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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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粘着質なお巡り

ちょっとした小話または伏線。


 『アデュー、面白かったよ』


 人の形をした()が、そう言って後ろ手に手を振る。

 私は、まるで自分が逃げられると思っているその口ぶりに腹が立った。


 ここまで追いかけさせておいて、逃したなどと報告できるものか。

 決して逃がすまい、そう思って相手を注意深く観察する。


 右か左か、前か後ろか、それとも目眩しか。

 相手がどんな行動を取ろうとも必ず対処できるよう、警戒を固めた。

 考えうる全ての場合を想像して考える(シミュレートする)。そして、


 (よし、行ける──────)


 私はそう確信した。

 相手は魔法使いとは言え、ああやって姿を隠しながら戦うのは困難だ。

 本来魔法は同時に使うのは難しいものなのだ。少なくとも一般人(アマチュア)では。

 それを、すでに二つも重ねている。相当無理をしているはずだ。


 (流石に魔法無しのやつに負けるほど、私は弱くないぞ、泥棒!)


 私は不敵に微笑むと、一気に距離を詰める。

 この追いかけっこ(チェイス)で既につきかけた体力に火をつけて。


 さあ、いざ尋常にお縄に─────


 ゴオッ!


 突如として、突風が吹いた。

 あまりの風力に、私は顔を手で遮ってしまう。


 しかし、その刹那、私が目を閉じる瞬間、私はとんでもないものを目にした。


 「と、飛んでいる!?」


 顔を覆うのを一瞬で中断し、私は空を見上げた。


 そこには、この夜の空よりもさらに暗い、闇そのものであるかのような靄が、まるでそこだけ切り取ったかのようにぽつんと浮かんでいる。

 しかし、それも一瞬のことで、すぐに彼方へと飛び去ってしまった。


 その光景に、そしてその状況に、私は息を呑む。

 それと同時に、私はこうも思った。


 まさか、ここまでのやつだったとは……、と。


 魔法の三重発動。それも、浮遊という高度な魔法を。

 これでは、それが本業のもの(プロウィザード)と変わらないではないか。


 まさか、そこまでの人材が素人(アマ)に……いや、裏稼業としてやってる連中か?

 それか、もしかすると宮廷の奴らやもしれん。

 それならば浮遊という高度な魔法が使えるのも納得だ。


 しかし、だとすると面倒なことになるしな……上と相談しなくては。


 ……ん? でも、浮遊の魔法はもっとふわっとしたような感じだったはずでは?

 まさか、新術だろうか? それとも神術?


 少し気になったが、自分は一介の捜査官にすぎない。

 餅は餅屋なので、考えるのはやめることにした。後で魔法科に伝えとこう。


 まあ、いずれにせよ実力者だったのは違いない、か。


 もし戦っていたら、ここに斃れていたのはどっちだったのやら。

 そんな自虐的な思考とともに、私はただ、星空を見上げていた。


 ◇◇◇


 「つまり、取り戻せなかったのですね。お金は」


 獣の皮に植物の糸で作った布を合わせるという前衛的(よくわからない)ファッションに身を包んだ貴婦人が、ため息をついた。


 その彼女の前で、私は先ほどまで着て汚れた服を着替えた状態で立っている。

 彼女は、私が今仕えている貴族の第一夫人。今回の被害者だ。

 つまり、今私はことの顛末を報告しにきているのである。


 貴族────それも彼女ほどの高位な位の─────と直接話すことなど、私も長くこの仕事をしていて初めて故に、どうしても緊張してしまう。


 「申し訳ありません、凄腕の魔法使いでして、取り逃しました」


 私は一歩前に出ると、そう言って深くお辞儀をする。

 ひとつ一つの所作を、何時ぞや見たマナー本を思い出しながら丁寧にこなす。


 万が一にも夫人の機嫌を損ねれば、立場の弱い使用人など即解雇だからだ。


 ……正直謝る必要もないと思う(・・・・・・・・・・)が、まあ今は仕事中だし仕方がない。


 「顔をあげなさい。構いません。端金ですから」


 夫人は扇子で顔を隠しながら、ぶっきらぼうにそう答えた。

 普段は常に礼儀正しくいる夫人にしては珍しく、心穏やかではないようである。


 それにしても、確かに決して高いわけではないとは言え、あれほどの『札束』を端金とは、一体どれ程溜め込んでいるのやら。

 一瞬心の中に昏い感情がよぎったが、それはそっと中にしまっておいた。


 「しかし、私は一応ここの守りを仰せつかった身です。今回の不祥事、深くお詫びいたします」


 私は夫人の言った通り顔をあげると、そのままもう一度謝った。


 すると、夫人はどこか焦った様子で頷くと、私に話しかけてくる。

 「そう思うのは自由だけれどね。……それより────」


 「はい、今回のことは、必ず内密にいたします」


 私がそう答えると、夫人は少し驚いたようだったが、すぐに表情を戻して小さく頷いた。


 「ええ、我が家は物を盗みやすいなどと思われたら一家の恥。このような不祥事は、誰にも知られてはならないのです。……お若いのに、勉強熱心なのね」

 

