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異世界クズ転生 〜原作のままに生きていく〜  作者: しゅー
第一章 生きる世界、変わりました
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イベント「招風の風車と」


 そんなこんな考えていると、レインは俺の方に歩いてきた。

 ゆっくりと歩いてくると、俺の前に立ち止まり、じっとこちらを見つめる。


 ち、ちょっと威圧感がある。目を逸らしてしまいそうだ。

 しかし俺は彼女の()()を知っているので、そんなことはしない。

 彼女の目的は、そう。


「ねえ、その手のやつ、なに?」


 俺の風車なのだから。


 このイベント、その要旨を簡単に説明するなら、「風車で遊ぶ」である。

 二人の出会いは突然に、秋風と共に訪れるのだ。


 最後に見たのは半年近く前とはいえ、その発生難度から内容や会話は流石に印象に残っている。

 俺がこの世界で何をすべきかは決めていないが、しかしどう足掻いても幼学園で一緒になるのはもう不可避のように思える。

 俺はその直感から、とりあえず交友関係を一つ作りたいと思い、とりあえず今回はイベントの通り行動しようと決めた。


 友達は大事だからな、特に子供時代は。いやホント。


 心の中だけで自分に頷いてやってから、俺は行動を開始した。


「えー、知らないの? これは風車って言うんだよ?」


 俺は少し生意気な口調を使い、薄らと記憶に残る会話文を再構築(アドリブ)する。

 レインはその言葉を理解できずに頭にハテナマークを浮かべた。


「かざぐるまって、どんなの?」


 その言葉を聞いて、俺は相手の無知に対して自分の知を誇るように笑った。


「じゃあ、見せてあげるよ。ほーら、いくよ?」


 レインの顔が期待に満ち満ちていく。

 そんな顔の前に俺は風車を出し、そして———


 一気に回転させた。



「きゃああああ!!」


 レインの顔に一気に強風が当たる。

 彼女は相当驚いたようで、口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。

 その目も大きく見開かれている。


「あ、コラ! もう! 人に向けないの!」


 母が後ろから注意する声が聞こえる。

 だが、その声から一拍置いて、レインの口から吐息が漏れた。

 それは緊張からの解放というより、感動したから漏れたものだ。


「うふっ、あっははははは!」


 それが引き金となったのか、レインは大きな声で笑い始める。


「スゴイスゴイ! どうやってやったの!? 私もやりたいなぁ!」


 そしてレインは目を爛々と輝かせ、腕を上下させながら俺の方に迫ってきた。

 俺はその迫力に押されたように後ずさると、風車を彼女に渡してしまう。


 嬉々としてそれを受け取ったレインは、すぐさまそれを回し始めた。

 しかし、先ほど俺がやったように風が出ることはない。

 それもそのはず、彼女はその正しい使い方を知らないのだ。

 その事に気づかず、彼女は不思議そうにその手を動かし続ける。


 俺はそれを少し笑うと、先輩として助言をしてやった。


「コレはね、やるのにコツがいるんだよ。ほら、そんなふうに持ってたダメ!」


 グリム先生の特別講座を開いたかのような様子で俺はレインの手を取る。

 いくつか体勢のアドバイスと、魔法が発動する条件を教え、もう一度やるように彼女へと促した。


 そして、そのことを意識して少しずつ丁寧に彼女は風車を構えて……


 一気に風車を回した!


 その瞬間、部屋中を風が駆け巡った。

 もちろんその威力はそこまで大きいものではない。少し服がたなびく程度だ。

 だが、範囲も威力も俺のものとは段違いなのは確かだった。

 おそらく、先程父がやってみせたものよりももっと強い。


 少しコツは教えたが、人が急にそんなに上手くなるなんてあり得ない。

 そんな表情をして俺は彼女の方を見た。

 その視線はじっと彼女の手を捉えて離さない。


 その視線に込められているのは、果たして驚愕か嫉妬か。

 それは俺以外には測れない。


 しかし、少なくとも、俺は彼女がここまでやると思っていなかったのは事実だった。

 何故なら、俺は身を持ってその難易度を知っていたから。


 だが、レインはその目線を気にすることなく、ただ喜んでいる。

 その後ろで、うちの子は魔法の天才か、と騒ぐ店長の声は、もう既に俺の耳には入っていなかった。










 じゃあ俺は演技の天才かな?


 いや、我ながら上手すぎるでしょう。本当に完璧だ。

 このイベントの重要な要素、その全てを完璧に演じ切った。

 なんならそのナレーションもなかなか芸術的だったな。


 心の中で自画自賛していることなどお首にも出さず、俺はレインに風車を返してもらうと、彼女を素直に褒めてやった。


「す、すごいね! ’’僕’’もそんなことはできないな!」


 俺が一人称をこうしたのは、もちろんグリムが僕と使うからだ。

 確かに会話は終わったが、まだ演技は続いているのである。

 CGはなかったが、うちに帰るまでが遠足(イベント)だ。


 その後、両親がレインの父親と幾つか話をした後、俺たちはそのまま帰宅する事になった。

 レイン一家が俺たちを見送って腕を振ってくれている。


 俺はそれに笑顔で腕を振りかえし、幼学園での再会を楽しみにするのだった。




 それはそれとして人に向けて風を打ったことを親に叱られた。

 こ、こんな描写はゲームにはなかったのに……。

 グリムも本当は叱られてたのだろうか?


 今年の誕生日は散々な思い出となって、俺の記憶に刻まれたのだった。



【速報】主人公、僕が一人称

は? 唯のお前の性癖だろって? ははは、聞こえませんな。

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