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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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巫女の語る伝承、或いは真実 その1

日曜に間に合っとらんやんけ!

いや、まさか書くのに三時間かかるとは思ってなくて……


 それは、未だ人が獣と同族であった(森や山に住んでいた)時代。

 ようするに、むかーしむかしの時代の人が遺した、お話。

 古き英雄と竜の間には、古き約束が、交わされた。


 それが嘘か真かは、それこそ、竜のみぞ知る──────。




 その日も、人々は作物を取り、獣を狩り、魔法を研究し………各々の『日常』を過ごしていました。

 日常、とは言っても、今より遥かも昔の時代ですから、家は茅葺で畑は小規模、魔法も今とは考えられないほど弱い時代だったのでしょうけれど。

 しかし、それでも、例え現代とは比べ物にならないほど不便でも、それでも彼らは幸せでした。

 今の様に、国というものに縛られず、仕事というものにとらわれず日々を謳歌する彼らは、私たちとはまた別種の喜びを得ていたに違いないのです。


 そんな暢気で、危険で、弱々しくも力強い生活を送っていた人々ですが、しかし永遠というものはこの世に存在せず、干渉のない世界などあり得ません。

 その日、彼らは日常というものを完全に変えてしまう様な出来事に遭います。


 バサリ──────


 それは、不意に、突然に、なんの予兆もなく、太陽が頂点に達した時に、微かに響きました。

 今まで聞いたことのない様な、不思議な音でした。


 バサリ──────


 先程の音から少しの間をあけて、全く同じ音が再び響きました。

 今度の音は、先ほどよりも少し大きいものでした。


 バサリ──────


 三度、その音は街に響きました。

 その音は、もうすでにその正体を勘付かせるのに十分なほどに大きくなっていました。

 いえ、それは音のみを考慮した時の話であり、家の外に出ていたすべての人は、とっくにその正体に気付いていました。


 バサリ、バサリ──────


 今までで最も大きな音が、それも連続して響き、そして、その音はならなくなりました。

 しかし、それは決して脅威(・・)が去ったことを意味しません。

 風切り音が止んだ……それは、全く逆の────それがここに着地した、という事実を示していたのです。


 人々は()()を恐れました。そして、畏れました。

 あまりにも偉大すぎる(恐ろしい)その御姿に魅了される(怯える)あまり、その魂を近づけんと(気を失わんと)するものすらいたといいます。


 人の五倍はあろうかという体躯で、まるでトカゲの様な鱗に蝙蝠の様な翼を生やし、にも拘らずその口には、それが肉を食らうことを示すものが生えている。

 その時生きる者の殆ど──────言い伝えを知る長老を除く、すべての人間がその時まで知らなかったその存在の名は。


 「地を這い、空を飛ぶ塵芥ども、喜ぶがいい。我、偉大なる古竜にしてこの山を統べる王、アポカリプスが、再びこの地へと帰還した!」


 古竜アポカリプス。

 魔より生まれ出でた、悠久の、長い永い時を生きる「物」。


 これは、はるか昔にその地を離れた筈の、大いなる(キング)の帰還の日だったのです。

 

 ────────────

 ───────────

 ──────────


 竜が、集落に現れた。


 と、言葉にすれば大仰で、とてつもない大事件の様に聞こえますが、実の所、それは大したことではなかったということが文献に記されています。

 何故ならば、竜は一つ二つの決め事をした後、すぐに今の住処(火山)へと飛んでいってしまったからです。

 つまり、竜の目的は何か危害を与えるでも、自らの力を奮うためでもなく、ただ単純に帰還した事を宣言することだけだったのです。


 と聞いて、皆様は、それではいくつかの決め事とはなんなのか、ということを疑問に思われることでしょう。


 約束とは、至極単純な、そして当然の事でした。


 竜は集落のことを一瞥し、まずこう言いました。


 「たった二足で立つ脆弱なる賢者達よ、貴様らが我が不在の間、ここの仮初の王として振る舞っていたものであるか?」と。

 簡単に言えば、人間が此処の食物連鎖の頂点ということでいいな? ですね。


 当時の人間達は、決して自分たちのことをそうは思っていませんでしたが、しかし他にかの者と交渉できるものがいなかったのも事実でしたから、知恵を持つものとして全てを代表してその問いに肯定しました。


 竜はその答えを聞くと、こう続けたそうです。


 「では、貴様らの中から一人交信者を立てよ。我が声を語るには、貴様らの数は多すぎる」と。


 これが、代々この町で受け継がれる伝統の役職にして、人を縛る竜の鎖でもある、『巫女』の始まりでした。


 といっても、実は最初の数代は女性でなかった時期もあったそうです。

 制度が始まったばかりはまだ右も左も分からない状態で、それに竜との更新も稀でしたから、適当な若者に継がせることが多かったためです。

 しかしその後、男性の交信者の時偶然に、あるいは必然にか───天災が相次いだために、当時の人は竜様との交信者として男は不吉である、として避ける様になっていったのです。


 それで、初代の巫女ですが、それはこの町の中央広場にある銅像の女性……唯一、竜を相手に一歩も引かなかった女傑である彼女が任命されました。

 そして、また伝承によれば、この決め事を交わしたのもまた、彼女であったと言います。


 古い時代の古い集落ゆえに、惜しいことに初代の巫女の名は既に失伝しています。しかし、彼女がのこした逸話はどれも偉大なものであり、この劇場の中にも御伽噺としてご存知の方が多いのではないでしょうか。


 話を戻しましょう。


 巫女を決めることを約束すると、次に竜はこう言いました。


 「我が不在であったが故、今まで貴様らがこの地にしてきたあらゆる侮辱は、土地の所有者として不問とする。だが、既に我は舞い戻り、再び玉座に着こうとしている。最早この土地は自由気ままに遊ばせてはおけぬ。住むものとしての礼儀(貢ぎ物)を持て」と。


 集落の人々は、即座にこれに同意しました。

 なんの代償もなく、タダで住まわせるというのは、彼らを養う者────つまりは竜ですね────にとってどれほど無礼であるかを容易に想像できるからです。


 こうして、その町の集落に住む人々は年に一度、家の食物より幾らかの量の食物を提供することとなったのです。


 そして最後に、我らが王(ここから書き方がこう変わっている。恐らくこの時点で自らが養われる側、つまり国民になったから)はこう言いました。


 「我はこの地に君臨するが、統治者ではない。我はこの山の頂点である貴様らに交信者をたてたが、貴様らを他の者の上としたわけではない。我はすべての超越者であるが故に、全てにおいて世に関わることはない。ただ我のみが観測者にして、王にして、唯一の至高である」と。


 我らが王(以後、竜)はその言葉を消して忘れぬ様に、と、巫女に今日のことを書き留めさせました。

 そして、竜の言葉を全て書き記すことを、巫女の責務としました。


 そうやって、今日この日まで、このことは伝えられているのです。












 第一幕(プロローグ)「竜の帰還」 完。

 語り手 モノト


 竜喜祭前夜、『観光客向けの説明会』より。

 

第二幕もお楽しみに………。



これ語ってるのがあの乱暴者(モノト)ってマジ?

流石に猫被りうまいなぁ。 byグリム


というわけで、勿論グリム一家も聴いてます。

ていうか、この公演が原因でグリムが竜と戦うとか言い出します。

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