 夫人のその言葉は、どこか私を試すようなものが感じられた。

 いったいそれが何を表しているのかは、大方予想はつくが……もう手遅れだ。


 「それでは、夫人。失礼いたします」


 「ええ、ごきげんよう」


 私は静かに振り向くと、其の儘もう夫人を見ることなく部屋を出た。


 ◇◇◇


 エドワード所長へ


 ○月○日の報告。

 ホシの家に泥棒が入る。標的は金品と思われる。

 泥棒はホシの部屋に侵入後、隠し扉を発見。例の証拠を盗る。

 本官も気付き、対応したが取り逃した。

 逃亡の際、変声して黒い靄を纏っていたため容姿、年齢、性別不明。

 ただ、空を飛ぶような魔法を使った。後日魔法課と要調査。

 手がかりがなく、捜索は困難を極めると思われる。


 今回の事件により明日予定の家宅捜査計画頓挫。ホシの不正金は残っていない。

 魔法使いの実力の高さからホシの差金の可能性がある。要調査。

 また、念の為宮魔達の方にも探りを求める。


 備考欄

 潜入捜査の終了を申請。

 捜査は一からとなった。ここにいる必要はないと思われる。

 不祥事直後なので、責任を取ることが可能。


 以上


 パトレア


 ◇


 パトレア殿へ


 申請を許可。

 報告ご苦労。『身支度』を整えたのち、署へ向かえ。


 以上


 エドワード


 ◇◇◇


 「失礼します、所長」


 黒い木製のドアが、ゆっくりと開かれる。

 中へ入れば、そこには一人の男が座っている。


 「潜入捜査官パトレア、ただいま帰りました」


 部屋へと入ってきた男、パトレアは姿勢を正し、敬礼をする。

 そこには、先ほどまでの緩さなどカケラも残っていない。


 「ああ、ご苦労。楽にしたまえ」


 大きく『所長 エドワード=ヴィジールム』と掘られたプレートが置かれる机。

 その奥に鎮座する男、エドワードは先ほどより少し声のトーンを下げてそう指示した。


 パトレアは一瞬躊躇ったが、命令なので素直に従う。

 こういう時無視すると、かえって怒ることを知っているからだ。


 「有難うございます。……すいません、しくりました。まさか泥棒があんな簡単にアレ(・・)を見つけるとは思ってなかったです」


 パトレアは、とても申し訳なさそうに頭を下げる。

 夫人に対しての、形だけのものとは大違いである。


 それを見て、エドワードは大笑いをした。


 「いいさ! 俺も全く予想してなかった。予定を決めた俺のミスだ」


 こちらも、先程の威厳ある様子とは打って変わって明るい感じである。


 「いや、そんな……普通に侵入を許したのは私ですから……」


 パトレアは遠慮げにそのことばを否定する。


 それからしばらく談笑した後、エドワードは急に雰囲気を戻し、話し始めた。


 「お前、最近動き始めてる裏組織のこと、どれくらい調べてる?」


 急に元に戻られて驚いていたが、しかしすぐに調子を戻すと、パトレアは返事をする。


 「夫人のところに三年はいましたから、少し情報が浅いでしょうが、できるだけのことは。一応今話題なのは……○×窃盗団とかいうところですよね?」


 「ああそうだ。貴族からでかく物を盗んでは、それをコレクションしたり売り付けたり、よく目的の分からん変人どもだ」


 「……それが、どうかしましたか?」


 沈黙。


 「……わかるだろ?」


 エドワードはとても大きな笑みを浮かべた。


 「………私、休暇っていつ頃に……?」


 「潜入先でとらせてもらえんだろ、多分」


 パトレアの顔は引き攣った。

( ^ o ^) / ←パトレアの顔


かわいそうだなぁ。

ちなみにグリムが金を見つけたのはマジの偶然。ラッキー!


あとこいつらは今考えた。

多分次の章から絡んでくる。今回はない。



追記

貴族『パトリック=パトレア』の予定でしたが、庶民に変更することにしました。

それに伴って、名前を「パトレア」にします。ご迷惑をおかけしました。

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