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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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おはよう、最高に最悪な一日よ

祭り当日、そのプロローグ。


 「ふあ〜あ、おはよぅ……」


 のそり、とベッドから起き上がり、俺は大きく伸びをする。

 そして、さも今起きたかのように辺りを見回して、丁度身支度をしている両親に対して挨拶をした。


 「あれ、おはよう。今日はいつもより起きるのが早かったね、グリム」


 セラリアが、そんな俺に驚いたように声をかけてきた。

 どうやら、今はベッドメイキング中らしい。なるべく子供を起こさないように、静かにシーツを広げては、スーッと綺麗に伸ばしている。

 若干いつもより髪が乱れている気がした。そこで、いつも朝におきたら、セラリアはちゃんと身だしなみを整えていることを知る。そういうところは、やはり女性なんだなぁ、と思う。


 ああ、思えば朝にライアンを見るのも初めてだ。といっても、ライアンはいつも身だしなみを整えたりはしていないので、休日の彼のまんまだが。


 それから、俺は早く起きた言い訳をすることにした。

 勿論早く起きた理由について、いつも目を覚ます時間まで寝たふりするのがつらくてね……とは言えないので、俺は事前に用意しておいたものを使う。

 

 「うーん、ベッドが変だったから、あんまり眠れなかった……」


 と、俺は目を擦りながら言った。

 普段はベッドで眠ってすらいないので、嘘はついていない。いや、そもそも前提から嘘で入っているので、今更ではあるのだが。


 セラリアはそれに納得したように頷くと、「グリムもそういうタイプかー」などといって共感している。

 いや、あんたいの一番に熟睡してただろ、というツッコミは喉の奥に閉まっておいた。


 セラリアは、しかしチラと外の方を見やると、カーテンに手をかけ、そして言った。


 「それでも、相当早いと思うよ? だってほら、外はまだお日様が昇っていないし」


 そう言われて窓の外を見てみると、確かにまだ外は薄暗い。

 太陽の光が、遠くの方からほんのりと街を照らしているだけで、正に日の出直後、と言った様子だ。

 実際、起きてすぐやるはずのベッドメイキングを、未だ両親がやっているのだから、本当に早く起きたことがわかる。


 少し失敗だったかな、と思ったが、ワクワクしていたから、とでもなんでも言い訳は効きそうだったので、ひとまず安心していいだろう。

 というか、正直俺は両親がこんなに早く起きるとは思っていなかったので、そっちの方に驚いている。


 予定では、日の出までに部屋にいておけばいい、的に考えていたが、それでは結構ギリギリだったっぽい。ほんと、早期決着つけられてよかった。


 それから、ふと、あることが気になって俺は辺りを再度見回した。


 「……ん、レインは?」


 そう、気になったのは別室に寝ているレインのことだ。

 まさかあの子も自分のように早く起きている、なんてことがないだろうな、と思って、俺はセラリアに問う。


 すると、彼女は優しく首を横に振り、そしてレインのベッドがある部屋の方を指差した。

 どうやら、レインはまだ寝ているらしい。


 俺はベッドから降りると、足音を立てないようにドアへ近づき、そしてゆっくりと開けた。

 なるべく気配を消して中を覗いてみると、そこには、シーツをひっくり返すこともなく、とてもお行儀よく眠るレインがいた。俺とは大違いである。


 寝顔はとても安らかなもので、そして可憐だ。

 さすが乙女ゲー主人公、無意識下でもとてつもない美少女でいらっしゃる。


 これから起こる、災害とも思い出とも、運命ともとれるような大事を、全く予感させないその顔に、俺はしばらくの間見惚れてしまう。

 ……一応断っておくが、俺はロリコンではないので、見惚れたというのはあくまで、微笑ましい姿に、ということである。

 最近若干他人の好みが体のほうに引っ張られている気がするのは……まあ、うん、気のせいだろう。違ったとしても不可抗力だよ、うん。


 俺は、未だ明かりのないその部屋にそっと蓋をすると、あらためてセラリアの方へと向き直った。


 「僕も、今日の用意をしたいな。いーっぱい楽しみたいから!」


 それを聞くと、息子が立派に成長して嬉しいのだろうか、セラリアはその目を輝かせた。

 それから、グリムはいい子ね、と俺を撫でた。


 「ふふ、それじゃあ、グリムにはちょうどいい仕事があるの。大切なこと。グリムはちゃんとできるかな?」


 「うん、まかせて!」


 俺は、セラリアのその言葉に頷く。

 そして、トン、と胸を叩いて見せた。ちょっとむせた。


 「それじゃあ、お願いしようかな。まず、グリムは顔を洗うこと。それから髪を整えて、できたらまたこっちに戻ってきて。わかった?」


 うん、子供の心を使ったいい『お願い』だな。

 俺は、心の中で、何様のつもりなのかわからない視点から評価をした。


 それからセラリアからのお願いに、俺は勢いよく頷くと、そのまま洗面所へと走り出す。

 これが終わったら、なるべくセラリアの手伝いをしてやろう。そんなことを思いながら。


 そうして俺は、最悪の一日の最初にしては悪くない、穏やかで微笑ましい朝を迎えたのだった。

穏やかで、美しい朝。

最悪の日にも、そんなことがあったっていいではないか。

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