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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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とりあえず、おやすみなさい


 「………あ、あ?」


 竜が、かろうじて呻き声を漏らす。

 しかし、そこには先ほどまでの威勢も、魔力すらも感じない。

 ただ一つ、その首には、()()()()()()が一枚、確認できた。


 『おいおいどうした、そんな顔をして。俺に負けたのがそんなに意外か? ああ、それとも─────なぜ逆鱗を触られたのかが、分からないのか?』


 俺は、溢れる興奮を押し殺しつつ、竜へと傲慢に語りかけた。


 まあとりあえず、こいつが気絶する前に、今まで手こずらせてもらった分の『お礼』くらいはさせてもらわないとなぁ?


 「き、貴様……狙いは、球なのではなかったの、か……?」


 竜が息も絶え絶えになりながら、俺を睨んでくる。

 だが、俺がそんなやつに怯えることはない。相手に対し、俺は侮る様な視線を送るばかりである。


 『お前のいうことは、間違っていないさ。俺は、本当ならさっさと力を奪って帰るつもりだった』


 「で、では、何故……」


 『簡単だ、ムカついたからだよ。お前に一泡吹かせてやりたくなったのさ。お前の想定内の(玉を触る)ことではなく、予想外の(逆鱗に触れる)ことをしてやろう、とな』


 ………うわ、オモロ。何その表情、驚いたら竜ってこんな顔になんの? カメラとかあればいいのに、絶対これバズるぞ。


 「貴様、そ、そんな理由で……?」


 『ふむ、何が「そんな」なのか分からんな。この俺が、お前に腹が立った。それだけで、俺が動くのには十分な理由だろうに』


 俺は、あくまで自分勝手なスタンスを崩さず、相手に声をかける。

 竜はそれを聞いて、俺に対して怒鳴ってきた。


 「自分が何をやったのかをわかっているのか! こんなことをすれば、下の街すら、どうなるか分からんのだぞ!」


 おーおー、超越者ぶってる割には、街に結構愛着があるんだな。

 まあ、シミュレーションゲーのデータが吹っ飛ぶかもしれんとか言われたらそりゃ焦るか? いやでも、こいつの口振りはそれよりも─────


 ズン、と大きな衝撃が響いた。

 竜が倒れ伏したのである。どうやら、もうそろそろ限界らしい。


 『俺にとっては、下のことなどどうでもいいことだ。ただ、お前が俺よりも下にあることが重要なのだ。……そう、お前にはそうして誰かを見上げる方が似合っているぞ?』


 俺がそう言葉をかけると、竜は顔を赤くして立ち上がろうとするが、しかし体に力が入らないのか、その脚は体を持ち上げることなく、再び体勢を崩してしまう。


 まるで生まれたての子鹿である。

 強者であるはずの精霊の、弱々しい姿を見て、俺は高笑いをした。

 竜は、それをただ悔しそうに聞いていることしかできなかった。



 「………おい、眠る前に、一つ聞かせてもらうぞ」


 ふと、竜がそう話しかけてきた。

 俺は高笑いをやめ、竜の顔へと目線を合わせる。


 『弱者の言葉に耳を傾けるのも、強者の義務。なんでも聞くがいい』


 俺は、弱者、というところに目一杯の協調をして、そう言った。

 ちょっとガキっぽいと思うかもしれないけど、マジで疲れたのでこんくらいのマウントは許してくれたっていいだろう。今俺は事実ガキなんだし。


 「我が反応速度は、確かにお前の魔法よりも早かった。反応はできていた。……だのに、何故か貴様を射抜けなんだ。貴様、我に何をした?」


 ふむ、やっぱり反応されてたのか。

 まあ逆鱗触る時に、顔はこっち向いてたし、やっぱギリギリだったっぽいなー。いやー、勝ててよかった。

 ま、かわいそうだし一応こいつの問いにも答えてやろう。やっぱり、自分の思っているより自分が弱いってのは、強者にとっては怖いだろうしな。


 『……貴様、自身が精霊の中で最も生物に近いということを知っているか?』


 俺がそう問うと、竜はそれに首肯した。

 それを聞いて、俺はそのまま説明を続ける。


 『そう、お前は生物に近い。いや、もはや生物との相違点の方が少ないだろう。食事がいらないくらいか? そして、それならば当然、その性質すらも引き継いでいることになる』


 竜は、それを聞いても未だ疑問の顔を浮かべている。

 ここまで行ってやったんだから気づけよ、と思わないでもないが、まあそんな知能があったら俺が負けていた可能性があるので、とりあえず許す。


 『つまりだ。お前、()()()()なんだよ。寒くなると体が鈍るんだ』


 そう、これが、俺が竜に対して用意した秘策である。


 古い文献にて、竜は冬の時期はおとなしい的なことが書かれていることを見て、この作戦を閃いたんだ。出典がゲームのだから、殆ど間違いないと思っていた。

 そのことに気づいた俺は、竜へと対策としてまず氷魔法を練習したんだ。寒空の下、あれは結構きつかったなぁ。


 そしたら後は簡単だ。

 『合わせ鏡(ダブルミラー)』で人を増やしたら、少しずつ、ダイアモンドダストを引き起こす、『白銀の陽光(アダマス・パルディス)』や、氷を呼び出す『凍てつく槍(グラキウス)』で気温を下げていけばいい。


 最後に、動きが鈍くなったところを超高速で突っ込めば、竜はスピードに対応できず、俺の勝ち、である。


 うーん、我ながら素晴らしい作戦だ。

 これから異世界転生する奴がいたら是非教えてあげたい。


 俺が説明を終えると、竜はそのままじっと考え込んでしまった。


 ……あ、違う。なんとか話を聞こうとして起きてたのが、話が終わったんでそのままぶっ倒れたんだ。


 うーん、正直ちょっとくらい蹴ってやってもいいところなんだが……流石にかわいそうだし、やめとくかぁ。


 俺はもう呼吸音も聞こえなくなった竜を背にすると、そのまま玉の方へと進んでいく。


 『今は安らかに眠るがいい、竜よ。精々、街への被害を抑えるのだな』


 俺も、玉を触ったら早く帰ろう。


 そう思って、俺は玉に触れる。

 とんでもない量の魔力が、俺に流れ込んでくる──────


ちなみに、玉を自分のものにする話は、竜をボコして満足したのでやらなかった、ということにした。

正しくは、そんなもん隠しておけるわけがない、だけど。

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