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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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天国の裏は地獄

祭りの裏方の皆さん。

裏方と言えるほど裏方でもないけど、一応裏方。


 日に日に大きくなる騒ぎで、街は賑わっている。

 日に日に増す人流で、街は膨らんでいく。


 そして、日に日に元気になる竜の様子で、DIMAは喚いていた。


 「おい! また飛んだっぽいぞ!」

 「あのクソトカゲ何回街を見りゃ満足するんだ!」

 「そりゃ祭が終わるまでだろうよ!」


 更新され続ける情報に右往左往しながら、職員たちは竜の行動を監視し続ける。

 といっても、所詮状況証拠(魔力の動き)から導き出される推論を見るだけに過ぎない、仮初の『監視』だが。


 竜喜祭。それがこの時期に開催されるのは訳がある。

 それは、その名の通り、竜の機嫌によるものだ。


 この、すっかり春めいてきた季節、竜は何故か機嫌が良くなる。

 そんなこともあるだろうと思うかもしれないが、その程度が異常なのだ。


 なんでも急に暴れたがるとか、饒舌になるとか、普段の厳しい性格からはとても考えられないような言動を繰り返すらしい。

 勿論、その危険性故に実際に竜と対話をして確かめたものはいないが、伝承にそう書かれているのだ。


 曰く、『我らが郷の故き友が、ある日突然郷へ下りてきた。巫女が何故か、と問うと、竜はあまりの興奮故だ、と答えた』のだとか。

 DIMAが設置される前から存在する古い伝承のため、事実かどうかは確かめようがないが、実際その時の跡が幾つか山には残っている。

 そのことから、国はおそらく事実であろうと結論づけた。


 そんなわけで、この祭りはそんな竜に楽しいお祭りを見せ、楽しい気持ちになって満足してもらおう、というのが興りとなっているのだ。


 ただの伝承だが、しかし実際この時期になると竜は異様に昂り上機嫌になるため、安全維持のために巫女や職員はほとんど連勤をさせられている。

 なぜそうなるのかというのは、魔力波に周期があることの証明になるのでは、火山活動に周期性があるのでは、等色々言われているがよくわかっていない。

 それに、わかったとしてもどうにもならないだろう。


 そして、そんなよくわからない不可思議な脅威よりも、職員にとってはより身近な脅威の方が恐ろしいわけで──────


 「はぁ、またですか。竜様にももう少し落ち着きというものがあればよかったですのにねぇ……」


 目下最大の脅威は、計器の前で青筋を浮かべる巫女なのだった。


 ◇◇◇


 「モノト様、敬語崩れてますよー」


 半分死んだ目で、スカロウはモノトに注意する。今日で三度目だ。


 現在二週間連続勤務で、一日中この施設に引き篭り、日光を浴びるのはトイレに行くまでの廊下だけ、というとんでもない生活を送っている二人。

 児相が聞いたら卒倒しそうな仕事を続ける二人のその瞳にはもはや生気が感じられず、巫女だというのに、街ゆく人々が見たら屍体(アンデッド)か何かだと勘違いされてしまいそうだ。


 それでも、お偉いさんや町人と会う時だけは通常を装えるのは流石である。


 「あゝ、スカロウ。どうして私たちはここにいるのでしょうか。いったいこんな仕事を私たちに課すこの街は、本当に守るべきものなのでしょうか」


 すっかり心がイカれ始めたモノトが、ついにとんでもないことを言い始めた。

 同じくイカれ始めていたスカロウは一瞬同意しかけるものの、しかしモノトには冗談でなく街を壊せる力があることを彼は思い出す。


 もしここで自分が同意すれば、大義名分を得たモノトが本当に発狂し、全てを壊す怪物になる可能性もゼロじゃない。

 流石にそれはまずいとなんとか理性を働かせると、スカロウはモノトに考えを改めるよう注意する。


 「隣の家の奥さんにはいつもお野菜をいただいてますし、近所の学園の子供達はモノト様が大好きじゃありませんか。それは守るべきものと言えるのでは?」


 モノトはしばらく考え込むと、ただ一言、「確かに」と呟いた。

 そして、それからすっと俯くと、スカロウだけに聞こえるようそっと囁く。


 「……人質取られた気分」


 「同意します……」


 結局、より気分は沈むのみで何も状況は改善されないのだが、そうでもしないと今すぐにでも発狂して、DIMAから脱走してしまう。

 何も苦しんでいるのは自分らだけではない、そう言った仲間意識と連帯感で、二人はなんとか正気をとどめていた。


 ◇◇◇


 「とりあえず、今日のところはこれで大丈夫ですかね」


 竜が眠った時に発生する魔力を観測すると、DIMAの職員の仕事はひとまず終了する。

 といっても休暇があるわけでもなく、明日のために眠る時間が来たというだけのことなのだが。


 「それじゃあ、おやすみ……」


 ちょっと動くだけでも膨大なエネルギーと魔力が発生する竜。

 その監視を一日中し続けるというのは、やはり職員の神経を大いにすり減らし、疲弊させる。

 故に、職員たちは皆泥のように熟睡するのだ。


 明日、また始まる地獄のために。




 ──────しかし、当然例外というものも存在する。

 いや、厳密に言えば、それは『例の外』として相応しくはない。なぜなら、()()()はDIMAの職員ではないのだから。


 「スカローウ。次の予定は〜?」


 「えー、本日ご到着なさった王族の皆様へのご挨拶でーす」


 「うっわ、最悪。この状態でとか。服シワシワなのに」


 そう、竜の巫女にはまだお勤めが残っている。


 今までの仕事は、あくまでもDIMAとしての仕事。

 竜との交流のプロ故に、そこにアドバイザーとしていただけに過ぎない。


 そして、ここからは本業だ。

 竜の巫女であるモノトには、当然竜喜祭関係の仕事が大量にある。


 例えば開催宣言であったり、形式とは言え儀式をやったりなど、さまざまな仕事が存在する。

 そして、一応この祭りの主宰でもあるため王族や商家へ挨拶回りも必要なのだ。


 因みに、伝承や儀式を絶やさないように語り継いでいくというのも、竜の巫女としての使命であり、この祭りは、実はそう言った側面も含んでいたりする。


 「あー、もう! 巫女の負担デカすぎー!!!!」


 モノトの必死の叫びは、しかし誰にも届くことはなかった。

この世界に労基はないです。

児相はあるのに、何故か労基も児童労働禁止法もないです。

てか、あったら王宮は一瞬で解体されます。

紳士ルールでなんとかしてください。




まさかの二日連続投稿。

でもこれでようやく遅れを取り戻せただけという事実。

明後日はちゃんと間に合うようにします。はい。

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