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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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カードを揃えろ


 さて、レインを連れて行く方法は見つけた。

 だが、この為には結構入念な準備がいる。

 いろいろ道に仕掛けたり、それを偽装したり、裏であんなものやこんなものをちょいと操作したり。

 ああいや、実際そんなにやらなきゃいけないのかは知らんけど。


 いやー、正直めんどいっす。できることならやりたくね〜……。 

 だけど、悲しいことにやるしかねぇんだよなぁ。観念しよう………。


 仕方がないから、という、どうにも後ろ向きな理由ではあるものの、思いついてしまった以上俺はそれを必ずやり遂げる、と強く決意を固める。

 主役がいない(イベント)など前代未聞。癪だが、今回はお姫様を案内する騎士(ナイト)様として動いてやろうではないか。


 「一つ貸しだぞ、レイン」

 届くわけもないのに、俺はそんな軽口をそっとつぶやいた。


 てなわけで、早速仕込んでいこう……といきたいところだが、残念ながらそうは問屋が卸さない。

 仕込む前に、必要なものがあるのだ。


 それは……情報。

 これから何を仕掛けようにも、やはりこれがいる。

 トラップ、仕掛け、偽装、何をするにしてもこれがなければ始まらないし、何をどう仕掛ければいいかもわからない。

 罠という『役』を完成させるためのカード、それが情報なのだ。


 そんなわけで、今俺はその情報(カード)を集めるべく、夜の街を駆けているわけだ。


 「さぁて、御目当ての場所はっ、と、見えてきたな」


 源義経もびっくりの『百屋根渡』でさっさと街を移動すると、どうやら目的地が見えてきたらしい。夜の静まりかえった街には似合わないほど大勢の人が、そこ(・・)に屯っているのが分かる。

 以前にもきたが、その時より人数が減っているのはやはりその時間のせいだろう。


 彼らはただそこにいるだけで、話しているわけでもないし、まして特に何の目的もなく突っ立っているというわけでもない。

 では、いったい彼らは何をしているのか?

 それは………仕事だ。


 彼らは今、絶賛仕事中なのである。

 この夜、人が少なくなり始めるこの時間、しかしそれでも、何人かはきっと必要とする仕事。

 マイナーな仕事なので、こうして夜にも外に出る物好きか、ブラック企業の社畜でもないと、その職の存在すら知らずにその人生が終わってしまうことだろう。


 とりあえず、俺は彼らに気付かれないようにどこか身を隠せそうな場所を探した。

 キョロキョロと周りを見渡せば、手頃な暗い場所を発見する。

 すぐにそこに移動すると、そこでもいい位置を微調整して…………。


 「ふぅ、ここが一番よく見えるかな」


 俺は、彼らが集まる場所の丁度背後に当たる建物の屋根に身を潜めた。

 月明かりが丁度彼らを照らしていて、一人一人の、そしてその『馬』の位置をはっきりと見ることができる。


 そう、彼らの仕事は馬車の行者だ。しかも、夜間専用の。


 こんな時間に馬車なんて、どうして? そう思うのも無理はない。

 たしかにこの時間、普通客などいない。しかも昼夜逆転した生活を送らざるを得ない仕事だ。恐らく普通はやらない仕事だろう。


 しかし、思い出して欲しい。ここは『普通』じゃない世界なのだ。


 ここは中世だ。

 いまだに神を信じているし、世界は球体だなんて言っても誰も信じない。


 だが、たった一つのイレギュラーがある。魔法だ。

 魔法によって文明は中途半端に発達し、本来辿るはずであった正当な道を所々すっ飛ばして社会を形成してしまっている。

 そんな社会で、大きく元の世界と違う歪な点をあげるなら、それは『灯』だろう。


 遥か原初の時代、僅かとはいえ闇を葬る(希望)であったはずの火。

 人間の固有能力(アイデンティティ)である火を使うということ。

 そんな火が最も人類に与えた影響は、恐らく「光を生む」ことだろう。


 元の世界では、闇を打ち破る光を作る為に、多くの人間の創意工夫、努力があった。

 実際、夜を街頭が照らすなどという光景は、日本では明治ごろまで見ることはできない。


 しかし、この世界は違う。


 この世界、火を起こすことなど魔法を使えば簡単にできる。

 ちょっと魔法が使えれば猿ですら起こすことができるのだ。

 聞くところによると、一部の人型の魔物も火を使えるらしい。


 そのためか、この世界は中世であるにもかかわらず夜を恐れない。

 神も物怪も信じているくせに、彼らを畏れることがない。


 光と灯に満ち満ちた街には、現代ほどではないが人がいる。必ずいる。

 それ故に、たとえ少ない需要でも、それを満たす仕事(供給)も、必ずあるのである。


 まあ長々と語ったが、要するにこの世界、夜も結構働けるのだ。

 明るさで言ったらちょっと田舎の町くらいである。


 てなわけで、夜間専用馬車なんてものがあっても不思議ではないわけだ。


 因みに、なぜ俺がこのことを知っているのかというと、勿論外で修行しているから、というのもあるのだが、父が使っているから、というのもある。


 父は家に帰ってくるのが夜なのだが、その帰りにはどうやら馬車を使っているらしい。

 感覚で言うとタクシーみたいなものなのかな?


 今回この作戦を思いついた理由とは関係………なくはないが、理由ではない。

 まあ、その情報は使うんですけど。


 しかし、今日はその情報を使うことはない。

 今日はあくまで計画のための情報収集。まだカードは必要ない。

 今いるのは時間(コイン)だけである。


 さて、それでは()()()()()()()()()()まで、少しゆっくりさせてもらうとしましょうか。


 そう思いながら、俺は魔法の練習をするのだった。









 イテッ、氷冷っ。


 魔法しくったわ。すげぇ寒い。今冬だし余計に。


ジャンパーがなければ即死だった…………。

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