ヲタクの咆哮と気づいちまった秘密
俺の目の前に、二次元キャラ、しかも主人公がいる。
もうその時点で俺の頭はパンクしそうだった。
残念ながらその声は知っているものとは違ったが、見た目だけでももうヤバい。
そう。この驚くべき状況以前に、推しゲーのキャラが目の前にいるという事実だけでもヲタゲーマーとしては死にかけなのである。
と、とりあえずもちけつ。ヨユー、ヨユーDeathよコレくらい。
オデの強靭な精神力を見よ!
すると、レインは俺たちのことをチラと見ると、首をコテンと傾げる。
「お父さん、この人たち誰……?」
あ゛っ゛っ゛!!!!!
すげぇ、CGじゃねえ、アニメじゃねえ、リアルだヒャッホーイ、、
はっ! いかんいかん、クールになれクールになれ。
くそっ、よくみろ三次元だぞ。そんなものに現を抜かすな俺!
と、いうか、実際こんな事にかまけてる場合じゃない。
レインがここにいるということはつまり、この世界は
ってやっぱレインいるしまずは感動を味わっ……てる場合じゃない!
まずい。俺のヲタク精神が全ての事象をてぇてぇで解決しようとしている。
そ、そんなことはこの俺が許さないぞ俺!
思い出せ、俺はどんな時だって冷静に戦うプレイヤーだった筈だ。そうだ、今回もその調子で行くんだ。
ん? 今は急を要する時でも勝負中でもないって?
確かに! それもそうだ。まずは感動を噛み締めようではないか。
ハッハッハッハッ
ちげぇんだよなぁ!!
いや、本当にまずい。このままではこの回がただのキモオタ一人語りになる。
よーし、まずはあれだ。うん。この子の顔を見るのをやめよう。
俺は全く意思通りに動かない首をゆっくりと曲げ、両親の体の後ろに隠れた。
多少両親から怒られたが気にしない。
そうしなけりゃまともな思考もできないんだよ!
さて、ひとまず冷静になれた。
ここでいくつか考えよう。
先ほども言ったが、レインがここにいる、ということはこの世界があのゲームの世界とイコールであるのは間違いない。
実際いくつかの違和感が一瞬で解決された。
初見なのに既視感がした筒はゲームの便利アイテムだ。
遺伝しない髪の毛は、確か魔力のせいで後天的に変色するとかいう設定があったのを覚えている。
風車の既視感は、実際ゲームでこのイベントがあったからだ。
そして、違和感とは別の問題もある。
それは、さっきの騒ぎだ。
「星矢射る高貴の園」は、物語序盤幼少パートがあり、そこで攻略対象の男たちと事前に会って交流を深め、何年も後に学園(幼学園ではない)で再会を果たす、という二部構成だ。
そして先程のストリートでの騒ぎ。幼学園入学一歩手前の秋。
この二つを鑑みれば、あれは攻略対象の一人、というか公式の最推しである王子との出会いイベントだと考えられる。
このイベントをこなすことで、初めて相手を攻略対象にできるという、大切なイベントだ。……いや、それがないと交際できないとか、リアルではおかしいことではあるんだけどね?
まあ何にせよ、すぐ騒ぎが収まっているのでイベントの進行は滞りなく行われたのだろう。
確か王子との馬車事故イベントは失敗すると何時間も立ち往生だった筈だ。
さて、ここで問題になってくるのが、「レインは何人と会っているのか」だ。
何人と出会いイベントをこなしているのか?
それによってこの世界の在り方は変わってくるが……ここでその推理に役立つのが、風車である。
俺がこの風車を持っている。それはつまり、俺がこのイベントで出会えるキャラ、親友兼お助け役(笑)である「グライ」であることを意味している。
……いやもう本当、勘弁してほしい。どないせぇっちゅうねん。
まあ、身の振り方は後で考えるとして。
言い訳になるが、俺が今迄この事に気づかなかったのには訳がある。
まず、髪色。先ほども言ったが、この世界の髪色は変わる。
「グライ」の髪色は透き通るようなライムグリーン(原文ママ)で、こんな茶色ではなかった。
今までまさか髪色が変わるとは思わず、スルーし続けてきたという訳だ。
次に、名前だ。両親は俺のことをグリムと呼ぶ。
というか、ゲーム中でもレインはそう呼ぶのだが、しかし、キャラのほとんどは彼をグライと呼んでくる。
その名前の食い違いの理由はおそらく、俺の本名だ。
俺の名前は「グリマニア」つまり「Grimania」
親は俺を「Grim」と呼び、友達は俺を「Gri」と呼ぶのだ。
つまり、日本人である俺は名前のスペルなど全く考えてこなかったため、気づけなかったという訳である。
まぁ、これらは俺のミス……いや、普通こんなの気付く方がおかしいだろう。
俺は悪くなーい俺は悪くなーい。
ちなみにだが、主人公は「偶然」髪色が栗色になった為変化はない。
決してグラの後に設定をくっつけたからではないぞ。(製作社談)
兎に角、大切なのは、彼女が俺に幼少期にあっていることだ。
俺たちの出会いはゲーム中では描かれないが、ほとんどのルートでは幼学園でのことという事になっている。
そして、その後色々あって仲良くなった、と描写がされるだけだ。
しかし、ひとつだけ、幼少期に俺と会う方法がある。
それは、全ての攻略対象と出会い、且つ最後の出会いを秋にする事、だ。
この条件を達成した時のみ、俺は風車と共に店に現れるのだ。
いわゆる隠しイベントというやつで、二週目以降の要素だ。
この難易度は、正直バカ高い。
この条件からさらに色々やって漸く見られる隠しルートがあると知った時は、俺は本気で完クリを諦めようと思ったほどだ。
いや、マジでRTAやってる気分になれる。本当にNKTだった。
それはともかく、彼女が俺と会っているということはつまり、彼女もその条件をクリアしているという事。
いやー、君本当に人生初見? 俺このイベ見るのにに丸一日かかったんだけど?
こいつぁとんでもねぇビッチの予感がするゼェ……。(言いがかり)
ビッチとか言ってるけど、あのゲームにハーレムエンドはないです。
ちょっと一人称多めにしてみたよ。うわーヲタク君キモ〜い。




