とかいう直球ネームにはゲームでも驚かされたものである。


 今回は、バルが普通に街を歩いていたところを彼に見つかり、急いで彼を抱き込んでいたところを災害が襲った、という顛末だ。

 うーん、リジース完全にとばっちり。かわいそかわいそ。

 まあこの時のコネでそこそこ贔屓にしてもらえるので、損ばかりではないのが救い。よかったね!



 と、そんなわけで、二人の攻略対象にヒロインに俺。完全に役者は出揃った。

 ここからは遂に、イベント遂行のお時間である。


 今までコツコツと準備してきたものが、無駄になるかならないかは、今日ここで決まるのだ。

 これからは、気合を入れてやらなければならない!


 いざ、尋常に──────勝負!










 あ、そういえばこの子たちの魅力についてあと数分語りたいんだけど、ダメ?

 ………………あ、ダメですかそうですか……。

こんなに独り言が多いのは、グリムが陰ながら大興奮しているからです。

イケメンの子供時代はやっぱりいけショタなんやなぁ……(恍惚)






と、いうことで、これで、今年は書き収めです。(2022に見てる人には一切配慮しないスタイル)

いやー、ここまで付き合ってくださり、本当にありがとうございました。

更新ペースが落ちたり中弛みしたり、いろいろありましたが、なんとか今年を乗り切ることができました。


無駄に長い本作ですが、最後まで見ていっていただければ幸いです。

では、また来年の一発目(又は今年一発目)にお会いいたしましょう!

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