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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第三章 それは、竜災に非ず
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招待状はゴミ箱へ

ちょっと遅くなりました。ごめんなさい。


 「ふーん、そんなのがあるんだね」

 俺の話を聞くなり、レインが面白そうに笑った。

 その笑顔は綺麗で、とても可愛らしく、ここが教室の中の喧騒から隔絶した世界かのように感じられるほどだ。

 まったく、主人公というのは実にチートだな、と俺は心内で毒づいた。


 今、俺は学園にいる。

 昨日祭りを荒らすと決めたのだから、早速やることはやらなければならない。

 とりあえず、今できることは役者を揃えることだと思った俺は、すぐにレインへ竜喜祭の話をしたのだ。

 声色から察するに、どうやら興味は持ってもらえたようである。

 子供は興味ないことを聞く時ほんとに目が死んでるからな。


 「そう、それで、僕たちは家族でそこに行くことにしたんだ。ちょっと遠いらしいけど、お祭りっていうのは行ったことがないから楽しみだね」


 レインが興味を持ったことを確認すると、俺は捲し立てるようにそのことについて話していく。

 ちょっと自慢のように話せば、きっとレインは羨むことだろう。そうすれば、きっとすぐにでも──────


 「それ、わたしも行きたいなぁ」

 そう言って、レインはしょんぼりとした様子で俯いた。


 そら来た。うーん、子供というのは扱いやすいからいい。

 それに、行動力が無駄にあるのも好きだ。

 今日家に帰ったら、きっと駄々を捏ねて祭りへ行く約束を取り付けてくるだろう。


 これで、役者一人目だ。と言っても、それ以外の人は来るのが確定してるんだけど。毎回王族や商家は来るのが恒例だと父も言っていたし。


 さて、とりあえず場は整ったし次は道具を………




 次の日。


 「ごめんね、おまつりは行けないって、おかあさんが」


 は?


 ◇◇◇


 え、んー、え?

 ちょ、マジで言ってんのか? これマジで? why?


 と、とりま落ち着け。これくらい想定内じゃないか。(想定外)

 こういう場合のためにレインに話をしたんだろう?


 まずは原因だ。これがわからないと対処のしようがない。

 ちゃんとレインの話を聞いた上で解決策を考えよう。


 よし、心を落ち着けて、しっかりグリムっぽく………


 「へぇ、残念だなぁ。どうしてダメなの?」


 肩をすくめながら、俺はレインの目をしっかりと見て質問する。

 すると、レインは昨日のことを思い出すように視線を落とすと、首を捻りながらも、確かな理由を答えてくれた。


 「うーんと、お金がかかるし、いそがしいからつれてけないって」


 チッ、子供のためにちょっとくらい金出せよ毒親がぁ。(問題発言)まったく、レインがかわいそうだぜ。


 しっかし、どうしたもんかね、これ。

 金は確かに、あんま考えてなかったな。結構いい服売ってたし、持ってるもんだと思ってた。まさか職人の腕が良かったのか?

 クソッ、ウチは親がいい職持ってるしなぁ。気にしなくていいんだが。


 「そっか、一緒に行けたら素敵だと思ってたんだけどな」


 少し皮肉げに放たれたその言葉を聞くと、レインは余計にしょんぼりとした様子で俯いてしまった。

 流石にちょっと意地悪だったかと、俺も少し反省する。


 ……そういえば、昨日俯いたのは羨ましいからでなく、こうなることが分かっていたからなのだろうか。勘の鋭いレインのことだ、ありえないことじゃない。


 思ったよりも面倒な感じになってきた案件に、俺はこっそり溜息をつくのだった。


 ◇◇◇


 目下、目標はレインを祭りに誘うことで決定だ。それがないと準備も何もないだろうからな。

 これからは夜時間含めて、全てそれに費やすとしよう。

 大切なイベント、必ず成功させなければ。


 さて、それでどうするのかだが………どうする?


 正直言って具体的な案はない。

 強いて言えばお金の解決法だが……これもあの家が貯金に回すと判断すれば即頓挫だ。それに、レインに気づかれる可能性も高い。

 というか、難しくしている理由は、この『グリマニア』というキャラのせいでもあるのだ。

 俺がこれからするあらゆる干渉は、なるべくグリマニアがしそうなものにする必要がある。そうでなければ、ゲーム内と矛盾が生じるからだ。


 うーむ、ゲームでグリムは一体何をしてこの問題を解決したのだろうか。


 必死に考えるが、しかし出てくる案はどれもまったくグリムにメリットのないものばかり。それは流石にグリムもやらないだろう。


 ではどうすればグリムがやりそうなことができるだろう?

