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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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暗い国の住民


 一時間が経過しました。

 今現在、目的のものは未だ発見できていません。

 ぶっちゃけ寒いです。


 くちっ、と、限りなく小さな音でくしゃみをすると、俺はブルリと体を震わせた。

 目の前の小さな人形(氷製)を一列に並べ乍ら、俺は馬車の監視を続けている。


 ……え? この人形なんだよって?


 えー、俺は今あまりに暇すぎて、ちょっとした氷の彫刻を魔法で作って遊んでいます。軽い魔法の練習にもなるし、いいアイディアだと思う。


 ────あ、これちょっと形悪いな、少し削ろっかなぁ。

 よいしょ、よいしょ……うん、かっこよくなったな!


 ………こういうことをしてるから寒いんでしょうか。


 いやぁ、でもこれ以外にやることないし、炎とか出すと流石に目立つし、風は無闇に起こしたら不自然だしで、氷の人形作りくらいしかやることないんだよねぇ。

 土? 手が汚れんじゃん。


 あとやることっつったら、口から雪吹いて、雪女ごっことか?

 いやつまんな〜。しかも実際は口から出してんじゃなくて、口の前で魔素を雪に変換するだけっていうしょぼいトリックだし。


 くっそ〜、放置ゲーは別にやることがあるから、許されんだよ!

 それしかない時にやる放置ゲーはただの苦痛だぞ!


 月に吠えたい衝動を必死に抑えて、俺はじっと馬車を見つめる。

 人間、大切なのは忍耐だよ忍耐。不撓の心が必要なんだ。


 (数分後)


 「………」


 (その数分後)


 「………………」


 (さらにその数分後)


 「…………………………」


 (さらにさr「ピギィぃぃぃぃぃぃ!!!!」


 来たぞぉぉぉぉ!!!!

 遂に、遂に『ヤツ』が動いた!


 クックックッ、俺が発狂するフラグだと思ったかバカめ!

 残念、勝利の雄叫びで〜す。フラグはおるもので〜す。

 今回は俺の粘り勝ち、アイアムアウィナー!!


