プロローグ 入学式
久しぶりに三人称。
なんか書きたくなったから三人称にしました。
すっごく雑だし下手くそです。悲しいね。
雪が降ることもなかった為に渇きっぱなしの空気が心をも張り詰めさせる。
本当に太陽が働いているか疑ってしまう程の気温の街に、三人の人影があった。
三人とも防寒着に身を包んで、本当の体型より少しふくよかに見える。
真ん中に位置する男の子はその服にも慣れた様子でしっかりと歩いていた。
歩く三人のうち、一人だけいる男の子に歩幅を合わせる為に、残る二人はゆっくりと歩いている。
そこで、大人の男女の片割れが、その口を開いた。
「やーっと年が明けて、みんなでパーティをしたのもあっという間だったねー。……はあ、なのに早々に外出かぁ」
彼女は腕を空へと伸ばし、体を伸ばしてから綺麗なフォームで手を元に戻した。
その様子を見た大人の男は苦笑いをすると、こう返す。
「でも、グリムの入学式だからしょうがないさ」
その言葉に、女の方は納得しかねると言った様子で顔を逸らした。
今日は新年が明けてから数日、そろそろ行事も無くなってきたある日。
つまり、年度の始めが一月であるこの世界では、もう休みが終わる頃だ。
子供が三歳を迎える今年、三人は幼学園の入学式に向かっているのである。
ポンっ、と手袋で包んだ手を合わせると、女は大きくため息を吐いた。
「あー、これからはグリムといる時間も減って、私暇になるなー」
「あはは、浮気はやめてくれよ? セラリア」
「もー。するわけないでしょ、ライアンったら!」
冗談を言い合いながら三人は学園へと向かっていく。
その喧騒に阻まれて、男の子の独り言は誰にも聞こえることはなかった。
「そういえばゲームも新年早々だったなぁ……忘れてたぞ……」
◇◇◇
「えー、ですから、親御さんには安心して………」
入学生やその保護者たちが座っている前で一人大きな声で老人が喋っている。
その胸のバッジは、彼がこの学園の最高責任者であると語っている。
今は、学園の入学生に対する挨拶をしているのだ。
「もう! 何で偉い人の話はいっつもこんなに長いんだろう!」
先ほど歩いていた女性が、声のトーンを落としながら隣に座る男に話しかける。
「しーっ、おい、人が話してる時に話すなよ。聞こえたらどうする!」
男はそれを咎めるが、女の方は全く反省する様子はない。
「うー、そう言う細かい所は嫌い!」
どうやら彼女の方は寧ろ拗ねてしまったようである。
男はそれに慌てるが、何しろ先ほど自分が注意したばかりなので声を出すわけにはいかず、何とか許してもらおうと身を屈めてジェスチャーで謝罪する。
しかし、彼女は完全にそれを無視している。
男はますます慌てるが、しかし彼女の顔が笑顔なのに、男の子は気づく。
「チッ、いちゃつきやがって」
尚、男の子がそれを冷たい目で見つめているのは、誰も気づくことはなかった。
男の子、いや、グリムと呼ばれていた少年はしかし母の意見には心の中では賛同していたので、話を聞くのはやめて、あたりを見回し始めた。
周りは地球の体育館より少し正方形に近い間取りで、百人近くの子供、そしてその保護者がぎっしりそこに詰まっている。
だが、ここは体育館ではないのでその色は白を基調とした造りをしており、清潔感がある。
国営であるこの建造物は、いつぞやに見た病院ほどとは行かずとも、中々にお金がかけられているのだろうことが伺えた。
(こんなところでこれから毎日生活すんのか……)
一抹の不安を覚え、その体が震える。
いや、それとも、ただの冬の寒さだろうか。
そんなふうに思っていると、老人はやっと話を終えたようで、建物にまばらな拍手が響いた。
「ふー、やっと終わりかー、もうお尻が痛い〜」
小声でそう女が呟いた。
それを少し下品だと思いはしたものの、生憎自身もそうだったので、男は特にそれを注意することはしなかった。
◇◇◇
「あー、やっと帰れるー!!」
大きく肩の力を抜いて、女が叫んだ。
男の方もわずかにそれに頷いている。彼の方も流石に疲れたらしい。
ここはもうほとんど家の近所で、学園からはかなり距離がある。
少し前に入学式が終わり、今は帰宅途中だ。
日はもうすっかり傾き、目に見えるのではないかと言うスピードで沈んでいく。
彼らの顔にも半分影が落ちていた。
その寒さに当てられたのか完全に元気がなくなった男の方は、特にその言葉に返すこともなく、ただ自分の身をその手で包んでいる。
グリムの方も同様だ。
そして一人元気に歩いている彼女は当然目立つわけで、故に同じ道を通る「彼ら」に声をかけられるのも当然であった。
「あ、おーい。ライアンさんのとこのじゃないですか?」
その顔は三人とも見覚えがあるようで、揃ってお辞儀を返した。
「ああ、どうもこんにちは。レインちゃんはどちらに?」
女の方が早速話しかけると、愛娘の行方を訊く。
すると、話しかけてきた男の方は自分の後ろを指さした。
見れば、綺麗な女性と可愛らしい少女がそこにはいた。
その瞬間グリムの顔が引き攣ったが、それを見ていた人はいなかった。
「ああ、それにしても、やっぱ似合ってますねえ私の服は!」
グリムを見て大きな声で笑うと、彼は自分の作品はやはり良いものだったと自画自賛した。
やはりそう言うところは職人なのだ、とグリムは思った。
「おーい、二人とも。こっち来なよ!」
彼は自身の家族の方へ向き直ると、手招きをして二人を呼んだ。
それに応じ、二人はグリム家の方へと向かってくる。
グリムは素早く親の足に隠れた。目にも止まらぬ速さだった。
「あ、ごめんねレインちゃん。グリム照れちゃったみたいで」
女は彼の母親として謝ると、グリムに照れないように言うが、しかし彼が照れてしまう理由はより深いところのものな為、説得は当然成功することはない。
女は説得は無理だと悟ると、再度彼女らに謝った。
謝られた二人は、特に気にしていないと言うと、グリムの方へ顔を向ける。
「初めまして。私レインのお母さんです。明日から、レインと仲良くしてあげてね? レイン天然だから学園で浮かないから心配なの」
彼女は母親らしく娘と仲良くするようにグリムに約束させる。
グリムも、その「行動指針」からそのことを拒むつもりはないので、しっかりと頷いた。
それを見て嬉しく思ったのか、レインがぐいと近づいてくる。
「よろしくね、ぐりむ……くん?」
レインは優しく微笑むと、彼の前にそっと手を差し出した。
グリムの顔が瞬時にフリーズする。
グリムは一瞬遠のいた意識を何とか戻すと、恐る恐る手を差し出して———
二人は仲良く握手を交わしたのだった。
尚、その瞬間手を離して逃げ出したグリムのことを、両親は家に帰ってからもずっとからかい続けたそうな。
こうして二人は友達になったのだ———
まあ、プロローグらしい感じですね。なんとか形になったかな。
プロローグは本当に話の初めなので、結構どうでもいい余話として書いてます。
なんなら間章に入れるか悩みましたが、こっちでも問題はない為こっちにします。
次回からは本格的に二章ですし、多分一人称です。お楽しみに!
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