 何か、自分勝手に振る舞った結果自然にレインが祭りに行くこと……。

 あの家の物を適当に壊せば一時的にすることがなくなる、とか? いやいや、いくらなんでも都合が良すぎるぞ。大体、グリマニアらしくない。


 では特に何か悪事を働くとかではなく、普通に「善いグリム」としての振る舞いの結果だろうか?

 例えばお金をだしてあげるとか……。

 しかし、それは流石にあからさますぎてレインに気がつかれるかも……いや、贅沢を言っている場合じゃないんだが。

 それにお金を出すと言ってもそれは少し過干渉というか……。


 ………まずいな、思考がドツボにハマっている。何もかも悪いような気がしてきたぞ。


 こういう時は同じことばかり考えて、答えが出ないことが殆どだ。


 そう考えた俺は、仕方なしに、今日のところは保留の案件とした。

 また明日考え直そう、というわけだ。そうすれば、何か新鮮なアイディアがでてくるやもしれん。


 ◇◇◇


 日も傾いてきて、石でできた家の並ぶ街が、まるで煉瓦でできているかのように紅く染まっている。

 その中の大通り、一人の少年が寂しげに道を歩いていた。


 「はぁ、結局何も出てこなかったなぁ」


 あれから少し、時間を開けて何度か考えてはみたものの、どれもこれも良いアイディアとは思えないものばかりが浮かんでくる。

 勿論、何もせずとも自分でレインが解決する、という可能性もあるにはあるのだが、それを頼りにするには、とてもじゃないが起こる確率が低すぎる。


 「やはりどうしても、リセットがないのはきついなぁ」


 つい、妄想にも近い愚痴がこぼれてしまう。

 リセットがないなんて、元の世界(あっち)でもそうだった、当たり前のことだ。

 そんなものを使える、ゲームの中がおかしいのである。


 しかしそれでも、ない物を欲しがるのが人の(さが)。やはり現実にもあって欲しい物である。


 ……いや、ここまでくるとただの現実逃避だな。やめよう。


 自分が弱気になっていることに気づいてしまい、俺は余計にテンションが下がってしまった。


 強くなる、と決めたのに、実際強いのに、少女一人を隣町に連れて行けないとは、実に皮肉な物である。

 そんなふうに俺は自嘲気味に笑った。


 やはり、今日は保留にするのが一番良いのだろうか。


 若干諦めにも近い、ただ結論を先延ばしにするだけという案だが、しかしそれも致し方ないのではないか。どうしようもないのだから────。

 そう言った思いが、少しずつ心の中に首をもたげてきた。


 そうして歩いていると、急に目の中に赤い光が飛び込んできた。

 先ほどまで家々に遮られていた為に見えていなかった太陽が、今、丁度その隙間から顔をのぞかせたようだ。

 見れば、太陽はますます紅さを増し、まるで秋の紅葉のように照り赫いている。


 美しい、まさしく夕焼け、と言った景色に、俺は見惚れてしまう。


 そんなふうにして歩いていたからだろうか。

 俺は、普段なら当然気がつくそれ(・・)に、気がつかなかった。


 ヒヒーン……


 ふっと、すぐ前でした馬の鳴き声で、俺は俄かに我に帰る。


 「おう! 坊主、ちゃんと前みろや! ったく」


 どうやら、ボケッとしているうちに曲がり角に差し掛かっていたようだ。

 碌に確認もせず飛び出したから、馬車と衝突しかけたらしい。


 「あっと、す、すみません」


 とりあえず急いで謝っておく。

 本当に、今回はこちらの過失だ。申し訳ない。


 「ああ、じゃあこれからは気ぃつけろよー!」


 行者は怒ったような目つきでこちらを一瞥した後、すぐに興味をなくしたかのように走り去っていった。


 まったく、不注意ったらありゃしない。

 相当心を囚われていたんだなぁ。しっかりしろ、俺。


 改めて気合を入れようと、俺は自分の両頬を手でパチンと叩く。


 「……あ」


 衝撃のせいか、今の経験で頭が冴えたか。

 いずれにしても、今、レインを連れて行く方法を思いついた。


 グリムがやっても自然な、それでいて、レインの家に時間がない、という問題を簡単にクリアする方法を。

 

 



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それでは、また。

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