 「はーっはっはっは!」


 暗闇が広がる世界に、太陽のような笑いが響く。

 尚俺の高笑いは、俺の魔法によって掻き消され、誰にも聞こえなかった。

 てか普通に声出てたわ。あぶね。


 ◇◇◇


 俺は、そこそこに塗装された道、そこそこに高い馬、そこそこに上手い技術、のそこそこ三拍子が揃ったような馬車を引くそこそこの行者、ライナス。

 今日も今日とてそこそこな客を探し夜を駆けている。

 まあ駆けるのは俺じゃなくて馬なんだけど。


 「折角この区画独占したんだから、なるべく客を乗せてぇなぁ」


 ぽつりと呟いた()()()は、しかし誰も聞くことなく闇へと溶けていく。


 冷たい空気が体を凍てつかせるように、切り刻むように俺の体を包んでいる。


 心の芯まで冷やされて、気づけば機械のようになっているかもしれないな。


 寒さのせいか、よくわからない妄想が頭に浮かんできてしまう。

 この前、しけた(ツラ)だと幸運が逃げていくという話を友達から聞いたので、勉めて明るくいようと思ってはいるものの、やはりこの気温だと厳しいものがある。


 本当、どうしてこの状況で笑顔になれるんだか……。

 いつも隣で話しかけてくる友達(バカ)の顔を思い浮かべながら、俺はぱしんと鞭を打った。


 叩かれた馬はよく訓練された兵隊のように一瞬で方向転換すると、またまっすぐ走っていく。

 その様子があまりに生物味を感じさせないので、俺はさっきの妄言はやはり正しかったのでは、などと考えてしまった。



 ここから先はしばらくまっすぐなので、言うなれば休憩タイムだ。

 勿論いつ馬が事故るかわからないので、気を抜くわけにはいかないが。


 「はーあ、一度きりの人生、折角ならこんな仕事じゃなくて、もっといいことしたかったぜ。例えば朝に馬車を運転するとかさ」


 自分で道を選んだ癖に、自分が不甲斐ないからこんな事をしている癖に、それでも環境を呪って、必死に責任転嫁して、ありもしない『もしも』を妄想する。

 だが、それもすぐに虚しくなって、結局すぐにやめる。


 できることなら、こんな夜の汚れ仕事なんてしたくなかったさ。

 それでも、仕方ないじゃないか。これが一番稼げるんだから。

 こんな無能の、唯一の特技を活かせる仕事なんだから。


 一生懸命、自分に言い聞かせ(言い訳す)る。


 自分を正当化する。


 自分をペテンにかける。


 そして、今日も一人納得するのだ。


 ああ、この仕事やっててよかった、と。


 「ふふっ、ふっふっふっ! クーっクックック」


 そんな自分が可笑しくて、ああいや誇らしくて、か。つい、笑いが溢れる。


 横を見れば、時々交差点から横の通りを走る馬車が見える。

 あいつらも俺と同じなんだ、そう考えると少しだけ気が楽になる。


 同じ、夜の人間。同じ時間(くに)に住む奴ら。

 俺は、一人じゃない。それが、唯一の慰めだった。


 「そうさ、今日はこんなにも暗い、昏い夜なんだ。まさに、俺たちの時間じゃねぇか。何を恐れることがある! 俺たちは今、生きてるんだから!………」


 空を見上げれば、月が雲に隠れて、夜を照らす光を僅かに衰減させてくれている。

 仕事を始める前にはあった星々も、どうやら一緒に隠れたらしい。


 今、この街を照らすのは魔法の灯りだけ。

 人間が作った、偽物だけ。


 そう、もはや夜とは獣のものではない。人のものなのだ。

 この、夜を生きる者(おれたち)の。


 自然の明かりは何もなく、何も俺たちを照らさない。

 誰も、俺たちを邪魔しない。否定しない。

 昼間、腹が立つほどに照り付けて、俺たちの眠りを邪魔する(目を覚まさせる)太陽は沈んでる。


 今日は全く気分がいい(悪い)

 だって、こんなにも素敵(最悪)な時間を生きられているのだから。

 こんなにも明るい(くらい)夜を、生きているのだから。



 「っと、そろそろ曲がり角か」


 長い直線が終わる。残念ながらもう休憩は終了らしい。


 そろそろ、ここを回って隣の通りへ行かなくては。


 そう思って前を見れば、そこにふと不自然な靄があることに気づく。


 「あ? なんだ、あの……黒い霧は」


 俺はつい気になって、それをよく見ようと馬車のスピードを落とした。

 少しずつ、()()に接近していく。


 ちょっとずつ、ちょっとずつ……。


 『ああ、態々近寄ってくれてどうも。私は君のお客さんだよ』


 突然、靄から声がした。さまざまな声が重なったような、汚い声が。

 その声は、男とも女とも子供とも取れる、不思議なものだった。

 だが、およそ自然な人のものとは思えない。そんな声。


 そして、俺はそれが魔法なのだ、と気づく。

 何をどうやってるか知らないが、変声の魔法を使っているらしい。


 魔法は学園の頃からどうも苦手だ。

 理論を聞いても何を言っているのかサッパリだからな。


 正直あまりお近づきになりたいタイプではない。

 全身靄で隠して、しかも夜の街に居るなんて、完全にヤバいやつである。

 今までもこういう手合いはいたが、ここまで徹底した変装は初めてだ。


 俺の勘的には、関わんのは『凶』なんだがなぁ……。


 しかし、もし本当に客だというのなら、馬車に乗せるのが義務になる。

 俺は相手の言葉を信用し、馬車を停めた。

 まあ違うとは思うが、一縷の望みをかけて、俺は普通に質問する。


 「えーと、それで、何方まで──────」


 『ああ、そっちじゃないよ。()()の方さ」



 まあ、だよなぁ……。だと思ってたけど、正直そうあってほしくなかったよ。


 しかし、もうこいつが「客」なのは確定だ。

 それならば、しっかりとしたおもてなしが必要だろう。

 こんな仕事でも多少は持ってる誇りってやつを、完全には失わぬ為に。


 俺はそいつを一瞥すると地面に降り、そして丁寧に扉を開ける。

 それからスムーズに一礼した後、こうつづけた。

 



 「ようこそ、()()()()『キャリッジ』へ。ご依頼をお伺いいたしましょう」


 汚く卑しい世界だが、いや、だからこそ、礼儀正しく迎えよう。

 裏社会へようこそ、依頼人(マジェスティ)。どんな望みもお聞きいたしましょう。



 闇に紛れて蠢く影が、少しだけ、笑ったように見えた。

闇に棲むのは黒幕だけではないのです。


ってことで新キャラです。結構おっさんな感じ。

結構設定が浅い、勢いで作ったキャラ。


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