表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第二章 よく言えば日常回、悪く言えば前座
31/125

時は流れて

サクッと時間を飛ばすよ。どうせこれは前座だしね。

キング・クリムゾン!


 「──────で、あるからして、皆さんは───」


 長い。いや、ほんとに。


 自分は一応中身は大人である。本能的なところは肉体に引っ張られているとは言え、ある程度の理不尽に目を瞑る(社会人必須スキル)は身についているはずだ。

 だというのに、長い。この校長の話はあまりに長すぎる。


 チラと時計を見れば、既に針ははじまった時の位置から随分と遠くへ移動してしまっていた。

 一体どれほど待てばいいのかと、俺は呆れてしまう。


 もう四回目になるが、一向に慣れないな……


 ポツリ、と誰にも聞こえない様に口だけを動かしてそうつぶやく。

 今年で幼学園(2~5歳)から小学園(6~12歳)になり、心機一転と思っていた気分が早速粉々にされた。


 正直毎年のことなのでもう余裕だろうとたかを括っていたが、なんと小学園に上がり学年の幅が増えたせいか、スピーチが例年よりもさらに長いのだ。

 幼学園でも話しているはずなのに、よくもまあ連日この長さで語れるものだと感心してしまう。

 情熱がなせる技なのかもしれないが、子供のためにももう少しクールダウンして欲しいものだ。


 そんな感じで新年早々最悪の気分だが、不幸中の幸いか、今日は始業式であるためにこの式典が終わればすぐに帰宅できるのだ。さっさと帰って父と魔法の特訓をしよう、と俺は自分を奮い立たせる。


 などと考え事をしていると、どうやらやっと校長の話も終わりの様で、もう締めの言葉に入っている。

 それも最後の一延(ひとの)びでまだ長いのだが、先ほどまでずっと待たされている俺にとっては大した長さではない。


 全てが終わり、校長が壇上から離れたところで、俺はやっと一息ついたのだった。


 ◇◇◇


 「ただいまー」


 俺は子供にはそこそこ疲れる距離を自分で歩き、遂に玄関をくぐった。

 今年からは大きくなったのだから自分一人で行けと言われた為、俺は今登下校は一人で行っている。


 正直いって、これが結構しんどい。

 もともとあまり運動をする方ではないというのもあるが、やはり道が長いのだ。

 勿論、これは運動不足にならないためのとても良い運動ではあるのだが、やはりインドア派の俺としてはキツいものがある。


 大体大して治安がいい訳でもない癖になぜ子供を歩かせるんだって話なんだよいやそりゃ特訓で少しは魔法使えるけどさこれはそういうことじゃなくて(以下略)


 そんな訳で、家に帰った時の俺はすっかり息が上がっていた。


 「あらおかえり」


 丁度お昼ご飯を作っていたところだったのか、母は一瞬扉越しに俺へと声をかけると、そのまますぐに引っ込んだ。

 別にそれに悲しくなる様な歳でもないので(六歳)、俺はそのまま洗面所へと向かう。


 この世界に菌だとかウイルスだとかいう概念があるのかは知らないが、手洗いうがいは一応マナーとしてある。

 実際のところは、現実側でそういう描写をつけたほうが健全とかいうクレームが入って、急遽つけたものらしいが。


 ジャーー…………


 蛇口を捻ると、勢いよく水が流れ出す。

 水道などないのに水が流れるというのは違和感があるが、魔法というものはつくづく便利だなと思う。


 俺はさっさと手を水流に差し出し、その手を擦り合わせる。

 一通り水で流したら、うがいをして、あとは水をしっかり止めて部屋へと戻る。

 六歳にもなると、もうこれくらいのことはできる。(三歳でもできます)


 また少し(大人)の暮らしに近づいたと実感し、俺はひっそりと感動する。

 なんだかんだ言っても、やはり子供のフリは結構正気度を削るのだ。

 


 「おかえりー、どうだった?」


 俺が部屋に戻るなり、再び母が声をかけてきた。

 俺が疲れたというと、母は笑って、あの人の話長いもんね、と同意してくれた。

 どうやら校長の話が長いのは共通認識らしい。やったね。


 そうして俺が軽い同調に心を弾ませていると、母はとんでもないことを言ってきた。


 「でもね、あの人実はライアンの友達なんだよ、知ってた?」


 「……え? そーなのー!?」


 いや、やばい。びっくりしすぎて一瞬素が出たわ。

 ふーん、『彗星』の顔ってそんなに広いのかーと、一瞬納得しかけるが、しかしそこですぐに冷静になる。


 「でも、お父さんはすごく若いよ? なのに友達なの?」


 そう、友達というには年が離れすぎているのだ。

 もし本当に『彗星』関係なのだとしたら、恩師とか、協力者とか、そういう言い方が正しいだろう。

 つまり、彼と父のつながりはきっと──────


 「そうなんだけど、街で偶然出逢ったら気があったみたいで、それ以来ずっと友達なんだって」


 ああ、やはり個人的な付き合いだ。

 俺は自分の思った通りの理由で安心した。


 いくら天才魔法使いだからといって、そんなところまでツテがあると変に父に萎縮してしまう。

 ただの友達ならば、きっとそこまで萎縮しないだろう。


 地味に家庭環境の危機だった説が俺の頭の中をよぎるが、さっと振り払う。


 それから少しの間、俺は母の料理を手伝いながら噂についてや今日あったことを適当に雑談して過ごした。

 料理をしていると、とてもいい匂いがしてくる。とっても美味しそうな匂いで、つい涎が口の中に出てきてしまう。


 そして、そろそろ完成か、という頃、父が帰ってきてくれた。


 普段は夜までなのだが、今日は年が始まってばかりなので軽く休みを取ったらしい。

 軽く言っているが、国の魔法使いの仕事は結構なハードワークと言われていて、休日以外は本当に休みがないで有名なのだ。あの日見せてくれた宇宙の様な魔法、あれも簡単にやってはいたが、実際のところとてつもない技術が必要なのだ。

 それこそ、あれが彼の代名詞となるほどに。


 そんな彼が、一体どれほど仕事をしたら休めるのだろうか。

 自分の背中に冷たいものが流れるのを感じつつ、俺は父におかえり、と言ったのだった。


 ついでに、そのあと魔法の練習をする約束もした。やったね。

 



パパ「普通に仕事しただけですよ?」


上司「ヒエッ」



ちなみに仕事についてはまだグリムには話してません。

まあ、偉大な親を持つとなんとやらっていうしね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